第4話 帰省
2026年5月1日
あっという間に平行世界に来て、1ヶ月、そして今日は帰省して手がかりがないか確かめる。一応未来も一緒だ。
「ただいまー」
「おかえり、未来ちゃんもよく来たね」
「いえいえ、こちら皆さんで召し上がってください」
「丁寧に、いつもありがとね。お茶でも淹れようか」
「ありがとうございます」
(すっげえ、できた彼女だな。この前も思ったけど家族仲は良好なんだな。ま、俺の親と同じならそんなギクシャクはしないわな)
「進、荷物置いておいで、部屋綺麗にしてあるから」
「ありがとう。わかったー」
(って、俺の部屋どこだよ。1階は同じ感じだけど、たぶん2階だよな)
俺は一瞬どうしようかと思っていると、未来が耳元で言った。
「とりあえず2階上がって、あとは私が案内するから」
俺は親に気づかれないように、ありがとうと小声で言った。
俺と未来は2階へ上がり、未来が進の部屋へと案内してくれた。
「盲点だったわー、助かった」
「私も言っておくの忘れてた。どうなの?君の世界とご実家は違う?」
「1階は同じっぽいけど、やっぱ2階の姉ちゃん分の部屋があるって感じだな」
「それはそうか」
「にしてもほんとできた彼女だな。手土産に受け答えに、すげえな」
「褒めても好きにならないわよ?」
「そんなつもりで言ってねえよ」
「あはっ、じゃあ1階戻ろ、ちゃんとフォローするから安心して」
「申し訳ねえ、未来さまさまだな」
「ふふーん、まあね」
「それフラグな」
俺と未来は1階へ戻り、母親がお茶と未来が持ってきたお土産を出してくれた。
「この後はどこか行ってくるの?」
「あー、まあ軽くドライブ。あにいちゃんと姉ちゃんは?」
「あにいちゃんは仕事で姉ちゃんは友達と出かけくるって」
「そっかー」
「未来ちゃんも来るって言ってあるから早く帰ってくるかも」
「じゃあ夕飯時になったら帰ってくるようにするよ」
「いいからゆっくりしてきな。未来ちゃんもいつも通り夕飯の手伝いとかはいいからね」
(そう言われてもこっちの世界のこの辺土地勘ねえんだよ)
「いつも通りに、ですね?」
「ごめんね〜、私が動いていないと落ち着かないから」
(こっちの母ちゃんもそういうスタンスなのか)
「いえいえ!いつも美味しいごはんありがとうございます」
「それにしても進は未来ちゃんのこと思い出したの?なんか距離感が戻っている感じがして」
「え、あ、いや戻ってないけど、少しずつそういう存在がいたようなっていうか」
(忘れてたけど記憶喪失ってことになってんだった)
「たぶん退院後にうちに戻ってからいつも通りの生活になっているのでそのせいかと思います」
「そうなのね、よかった。ほんとによかった。進が未来ちゃんに寂しい思いさせていると思うと」
「そんなそんな、私は大丈夫ですよ」
「そんな2人の邪魔をしちゃいけないね。もう出る?」
「うん、このへん走ってみれば姉ちゃんのことも思い出すかもしんないから」
俺と未来は実家を出て、こっちの世界の地元をまわってみることにした。
「とりあえず向こうの世界の感覚で地元ドライブしてみよっか」
「だなー、小中高って行ってみるか」
「変わってるとこある?」
「いや、ねえな。道も同じだし、まあ店とかは違うけどおっきくは変わってるとこはねえわ」
「ねえ、中学。。そっちの世界の私ってどんな感じなの」
「んと、外見は変わんねえな。ちょっとしか話したこと無かったけど、こっちの未来とは全然違かったわ」
「どう違うの?」
「おしとやかっていうか、おとなしいっていうか。ここまで口悪くは」
肩パンがとんできた。
「いって!おま、運転中はやめろて」
「わたしも口悪くねえやろがい!」
「はあ。ソウデスネ」
(今の録音して聞かせたい)
「ま、俺の世界の未来が本当はどんな子だったかなんてわかんねえけど」
「そうなんだ。やっぱ会ったのは中学生の頃?」
「そー。小学校が2つあって、中学はその2つの小学校から集まってくるからそれで」
「そこは同じなんだ。今は話したり、SNSで繋がってたりしないの?」
