恋愛ゲームの主人公、恋と花とイベントと。5
前世は暗殺者で人の首をスパスパ切っていたくせに、今世は大怪我した状態で私の前に現れ、今では恋人!人生って不思議の連続!
そして今は、何かあると私にキスをするので心臓に悪い。
首だけでなく、人の心の臓まで狙うとはやはり暗殺者のさが故なのか?いや、恋人だからキスするのは当たり前‥なのか?人の常識と自分の常識って違うから何にもわからない。
「‥おい、ユキ。大丈夫か」
「はっ!また思考の海へ‥!」
朝ご飯を食べながら思考の海をクロールしてたわ‥。
美味しい卵サンドに意識を戻して一口頬張れば大変美味しい。私が作るのと違って卵の殻がないのも素晴らしい。
「美味しい、最高‥。やっぱりルルクさんのご飯どれも美味しい」
「昨日も言ってたけど、毎回よく言うな」
「だって美味しいんですよ!?‥私と違って」
窓から差し込む朝の光の向こうを見た私に、ぶっと吹き出したルルクさん。うん、まぁ、いいよ。そうやって笑ったり楽しそうな顔を見るのは好きだしね。もぐもぐと卵サンドイッチを頬張っていると、私の口元に指を伸ばしたルルクさん。
「卵ついてるぞ」
「ふ、ふみまへん‥」
慌てて謝るも、ついていたであろう卵をパクッと食べてしまうルルクさんに目を丸くする。ちょおい!食べなくてもいいんやで!!ううっ、そういうちょっとした所作に以前よりドキドキしてしまう自分に本当に困る!なんでそんなに格好いいんだよ!!
心の中で叫びつつ平常心、平常心と落ち着かせようとする私、大変偉い。
「そうだ、朝飯食べたら蝶を描いてくれ。昨日は誰かさんがキスで目を回したからな」
ぶっと卵サンドを吹き出しそうになった口を抑えて、ルルクさんをジロッと睨む。だ、だって!ずっとキスするからでしょう!!し、舌とか舐めるし!!あんなの驚いちゃうでしょ!昨日のルルクさんとのキスを思い出すと、顔が赤くなってしまう‥。
恋愛ゲームの主人公なのに恋愛初心者とはこれいかに。
だけど生きる為に恋愛から逃げてきたんで、そこはまぁ仕方ない。問題はそんな超初心者の私に、お、大人なキスをするルルクさんだと思います!
「‥だからその顔は可愛いだけだぞ」
「ルルクさんの感性、ちょっと変わってるって言われません?」
「いや、至極普通だろ」
「ううっ!普通って何!!」
「はいはい、ほら食べたら皿を片付けるぞ。ギルドに行く前に蝶だからな」
「わ、わかりました」
赤い顔を冷やそうと手でパタパタと仰いでからお皿を一緒に下げて洗う。
窓の外を見れば、大分秋も深まってきた。そういえばこの時期にお祭りって収穫の感謝祭‥みたいなものかなぁ。レトさんに聞いておこう‥なんて思いつつ、部屋から紋様の道具を持ってキッチンへ行けば、すでに腕まくりして椅子に座って待ってくれているルルクさん。なんか可愛いぞ。
「そんなに楽しみなんですか?」
「‥人に想われて描いてもらうからな。あと蝶はもうお守りみたいなもんだしな」
「お守り‥」
それは私もかもしれない。
同じく転生者のセリアさんにあわや殺されそうになった時に、蝶になって逃げたし、いつも何かあった時に蝶が飛んでた。
そう考えたら私とルルクさんと繋いでくれたのも蝶だ。
恋愛ゲームの世界だから‥なのかもしれないけど、それはそれとして私にとっても思い入れがある。
すっと息を吸って神経を済ませると、筆に、体に、魔力を込め、丁寧に描き始める。今日も守られるように、笑顔でいられますように。それが明日も明後日もずっとずっと叶いますように。
小さく「守護」「危険察知」「防御向上」を、日本語で模様のように描くと、金色にパッと光ってすぐに消えた。
そうして出来上がった黄色の蝶をルルクさんは嬉しそうにしげしげと見つめると、本当に優しく微笑んでくれた。
「‥ありがとう」
「いえ、そんな、」
毎回本当に嬉しそうに微笑んでくれるから心臓が痛いくらいドキドキする。
こんな風に喜んでもらえると紋様士として嬉しいことこの上ない。けど、ルルクさんの優しい笑顔は心臓に悪い!格好いいんだもん!!
赤い顔を誤魔化すように筆を片付けようとすると、
「待て。俺も描く」
ルルクさんがすかさず私の手を止め、ちょんちょんと小筆を黄色の紋様液に浸した。その顔を見ると、なんだか子供が「自分もできるもん!」みたいでちょっと笑ってしまいたくなる。けど、描くことはあっても描かれることは滅多にない私としては嬉しいので、大人しく手の甲を差し出すと、ルルクさんの瞳がキラキラと嬉しそうに光るので大変可愛い。
暗殺者のこんな顔を見られるなんて想わなかったな‥。
小さく微笑んで真剣な顔で、慎重に筆を動かすルルクさんを見つめられるこの時間もずーっと、ずーーーっと続けばいいなぁと思う私であった。
いつもと違うパソコンで更新しているので、時間が遅れるやも‥!!
そう思ってアクセスしようとしたら、まぁセキュリティガチガチでヒーヒー言ってたのは私です。誰だ!こんな複雑にしたのは!!(私だ)




