海をいかに渡るか1
越前、尾張、播磨と義教が指名した各方面軍は順調に進軍していたが、四国遠征軍は、河内で停滞していた。
四国に大軍を渡す水軍の編成に戸惑っていたからである。
時代は遡る。白村江の戦いで日本は朝鮮半島で百済復興を目指し大規模な水軍を編成したが、手痛い敗北を喫した。
それ以来、大規模な水軍は国として編成することなく各地に小規模な水軍が点在するのみであった。
その為、遣唐使も危険を極める有様であった。
平清盛が宋との貿易を国として行おうとしたが、道半ばで倒れた。足利義満は明との交易を行ったが、守護である細川、大内の力を借りて行なっていた。
義満はそれを嫌い、大内は一旦、力を削がれた。
細川家は交易を独占しかけたが、この頃はまた大内氏が力を盛り返していた。
遠征軍の三好氏は細川家の被官であり、水軍を率いることはできたが、1万以上の軍勢を渡す力はなく、まず、軍勢を如何に四国の細川氏の本拠地阿波まで無事に渡すかで四国遠征軍は河内に留まって無為な日々を過ごしていた。
大将の三好式部少輔長之と遊佐河内守国助は、遊佐氏の本拠、若江城で頭を悩ましていた。
「式部少輔殿、阿波の水軍ではせいぜい3千がやっとですかな?」
「河内守殿、後は熊野、伊勢の水軍衆を集めて5千というところですな。それに一つ問題がある。熊野、伊勢の水軍は阿波まで行く潮の流れに慣れていない。」
「あゝ、例の渦潮ですな。」
「あれに巻き込まれてはひとたまりもない。今、堺にいる船大工に大きな船は作らせているがな。
後は大内の水軍衆が行く手を阻むかもしれない。」
「式部少輔殿、大内の水軍衆の中でこちらにつきそうなものはいないのですか?」
「御所様の御教書を楠木衆がバラまいてる最中。そろそろ出てきても良さそうだが…
阿波に渡れば吾の庭のようなもの。どうにでもなるが…」
その時、遊佐河内守の近侍の者が部屋の外から声をかけた。
「申し上げます。楠木衆の方からのお使いでございます。」
「来たか!良い知らせなら良いが…」
二人は急ぎ部屋を出た。