「しねえなー、俺は大学から東京だったし、高校も俺の世界の未来とは違う高校だったし」
「え、じゃあ君は進と違う高校なの?」
「あーそういえばそうだったわ」
「君ってどうやって高校選んだの?」
「野球で選んだ」
「え!そうだったの!?」
「そんな驚くか?」
「いやてっきり帰宅部だったのかと」
「ざっけんな!」
「あははっ、でもたしかに。よくプロ野球見てんなーって思った」
「じゃあ俺はただの野球好きなやつだと思われてたのか」
「うん!あ、ちなみに進もバスケで高校選んでたよー」
「そんで未来はそこのマネージャーだったんだろ?青春だねえ」
「おっさんくさ」
「うっせ!てか未来は元々バスケやってたのかよ」
「うん。私もやってたよ。小学生の頃から」
「あれ、でもたしか俺の世界の未来はバスケやってなかったような、、」
「そうなんだ。バスケをやってなかった世界線、、、考えられないな〜」
「そうだよなー、俺も野球やってなかった世界線考えられないし」
「いやそれがこの世界でしょ」
「そうでしたー」
「ほんと君ってばかだよね」
「喧嘩売ってんのか」
「売ってるよー」
「ほんとかわいくな」
「あ?」
「いやなんでもないです」
「てか、未来は実家帰んなくていいのか?全然送ってくけど」
「あれ、言ってなかったっけ?わたし、家族全員亡くなってて」
「え、ごめん」
「ちょっとやめてよー、もう大丈夫だし、私には進がいるから。君じゃなくてね!」
「うん」
(そんなこと俺の世界でも聞いたことなかったな。いや、実際はわからんけど、だから俺が違う人間だって言った時もあんな取り乱してたのか。そりゃ辛いよな)
平行世界での後藤未来という人間の強さが分かった気がした。
小中高学校行ってみたが、特に何もなく、地元をドライブしてみても街には変化はなく、ただただ未来と喋くって終わった。
「ただいまー」
「おかえり、ちょうど夕飯できたよ」
「はーい」
「お姉ちゃんはもう少し遅くなるから食べてていいって、あにいちゃん部屋にいるから呼んできて」
「はーい」
俺はそう言って2階へ上がった。
(ここ、未来曰く姉ちゃんの部屋だよな。ちょっとだけ入ってみるか。未来だって姉ちゃんが怪しいって言ってたし、決して下心がある訳ではない。断じて)
静かに部屋の中へ入ると、想像していた女の人の部屋というのが目に入ってきた。
(やっぱこれ見ちゃダメなやつだ。俺にとっては知らない綺麗なお姉さんなんだから)
そう思って姉ちゃんの部屋のドアを閉めた。
あにいちゃんを呼んでくることを思い出し、あにいちゃんの部屋の前で呼んだ。
「あにいちゃん、飯だって」
「おう」
俺はスマホの充電がなかったことを思い出し、持ってきた荷物の中から充電器を取り出そうと進の部屋に入った。
(あったあった。あれ、こんな良いPCうちにあったか?俺の世界にはないけど、科学が進んでるせいかな。にしても見たことないなこんなPC)
「母ちゃん、上のPC、パソコンうちの?」
「あーあれね、姉ちゃんの。姉ちゃん片付けてなかったのね」
「へー」
(姉ちゃんの、、こっちの公務員はあんないいもん使ってんのか、てか持って帰ってきていいのかよ。)
「いじったら怒られるよ?」
「なんもしないよ」
(あの姉ちゃんが怒るって想像できねえな、姉ちゃん今日友達と遊びいってるって言ってたよな)
夕飯を食べ終え、両親があと片付けをしている時に俺は未来に言った。
「さっき話したPC気になるから一瞬上あがって見てくる」
「大丈夫なの?」
「たぶん」
「たぶんって」
「だから家族のこと見といてくんね?」
「しょうがないな〜、ま、お兄さんは夕飯食べたらいつもリビングでスマホいじってるし大丈夫だと思うけど」
「まじ任せた」
「りょーかい。一応スマホ持ってっといて、何かあったらLOINする」
「おけ」
俺は静かにリビングを出て2階へ上がり、姉ちゃんのPCを立ち上げてみた。
(だー!やっぱパスワードあるよなー、わかんねえ。しかもこれ2段階認証だから姉ちゃんのスマホとかにいっちまう。やっぱだめか)
