第3話 トリガー
俺がこの世界に来て1週間が経った。昨日は仕事に行った。けど、大企業様は大したことやってねえんだな。ほとんど会議で資料作ってプレゼンやらの繰り返し、正直思ったより余裕だ。それなのに聞いた感じ、帰りは最近遅いって未来が言ってたな。まさか浮気なんてしてえだろうな。お前も進だってのにそんなだせえことはやめろよな。
そんなこんなで今日は未来と平行世界の俺が落ちたっていう場所に行ってみることにした。
まあ、定石だろう。それなのに未来の支度がおせえ。女ってのはこんなに時間かかんのか、めんどくせえ、同棲するときはそのへん気をつけよ。ま、そのスタートラインにも立ってねえけどな、はっはっはー。
そういえばこの家の紹介をしてなかったな。間取りは1LDKで一室は平行世界の進と未来の寝室になっている。もちろん俺はリビングで寝ている。というか、最初の夜に未来が黙って布団だけぶん投げてそっちで寝ろと言ってきたからだ。
あ、そういや財布どこやったっけかな。寝室か?
そう思って扉を開けると下着姿の未来がいた。
「ちょ」
「あ、えと、ごめんなさい。ありがとうございました」
俺はそう言ってすぐに扉を閉めると秒で未来が出てきた。
「おい!てめー!なにもしねえって言ったろ!」
「いや事故だって」
「事故だったらなんだありがとうございましたって」
「あ、いや感謝を、うぐっ」
顔にグーパンされた。
それからプラス20分して準備ができたようで、家を出て俺が運転で車を走らせた。
「あーもうほんと最悪」
「まだ言ってんのかよ、しょーがねえだろ同棲してんだから」
「そんなこと言ったってこの前だって」
「何ジロジロ見てんの!ばか!」
「そんな見てねえわ!それに同棲してんだから視界に入るのはしょうがねえだろ!そんなん言うんだったら、、」
(いや同棲解消とか言葉にすんのよくねえよな。未来も我慢してんだし)
「なに?」
「いや、なんでもない。でも薄着になってんのがわりいだろ!」
「だって私の家だもん!」
「俺の家でもあるだろ!」
「あんたの家じゃない!進と私の家!なんだもん、、」
「あ、いや、ごめん。俺が悪かった。明日になったらどっか行くよ」
「東京に行くあてなんてないでしょ」
「ない、けど」
「そこまで性格悪くない。。ご家族も心配するんだし、ここにいなよ」
「うん。ありがとう」
「こちらこそ。でもどうにかしようなんて思わないでよ!」
「んだよ!仲直りする流れだろーが!」
「ばか!うっさい!わかった?」
「わかったわかったって、なんもしねえって」
「あんなことがあって、もういつ襲われるか」
「襲うわけねえだろ」
「意気地無し」
「ああ?」
「もしかして、君は童貞なのかな?」
「んなわけねーだろ」
(なぜわかる)
「ほんとかなー?」
「進に悪いからなんもしてないだけだわ。自分で自分の株落としてどーすんだよ」
「たしかに」
「にしても東京で車持ってんのすげえな」
「ぶつけないでよ?」
「頑張る。さすがに交通は変わんねえだろ」
「私が運転すればよかったかなー?」
「いやいいよ、俺運転好きだし、未来には手伝ってもらってる立場だし」
「え?」
「え?」
「なんか、うざ」
「はあ?」
「あ、そこの駐車場入って」
「ちょっと遠いけどいいのか?」
「あの近くだと駐車場そんな空いてないし、こっから歩きで」
「なるほどなー、やっぱついてきてもらってよかったわ」
車を駐車場に停めて、平行世界の進が落ちたであろう階段に向かった。
そこはデートスポットであるビル?の屋上だった。そこへ繋がる階段で落ちたらしい。
「こんな場所あったんだな」
「来たことないの?」
「ねえな、たぶん」
(東京来てデートなんてしたことねえんだよ)
「それにしても階段って結構高さあんな。こっから落ちたのか」
「そう。だからなおさら心配で」
「俺が普通に動いてんならたぶん大丈夫なんだと思うけど。頭打ったんだっけ?」
「うん」
「こりゃいてーよな」
「じゃあさっそく」
「いやまてまてまて、おま、よくそんな躊躇なく、ひとつ間違ったら殺人だぞ」
「だって同じことしたら元に戻るかもって」
「それにしてもだろ?こっちにも心の準備が」
「男らしくさっさと行く」
(こいつ躊躇なく押しやがった)
ガーン!
