飛騨・信濃攻略4
飛騨北部。吉城郡高原郷。
江間左馬助や姉小路の残党達が集まり軍議を開いていた。
「もはや、三木、三島、内ヶ島までもが御所様について、こちらに向けて兵を進めております。我らはいかにするか、そろそろ決せねばなるますまい。」
「わかっているが、長年、敵対して来たものに対しておいそれと手を結んで良いものか?」
「いや、それは我ら姉小路のものとしては納得いかん。」
「では、今いる兵でどう戦う。屋形にこもっても助けの兵はこない。打って出ても相手との差は歴然としている。さあどうする。」
この議論が延々と繰り返されているだけであった。
ある夜、江間左馬助は家臣を密かに呼んだ。
「もはや軍議を開いて意味は無い。吾は決めた。」
「お屋形様、では降伏ですか?」
「それも腹立たしい。皆近う。」
江間左馬助は家臣に小声で何かを囁いた。
家臣は一同に驚いたが、従うことになった。
次の日、姉小路の旧臣達は大騒ぎとなった。
江間左馬助が文を残し忽然と姿を消したからである。
文には、
『もはやこの地を捨て、関東公方を頼る』
とのみ書いてあった。
旧臣達は江間左馬助を頼りにしていたので、困り果てた。
「皆、どうする」
誰ともなく声が出た。
「もはや頼るは関東公方だけか…
我らもそうするか?」
「いや、我らは元は武士とは百姓に毛が生えた程度のものであった。今更、他国へ行くなら、この地で武士を捨て百姓に戻るも良いかもしれない。」
「そうだな。姉小路様は都のお方だが、我らはこの地に根付いたもの。もはや戦さは辞めた。」
しばらく後、尼子清定率いる兵が高原郷に入って来た。
出迎えたのは、帰農した姉小路の残党であった。
残党達から経緯を聞いた清定は、残党達の土地を保証し、飛騨平定を兵を損なうことなく終えたことを都の義教へと知らせる使者を出した。