そう諦めかけた時だった、PC台の下になにか落ちていた。
(ん?なんだこれUSB?いやなんかちょっと違う。PC1回閉じてと)
そのUSBらしきものは、端子がたくさん付いていた。
(この形、、スマホにさせんじゃね。でもなんか嫌な予感が、開いてはいけない箱を開けるような。でも怪しいし)
自分のスマホに付けようとしたその時、部屋の明かりがついた。
「うわ!」
「うわ!進なにしてんの?こんな暗くして」
「あ、いやえっと、、」
俺はそう言いながらUSBもどきをもとの場所へ投げ捨てた。
「未来ちゃんひとりにしてだめでしょ」
「あはは、ごめんー」
「謝るなら未来ちゃんにしな」
「だよねー」
(いやー、まじびびったー。でもあれ気になるな、姉ちゃんがいない時また見てみるか)
俺はすぐに1階へ降りた。すると階段近くで未来が待っていた。
「ばか!スマホみてなかったでしょ!」
「わりいわりい、でもギリバレんかった」
「それで果胡さんは?」
「着替えてんじゃね?咄嗟に降りちゃったからわからん」
「えっち」
「どこがやねん」
「あんた時々果胡さんに抱きつかれてるけど変な気起こさないでね」
「わかってるって、起こさねえよ」
「君みたいな意気地無しは無理だもんね」
「しばくぞ」
「あはっ、やってみ」
「その性格の悪さ気持ちいいぐらいだわ」
「進もね」
「あ?」
「あ?」
その日はそれ以降、家族と恋人という演技をこなし、寝るために2階へ進の部屋へと上がった。だが、姉ちゃんのPCは部屋にはなかった。そのため、USBもどきを探した。
「何やってるの?」
「いや、PCはたぶん片付けられて、ここにないけど、USBみたいのもないのかなって」
「USBみたいなの?」
「なんか端子がたくさんついててスマホにもさせそうなもんがあったんだよ、それをこのへんに投げたんだけど」
「そんなのあったかなー、私は見たことも聞いたこともないけど」
俺はPC台の下を漁りながら未来とそのUSBもどきの話をした。
「ほんとかー?」
「うーん、たぶん。。」
「だめだ、やっぱないっぽいな。それも回収されたんかな」
「たぶんそうじゃない?てか果胡さんのものなんでしょ?勝手に探すのは良くないんじゃない?」
「たしかに、それもそうか」
「それに、ほら、やっぱ調べてみたけどそんなのないよ」
未来は俺にスマホを見せて証明してみせた。
「たしかに無さそう。じゃああれはなんだったんだ」
「私もそれを見たわけじゃないからわかんないけど、なんか違うものだったんじゃない?」
「そうなんかなー」
「まあまだ連休もあるしさ、その間に見つかるよ!」
(ポジティブ!)
「気長に探してみるか」
俺はそう言い、腰を上げて探すのをやめた。
「それより!これどうすんのよ」
それとは、布団が2組並べられていることだった。
「離して寝るから大丈夫だって」
「それもそれでもし誰かに見られたら喧嘩してるって思われるじゃん!」
「そうだけど、見られることなんてないだろ。勝手に部屋に入ってくることなんてないら?」
「たまに果胡さんが朝起こしに来る」
(たしかにあの姉ちゃんならやりかねない)
「じゃあどうしろってんだよ」
「それはだから、手足縛って寝てもらう」
「そっちの方がやばいだろ!」
「ちょっと!大きな声出さないで」
「あぁすんません。てか、前にも言ったけどなんもしねえからいいだろ」
「そうなんだけど!さすがにまだ信用が」
未来は少し声を荒らげて、辛そうな顔をして言った。
(そっか、そりゃそうだよな、未来もいっぱいいっぱいなんだよな)
「わかった。今日明日は一旦車で出かけて車中泊でもする。さすがに連休全部は怪しまれるからせめて残りの2日はこの部屋で寝かせてくれ」
「うん。ありがとう」
「そんじゃまた明日な」
俺はそう言って、スマホと財布、車の鍵を持って部屋を出ようとした。
「でもやっぱり、、、」
未来は辛そうな顔で俺を引き止めた。
「唯一俺のことを知ってる未来がすり減るのが俺は1番嫌だから。大丈夫だ、怪しまれたら俺がどうにかする」
「ごめん。。ありがとう」
