恋愛ゲームの主人公、お世話イベント!
ウィリアさん、シヴォンさん、そして私達で港町へ行ってお仕事をしてから一週間。
ベラートからやってきた商人が、認可されていない物を密輸入しようとしていたことが発覚。しかも花馬車の祭に乗じてバレないようにボヤを起こしたり、違法な紋様士を使う‥と、いう入念っぷり。
ノイエさんとダンさんがお付き合いできたことで盛り上がっていたので、私は薄っすらとしか知らなかったけれど、後から知れば知るほど引いてしまうやり口である。シヴォンさんが言うにはある程度証拠を固めたら国として正式に抗議するそうだ。犯罪ダメ、絶対。
そんなドタバタもあったが、私とルルクさんで一足先に地元へ帰れば、のんびりした町‥いや、村だな、村にホッとした。
問題が起きない環境って最高!
‥いや、かなり問題は起きていたけどもさ。今は平和だし?
というかそもそも恋愛に発展するとトラブルが起きる世界って本当に恋愛ゲームって呼んでいいのか?人は安心した環境でようやく恋愛ができるものじゃないのか?それなのにゲームの私ときたら暗殺者に首を切られそうになって逃げるわ撃退しようとするわ‥、
「ユキ、レトから肉を貰ったから晩にそれを食べよう」
「あ、はい!?」
外で洗濯物を干しつつ、ゲームの世界について考えていたら、シーツの向こうからまさに私の首をぽんぽんと気持ちよく切っていた暗殺者ことルルクさんが現れて、ビクッとしてしまった。
「‥洗濯干しつつ、よく思考の海を泳げるな」
「結構泳ぎは得意なんで‥?」
「まぁ、溺れなきゃいい。他に干す物はないか?」
「丁度終わりました!」
「じゃあ、そろそろ仕事に行くか」
「はい!仕事道具持ってきますね」
元気よく返事をして、洗濯物を入れておいた籠を持って部屋へ戻ろうとすると、流れるように洗濯籠を私の手から取って一緒に玄関へ歩いてくれるルルクさん。‥‥まさかこんな流れるように紳士な暗殺者だと思わないじゃん。しかも恋人になるなんて思わないじゃん?天国のお父さん、お母さん、ユキは今日も不思議な世界で生きておりますよ。
二人でギルドまで歩いて行くけれど、最近はめっきり暑くなってきた。
そろそろ日差しが厳しい季節だな。手をひさしのようにしながら歩くが、汗ばんできた。
「そういえば、そろそろウィリアさんも帰ってきますかね」
「‥‥そうなんじゃないか?」
「シヴォンさんも結局報告書を書くのを手伝うことになったってぼやいていたけど、やっぱりどこの世界にも悪い人っているもんなんですね」
「そりゃそうだ。周り中そうだったろ?」
「え、」
私の周りに悪い人‥‥。
あ、いたね、おじさまとかセリアさん、とか?私の反応にルルクさんが驚いたように私を見つめた。
「‥忘れたのか?」
「ちょっと忘れてました。だって、今は普通に楽しいしそういう過去がどっかに行っちゃって?」
なにせルルクさんがいてくれるのが大きい。
安心できるし、楽しいし、急にキスされるのは心臓に悪いけど、それでも好きな人と暮らせるって幸せだ。と、ルルクさんの大きな手が私の手をぎゅっと握った。
「‥‥幸せか?」
「はい!!」
にこーっと笑えば、ルルクさんが眉を下げて嬉しそうに微笑んだ。
うっ、格好いいな!?お付き合いするようになってから、どんどん表情豊かになってないか?!いや、割とスンとした顔をしてるけど、なんというか二人の時はこう‥甘い気がする。
そんなことを考えていると、ルルクさんが私のおでこに軽くキスをして、
「‥俺もだ」
なんて囁くから、心臓が飛び出しそうになった。
っぎえぇええええ!!!恋愛ゲームのスチルじゃないの!?この顔面強過ぎなんだけど!?首でなく心臓が握り潰される!
心中ひいひい言いつつギルドへ着くと、中にはタリクさんとウィリアさんがいるではないか。
「タリクさん!ウィリアさん、お久しぶりです」
「おはようございます。ユキさんもルルクさんもお元気そうで何よりです」
ふわりと微笑むタリクさん。
先生〜〜!って呼びたくなる雰囲気は変わらずだなぁ。
「先日、ウィリアから連絡が来て王族御用達という肩書をどうにかしてきたので、そのご報告をしたくて今日はこちらに来たんです」
「え、あ、あれを‥」
「レオルドはどうも後先を考えないところがありますからね。少しずつ落ち着いてお仕事できるようになりますから。本当にご迷惑をお掛けしました」
「い、いえ、そんな」
すまなさそうに頭を下げるタリクさんの横にいたウィリアさん、「主犯は王子だろ」とすかさず言うと、ルルクさんが無言で頷いた。タリクさんは小さく笑って、
「まぁ、そうといえばそうですが‥。ウィリアも報告お疲れ様です」
「本当めちゃくちゃ疲れた。でもまだあっちに駆り出されたシヴォンとアレスに比べたらいいかも?」
「え!?アレスさんも?」
「シヴォンは魔術も使えるから、そっちで怪しげな物も鑑定もしてるんだ。アレスは文官もやってたし、他も器用だから‥」
「嗚呼‥」
アレスさんとシヴォンさんの「なんで僕が!」「なんで私が!」と、叫ぶ様子が目に浮かぶ‥。と、ウィリアさんが小脇に抱えていた人形がふと目に入った。
「ウィリアさん、それは‥?」
「あ、これ?こっちに戻る途中、捨てられた荷物があって、その中にこの人形がいたんだ。なんか怪しいなと思って拾ってきたんだ」
「へぇ‥」
茶色の少し長い髪に青い目をした女の子の人形を見つめると、キュッとその人形が顔を上げた。
ん?
顔を上げた?思わずゴシゴシと瞼を強く擦ったけど、まさか‥ね?
お久しぶりの続編です!!
楽しんで読んで頂けると嬉しいです(^^)




