表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

おでかけ

 

 連休は、嫌いだ。

 もちろん休みは好きだ。

 普通の休みなら。

 けど、年末年始とか、お盆とか、ゴールデンウィークとか祝日がくっついた三連休になると、話が変わってくる。

 何でかって、貴志たかしが出かけたがるからだ。



「なあ、どっか行こーぜ」


 トイレから戻ってきた貴志が、言った。


「やだ」

「何で」

「家でのんびりしたい」

「休みなのに1日も出かけないとかもったいねーじゃん」

「休みなのに家でのんびりしないとかもったいないじゃん」

「家でのんびりはいつでもできるだろ」

「できないよ」


「休みなのに出かけないともったいない」という考えが、あたしには理解できない。

 テレビを見てごろごろする、本を読む、ぼーっとする。

 家でしかできないことはいっぱいある。

 でもいつもつっぱねてると、貴志がすねるから。

 持っていたマグカップのコーヒーを一口飲んで、立ったままの貴志に尋ねる。


「……どこ行きたいの」

「買い物でもいいし、ドライブでもいいし。前紅葉見に行った神社、今藤棚がきれいらしいよ。駅前じゃB級グルメ集めたイベントやってる。チラシ見たけど、ハンバーガーうまそうだったんだよなぁ」

「人混みは嫌だな」

「じゃあ藤見に行く? 自然満喫コースで。街中よりは人少ないだろ」

「どれくらいかかったっけ?」

「車で1時間半くらい」

「結構かかるね」

「俺が運転する」


 元々任すつもりだったが、それは言わないでおく。


「帰りにあそこで、早めの晩飯食って帰ろう」

「あそこってどこ」

「前に1回だけ行ったじゃん、牛タンの店」

「ああ……」


 確かにあれは、なかなかおいしかった。

 で、と貴志が言う。


「今日1日出かけたら、明日はのんびりしよう」

「……わかった」


 貴志は歩み寄ることを知ってる。

 自分の意見を通しつつ、こっちの思いも汲んでくれる。

 だからいつも、助けられる。

 あたしも少しだけ、優しくなれる。


「……行きたいんなら、行ってもいいよ」

「え?」

「B級グルメ」

「でも、人混み嫌なんだろ?」

「だから、長い時間はいたくないけど。そこでハンバーガーとか、出店2つくらい回って早めのお昼食べて、そっから藤見に行けばいいんじゃない?」


 提案すると、貴志がにかっと歯を見せた。


「じゃ、そうしよう」


 その顔が、嬉しそうだから。

 言ってよかった、と思う。


 元々この連休は、泊まりでどこかに行かないかという話も出ていた。

 けれどそれを、あたしが退けた。

 貴志は基本アウトドアで、あたしはインドアだ。

 貴志はかなり未練がありそうだったけど、結局は自分の意見を引き下げた。


「準備するから、待ってて」

「おー」


 ソファから腰を上げると、それまであたしが座っていたところに貴志が座った。テレビのチャンネルを変える。

 あたしは空になったマグカップを台所に持っていくと、蛇口をひねった。

 あの神社は確か駐車場から少し歩くから、動きやすいほうがいいだろうか。

 足元がスニーカーで、たまにはスカートでも履く?

 日焼け止めは塗ったほうがいいだろうな。

 髪は……そのままでもいいか。


「鼻歌」

「え?」


 貴志の声に振り返る。


「楽しみ?」


 どうやら気付かず鼻歌を歌っていたらしい。

 蛇口をひねって水を止めると、カップをシンクに置いた。


「……出るって決めたなら、楽しんだほうがいいでしょ」

「お前のそういうとこ、いいと思うよ」


 貴志は言うと、テレビに顔を戻した。


(なんだ……あたし)


 結局、楽しんでるじゃない。

 まあ大抵、いつもそうだけど。

 出るまでは嫌でも、出ると決まったなら、ぐずぐずしてても仕方がない。

 楽しまなければ損なのだ。

 だから貴志も、あたしが言うほど外出を嫌いじゃないと、思ってしまうんだけど。

 それでもまあ、貴志は上機嫌になるし、そんな貴志を見てたら、まあいいかという気持ちにもなるし。

 だからたまには、出かけるのも悪くないんだと思う。

 タオルで手を拭くと、あたしは着替えるために台所を離れた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