「おう!おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
俺は家族にバレないように実家を出て、車を走らせ、色々考えた末にネカフェに泊まった。
翌日、念の為、早めに実家に戻り、どうにか家族を起こさず、進の部屋まで戻ってきてドアを開けた。
「おはよう」
「うお!びっくりした〜。おはよう、早くね?」
俺は少し軽いノリで言った。が、未来はそうではなかった。
「ごめん、やっぱ今日からでいいからここで寝よ」
(たぶんまともに寝れてねえな。色々考えてくれたんだろう)
「そうか、わかった。ありがとう」
「なにも聞かないの?」
「その顔と声聞けば色々考えたことはわかる。だからいいんだよ、ありがとな」
「ふふっ、君のくせにかっこつけちゃって」
「うっせえ、ほらもう寝とけ。無理に起きなくても母ちゃんには上手く言っとくから」
「うん、ありがとう」
「おう!」
そう話した1分後には未来は寝てしまった。
俺もネカフェだとあまり寝た気にならなかったので、自分の布団に入るとすぐ寝てしまった。
(ん?誰だ、誰か泣いて、、)
「2人ともいつまで寝てるのー!」
どこからか聞こえた大きい声に目が覚めた。
目を開けると部屋のドアに寄りかかって叫んでいたのは姉ちゃんだった。
「姉ちゃんうっさい」
「だってもう昼の12時だよ!?」
「だからってそんな叫んで起こすことはねえだろー」
(なんか夢ん中で誰か泣いてたような)
「だってえ、せっかくだし遊び行きたいじゃーん!」
そんなことを話していると未来が起きた。
「あ、果胡さん、おはようございます」
「おはよ!よく寝れたようで良かったよ!ご飯できてるから下降りておいで」
「はい!ありがとうございます!」
姉ちゃんは部屋のドアを閉めて下へ降りていった。
「君も寝てたの?」
「なんかネカフェだと寝た気になんなくて、気づいたら寝てた」
「あんなかっこつけちゃって結局か」
「やかましいわ」
「さてと、今日は何しようかな、、まずはご飯たーべよ!君も行くよ」
「はいはい」
(未来って寝たら忘れるタイプなんだな、朝話したテンションと違いすぎる)
俺と未来が1階に降りると、姉ちゃんは俺らを待っていたかのように昼食が置かれたテーブルに着き、スマホをいじっていた。
「お!きたきた!食べよ食べよ!」
父、母、兄は既に昼食を済ませており、俺と未来と姉ちゃんで昼飯を食べた。
「未来ちゃん今日なんか予定ある?」
「今日は特にないですけど」
「じゃあちょっとだけ私に付き合って!」
「いいですよ!」
「やったあ!進、未来ちゃんもらってくね」
「物じゃねえから」
「言うようになったじゃーん」
「うっせえ」
そこからは未来と姉ちゃんの2人の世界でどこいこうとか何しようとか話していた。そして、昼食を食べ終えるとそそくさと準備をして2人して出かけて行った。
未来も俺みたいなよく知らないやつといるよりかは姉ちゃんといた方が心が休まるだろう。
俺はどうしようかと椅子に座ってスマホをいじっていると、母ちゃんが話しかけてきた。
「あんた、覚えてない割には姉ちゃんとも仲良いし、いつも通りじゃない?」
「いや、なんかしっくりくるっていうか、記憶が戻る前兆なんかな。あははは」
「そんな呑気な」
「時間の問題っていうじゃん」
「そうだけど、未来ちゃんともそんな変わんないみたいだし」
「ま、姉ちゃんと同じで記憶が戻る前兆なんだら」
「まったくこの子は」
「あはは」
結局その日はスマホをいじって昼寝をして軽くドライブ行くぐらいで1日が終わった。夕飯は未来と姉ちゃんで食べてくると言っていたので、俺と母ちゃんと父ちゃんとあにいちゃんでテーブルを囲んで食べた。
そう、これが俺の現実世界での通常の風景。家族4人、母ちゃん父ちゃん俺で話してあにいちゃんがたまにボケるような、平行世界でも変わらなかった。
夕飯を済ませて少し経った頃、未来と姉ちゃんが帰ってきた。未来は少し疲れたようだったが、楽しみすぎて疲れた感じだった。疲れもあったのか未来はすぐに風呂に入っていった。
