飛騨・信濃攻略5
飛騨攻略が着々と進行していた頃である。
朝倉孝景は信濃攻略の第一段階として、村上頼清の調略を行うべく動き出していた。
まずは、楠木一族と南朝で共に戦った海野一族の当主、海野幸数を訪ねた。
客間に通された孝景であるが、部屋の外には多数の殺気を感じていた。
「海野一族は、先の結城一族との戦いで御所様に刃向かっております。」
楠木党のものが耳元で囁く。
納得した孝景は、幸数が現れるのをジッと待っていた。
やがて幸数が現れた。
「お待たせしました。して御用の向きは?
御所様に付けということでございまするか?
御所様に刃向かいし経緯を持つ吾に?」
いきなり、敵意むき出しの様子で畳み掛けるように話し出した幸数にさすがの孝景も一瞬たじろいだ。
孝景は一呼吸置いて話し出した。
「御所様においては、結城殿との戦いで幼き子を処罰したことは悔いておられる。現に今は、降伏したもので有能な人物は都で学問を学ばせるようにとお達しが出ておられます。
御所様は新しき秩序を今、作られようとしています。武家も公家も民も暮らしやすき世を。
海野殿、あの折の御所様とは違うことはご理解いただきたい。それに海野殿、かつて一緒に戦われた楠木党も、御所様にお味方され、新しき世を作ろうとされておりますぞ。」
しばらく熟考した幸数。
「なるほど、朝倉殿がそこまでおっしゃられるのなら本当であろう。して、こたびは何をしに参られた?」
「海野一族の力を借りて村上殿を調略したい。」
「村上でござるか?あれも関東(公方)のお味方についたもの。海野一族はお味方しても村上殿を調略するは中々折れまするぞ。」
「では、海野殿、お味方に。」
「まずは、吾が承知しても、根津、望月らの滋野一族全てを味方に付けねば意味はない。
一日くだされ。」
「分かりました。」
次の日。
海野幸数を筆頭に根津、望月らの一族が朝倉孝景の前に現れた。
「朝倉殿、海野を筆頭に滋野の者供、ことごとく御所様にお味方致す。
ついては、我らの子息を都で学問させたいがよろしいか?」
「それは承知致しました。」
「ならば、これより村上調略について協議したいが…」
「願ってもないこと。」
朝倉孝景は、信濃攻略の第一歩を踏み出した。




