播磨進軍4
その日も浦上信濃守は、ここ一ヶ月繰り返されている戦さの習わしである朝の退屈な軍議への気だるさにさいなまれていた。
『集まっても何も得る者はない。そろそろ和議の落としどころを考えねばなるまい。』
ふと気づくと城内に異様な緊張感が漂っているのが伝わってきた。
「誰かある!」
近習が慌てて駆け寄ってきた。
「今朝は城内の様子がおかしい。何事があったか調べて参れ!」
「殿、その必要はありません。
昨日までこの城を攻めていた別所殿や小寺殿はいなくなりました…」
「なに!城攻めを諦めて引き上げたか!
それは重畳。」
「いえ、もっと大変なことに…」
「なにが起きたというのだ。ハッキリと申すが良い。」
「し、城は御所様の兵、その数、一万あまりに囲まれております。」
信濃守は、近習の言った意味がよくわからなかった。
「御所様?どこの御所様だ?」
「み、都の御所様でございます。」
信濃守はようやく事の重大さを悟った。
「御所様だと!別所や小寺はどうした。」
「おそらく、夕べの内に打たれたものと」
その時、侍大将が現れた。
「殿、城門の前に毛利備前守の使いと名乗るものがこの文を」
文を受け取り読んだ信濃守は、半ば諦め顔になっていた。
「敵は1万余か?」
「はっ!」
「ならば、この城はこれまでだな。使いに委細承知と伝えよ。」
信濃守はそのまま、赤松次郎法師丸がいる部屋へと向かった。
突然、現れた信濃守に傅役が、
「信濃守殿、外から声も掛けずご無礼であろう。」
となじったが、信濃守は、無言で傅役を切り捨て、返す太刀で赤松次郎法師丸の命を奪った。
半刻後、白装束の浦上信濃守が赤松次郎法師丸の遺体を運び、新たな攻城軍に降った。
毛利備中守、吉川駿河守が対面した。
「浦上殿、抵抗するは無駄とみたか?」
「はい、我が兵、ひと月に渡る戦さで疲弊し切っています。これ以上は…」
「よう分かった。播磨は三木殿に納めていただく。それで良いの。」
「はあ、では、私は?」
「これから山陽、山陰を攻めていく。その先導となっていただく。」
がっくりと肩を落としながら浦上信濃守は一言、
「かしこまりました。」
と言うのが精一杯であった。
播磨は平定され、三木右京進を中心とする三木氏が納めることとなった。




