身内の敵3
日野家からの密談から数日後であった。
「重子、たまには二人で一献どうだ。」
義教が珍しく重子を酒宴に誘った。
「これは、御所様お珍しい。」
「いやな、赤松の一件以来、御台とはほとんど話すことも無かった。今宵は月も綺麗だ。
酒でも酌み交わしたいと思うてな。」
重子は、内心『しめた!』と思いながら、
「御所様からのお誘い、御断りするわけがございませぬ。」
と、平静を装って返事をした。
花の御所の奥で二人は、酒を酌み交わしつつ、たわいもない話しをしていたが、その内、義教が、あくびをし始め、横になってウトウトし始めた。
「御所様、このような場所で寝られてはお身体に触りまする」
と重子は、気を使う振りをしながら、隠し持っていた小太刀をそっと抜き、義教の心の臓目がけ振り下ろそうとした。
次の瞬間、その手は義教によって掴まれた。
「御台、何も知らぬと思うていたか?」
驚いた重子であったが、完全に義教にねじ伏せられていた。
「誰かある。」
「御前に。」
楠木正秀が控えていた。
「正秀、御主の手の者の知らせ通りだ。御台は引き渡す。後な日野重政、勝光親子も引き立てて参れ!調べは無用。三人は抹殺せよ。」
「かしこまりました。」
御台所重子を始めとする将軍暗殺未遂計画と、計画が失敗し首謀者が抹殺された事は、どこからともなく漏れ、義教を狙うは危険という噂と共に広まった。
義教と楠木党が画策した結果であった。
身内の敵を未然に抑え込んだ義教は、畿内から周りの国々へ領土を広げる基本戦略を淡々と進めて行くのみであった。




