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第3話 なぜ俺が?➀

異世界の役所は、地球の市役所とそっくりでした。

社会党のは種族や世界にかかわらず収斂するのかもしれませんね

事務手続きに追われ、異種族との距離感に戸惑う荒川でしたが、講習会が終わるやいなや、まさかの呼び出しが。

待っていたのは、人ならざる界長と、有無を言わせぬ圧力を持つ男女。

荒川亮二、異世界に来て早々、王族の強制召喚を受けることに……。

 界所は、まるで市役所のようだった。

 高い天井、白い照明、整然と並ぶ窓口。番号札の発券機に呼び出しモニター、長椅子の並び方まで、驚くほど見覚えがある。初めて来たはずなのに、どこか既視感がある空間だ。


 ただ一つ、決定的に違う点があった。

 働いている人、手続きに来ている人の中に、「人に見えない人」が当たり前のように混ざっている。

 耳の尖った者。羽の生えた者。獣の顔の者。鱗を持つ者。

 ファンタジー作品でしか見たことのない存在が、窓口で書類を書いて順番を待っている。


 正直に言って、少しテンションが上がっている自分がいた。

 ファンタジーRPG好きとしては、一度は体験してみたい光景そのものだ。

 ――最初の数分は。


 指示通りに手続きを進めていくうちに、現実が追いついてくる。

 番号札。呼び出し音。書類。確認。署名。再確認。

 やっていることが、完全に役所だった。


 そしてもう一つ問題があった。

 異種族に何を話しかければいいのか、全く分からない。

 話しかけたい気持ちはある。だが、距離感も文化も常識も不明だ。不用意な一言で何かを踏み抜きそうで、結局なにも言えない。


――異種族との会話経験さえあれば。

 そんな意味のない反省を頭の中で繰り返しながら、無事に手続きを終えた。


 そのまま、この世界についての講習に案内される。

 講習内容は、拍子抜けするほど分かりやすかった。この世界は「交差界」と呼ばれている。様々な世界から人が流れ着く、いわば異世界の交差点。不定期に訪れる列車から降りてくる者は「異世界人」と呼ばれ、保護対象となる。


 保護と言っても永続ではない。一定期間、この世界の常識を学び、その後は仕事を斡旋されるらしい。


 教育機関はあるだろうか?

 あるとしても、どうか五教科指導が求められる世界であってくれ。教育機関は魔法に関してだけです……なんてことになったら、特別なスキルのない俺は路頭に迷うかもしれない。それは勘弁して欲しい。

 講習を聞きながら、そんなことを考えていた。


 やがて講習が終わり、一次住居への案内待ちの時間になった、その時。


「地球からお越しの荒川様。至急、界長室へお越しください」


 放送が流れた。

 思わず飲んでいたセルフの水を噴き出す。

 は? なんで?


 理由は全く分からないが、ここで逆らう選択肢はない。おとなしく案内に従い、界長室と書かれた扉をくぐる。


 室内には、初老の竜人らしき人物が一人。

 その横に、品のある初老の男女が並んで立っていた。


「あの、なにか……?」


 恐る恐る尋ねる。すると男女は一歩前に出て、静かに告げた。


「我が王がぜひあなたのお話を聞きたいと申しております。お城までご同行願えますか?」


 断るという選択肢が存在しない圧力が、言葉の端々から滲んでいた。


「あ……はい……」


 そう答えるしかなかった。

 俺の運命は……どうやらよくない方に転がっていそうな気がする。

第5話をお読みいただきありがとうございます。

ようやく「市役所」の手続きが終わったと思ったら、次は「王族の強制呼び出し(招待)」というハードモード。

「五教科を教えさせてくれ」と切に願っていた荒川ですが、彼の行く先には、もっと過酷な労働(?)が待っていそうです。

この呼び出しが、先ほど助けた「姫」とどう繋がるのか……。

次回、お城での展開にご期待ください!ブックマーク、評価もぜひお願いします。

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