大和国仕置1
義教は大和を平定し、興福寺に入った。
迎えたのは別当の尋尊であったが、その側に経覚が囚われていた。
「経覚、久しいの。やはり大和の地侍を操ったか…」
「御所様、尋尊、謹んでお祝い申し上げます。
この経覚めは、拙僧が止めたにもかかわらず、地侍を操って御所様に敵しました。どうか厳しき御処分を。」
「尋尊、それを止められなかったそなたにも責はあるぞ。
まあ良い。経覚、まだ吾に敵するか?」
「ふん!もはやこれまでじゃ。煮るなり焼くなり好きにせい。」
「経覚、そなたには都の吾の元に参るように使者を出したが、何か勘違いしたか?」
「どうせ、拙僧を処断する気であったのであろう。なにせ無理矢理、別当の座を取り上げたのだからな。」
経覚の悪態はまだ続いた。
「経覚、まだ根に持っていたか。まあ仕方あるまい。こたびはな、別の用で呼び出したのだ。
そなたの才が必要だ。義承と共に吾の政の片腕となってもらいたいのだ。」
「な、なんと!」
驚いたのは尋尊であった。
「御所様、仮にも経覚は、御所様に楯突いたものですぞ。それを許す気ですか?」
「尋尊、黙れ!そなたは興福寺領すら満足に抑えられなかったではないか。本来ならその罪を問うところだが、そなたには興福寺別当の座はそのままとする。ただし、興福寺領は減らす。
寺には武装した僧侶はいるまい。それらは、皆、吾の直参の兵とする。
地侍達は追って沙汰する。」
「かしこまりました。」
尋尊はすごすごと退出した。
「経覚、先ほどの話、受けるか?」
「御所様、お受け致します。その前に一つお尋ねしてよろしいでしょうか?」
「なにかな。」
「こたびは、地侍達は山城の守りも固め、万全の備えをしておりましたが、あっさりと城が落ちたのが解せませぬ。また、拙僧は関与していませんが、畠山徳本様のことも、備えてなければ、ああもあっさりとは打てません。
御所様は如何にしてこの大和をこの短い間に抑えることが出来たかということです。」
「経覚、確かに疑念があるだろうな。
良かろう。片腕になる御主には教えてやろう。」
義教は大和国平定のカラクリを話し始めようと身を乗り出した。