「いってえー!!」
「どう?戻った?進?」
「まず初めは俺の心配をしろ」
「なぁんだ、君か、だめだったか」
(あーもう血が上って吹き出そうだわ。ん?)
俺は何か視線を感じたので、その方を見た。が、特に何も無かった。
「どしたの?」
「いや、なんか妙な視線が」
「あー、ドローンじゃない?警備のためによく飛んでんの。だからあの時もすぐ救急が来れたんだから」
「へー」
(なんか妙に科学が発展してんだよな)
「君がいた世界は違うの?」
「まあ、ここまではねえな」
「ふーん」
「興味がねえなら聞くな」
「あはは、バレた?」
「ほんと可愛げがねえな」
「あ?」
「なんでもないでーす」
それから色んな意味で頭を抱えながら周辺を見て、俺の記憶に覚えがないか、現実世界でもここに来たことはないかなど色々考えながら周辺を歩いてみたが、特になにもなく、ただただ未来とデートスポットへ行って飯を食べて帰るだけになってしまった。
「結局今日1日収穫なしか」
「そういう日もあるっしょ」
「俺の体がどうなってるか分からない以上早めになんとかしてえんだけどな」
「帰ってまた考えまとめよーよ」
「だな!さんきゅー!」
「君ってさ、素直に言葉にするよね。あの時も」
「そりゃそうだろ。言葉にしなきゃ伝わんねーんだから。人間なんて自分以外全員他人で察することなんて無理なんだし、言葉で伝えられんのに言わない方がおかしいだろ」
「君、やっぱモテないでしょ。友達いないでしょ」
「モテるし!友達いるわ!」
「えー、モテて友達いる人そんな返ししないけどなー」
「あーもうわかったわかった。はいはいモテないし、友達もいねえよ」
「あ、開き直ったー。でも言葉にしないとってのはたしかにそうかもね」
(未来も大概素直だけどなー。ま、たぶん平行世界の進はこういうとこ好きになったんだろうな。俺は外見が先だったけど)
帰宅して考えをまとめたが、良さそうな答えは出なかった。トリガーはないのか、やはり待つしかないのか。
「あーまじ考えれば考えるほどおかしくなるわー」
「だよねー、、あ!」
「なに!?」
「実家帰ってみるのはどう?なんか見つかるかも」
「あー、まあ、たしかに?一理あるかも」
「ご家族も心配してたし、ちょうどいいよ!それにわたし的に果胡さんの存在が気になるんだよなー」
「なんで?」
「んー、勘?」
「おい」
「でもさ、君の近しい人間で存在するしないは大きいんじゃない?」
「それは俺も思ってはいるんだけど、そんな1人の人間で変わんのか?」
「質問を質問で返すな」
「痛っ、デコピンすな」
「にしし、いつ行く?」
「ゴールデンウィークにするか」
「ゴールデンウィーク?金の週ってなに?」
「え、ゴールデンウィーク存在しないの!?」
「だからなにそれ」
「4月の下旬から5月の上旬にかけて祝日が重なるじゃん!そのことだよ!」
「あーなんかちっちゃい頃に言ってたかも」
(そんな古い言葉じゃねえぞ、できたのはだいぶ前になるけど、、たしかゴールデンウィークって映画が関係してたような。あれ、なんだこの違和感、今日道見たり百貨店の中も通ったけど、なんか、、それに見慣れないアプリもあったし)
「未来、映画って、映画館ってあんの?」
「映画館?10年前くらいに全部潰れたよ」
「10年!?そんな前!?」
「そんな驚くこと?映画館って時間に縛られるし、稼げないしで潰れて、今映画観るなら全部配信でサブスクになってるよ」
「そう、なのか」
(なんかやっぱり文明が進んでる。なんか関係あんのか)
「じゃあ実家行くのは次の連休でいいのね?」
「ああ、うん」
(なんか手がかりがあるといいけど)