ピコンっ
(あれ未来からだ)
私疲れたからお風呂あがったらすぐ2階あがるからその時少し話そ
(ま、姉ちゃんどうだったかって話だよな)
おけ
注文通り、未来がお風呂からあがって、家族に寝ます。おやすみなさい。と言って2階へ上がった。そして、俺も寝るとだけ言って2階へ上がった。
「そんで姉ちゃんどうだった?」
「うーん、たぶんいつも通りな気がする。普通にショッピングして、夕飯食べて帰ってきたし」
「そっかー」
「ただ」
「ただ?」
「うーーん、私の勘違いかもしれないけど、なんとなーく私に気を使ってるような。いや、いつも気を使ってもらってるんだけど、なんだろうな、、たぶん気のせい!」
「たぶん昨日のこと、PCが〜とかもあってそう思ったんだろ」
「たぶんね!」
「え、だけ?」
「だけって?」
「いや、姉ちゃんのことでなんか話すことがあるのかと」
「それもあるけど、普通に今日楽しかったから話したいって思って」
「え?あー、そう」
「それにね!ここ!今日夕飯食べてきたんだけど、ハンバーグが美味しくて美味しくて」
未来はそう言いながらスマホの中の写真を見せてきた。
「たしかに美味そうじゃん」
「そう!だから君にも教えたくて!君もハンバーグ好きでしょ!あ、てかここのお店君の世界にはある?」
「どうだろうなー、たぶんないかも。どのへん?」
「このへんなんだけど」
未来はそう言いつつスマホでマップを開いてスマホを渡してきた。
「このへんかー、どうだろうな。あんま行かないし、やっぱわかんねえかも」
俺はスマホを返そうとすると未来は知らない間に座りながら寝てしまっていた。
(数秒前まで話してたやん!ほんとに楽しかったんだな。今日はゆっくり休めよ)
俺は未来を横にならせて布団をかけてあげた。
(まじで話したかっただけなんだな、ほんとは平行世界の進に話したかったんだろうに。気が強く見えるけど結構繊細で、それでいて気を許した相手なら人懐っこいんだよな)
眠っている未来の顔がいつもより幼く、可愛くみえた。
2026年5月6日
結局残りの連休は家族で出かけたり、家でゆっくり過ごしたりして終わった。
連休最終日の昼となり、車に荷物を詰め込んだ。未来は母ちゃんと玄関先で話しており、俺は運転席でスマホをいしまっていた。すると、姉ちゃんが窓越しに話しかけてきた。
「忘れ物ない?」
「うんたぶん大丈夫」
「次会えるのはいつになるかなー」
「ま、てきとーに帰ってくるよ」
「そう。。また会える時を楽しみにしてるね」
(前も思ったけどそんな寂しがるもんか?進はどんだけ会ってねえんだよ)
未来と母ちゃんの会話が終わったのか、未来は助手席に乗り込んできた。
「もう大丈夫なのか?」
「うん!出発しよ!」
俺と未来は手を振りながら実家を出発した。
「あのさ、最後にちょっと寄りたいとこあるんだけどいい?」
「いいよ、全然時間余裕あるし」
「うん、ありがとう」
未来はそれからそこを右とか左とか、道順だけを言った。
そして着いたのは墓地だった。
「ここ、私の家族のお墓。ちょっと行ってくるね」
「あのさ!俺も手合わせるぐらいはしていい?他人だってのはわかってるし、でも俺は、、」
「あははっ、何言ってんの。私はもう君のこと他人だなんて思ってないし、友達ぐらいには思ってるかな。だからさ、お願いしていい?みんなも喜ぶよ」
「そっか、ありがとう」
俺は未来の後ろをついて行くがまま未来の家族が眠るお墓へと向かった。
「ここ」
「おう」
それだけの会話?をすると未来が永遠に眠る家族へと話しかけた。
「みんな久しぶり、元気だった?私はまあ、ちょっと元気なくしてたけど元気だよ。私に新しい友達ができたんだ。私の横にいる人。外見は進なんだけど、ほんとは違うの、最初は戸惑ったこともあったし、今でも上手くやってくか不安だけど、この人、進に負けず劣らずの優しすぎるばかで、だからこそこの人なら大丈夫って思っちゃった。その、進とは、今はちょっと会えてないんだけど、たぶん、ううん、絶対大丈夫!だから見守っててね」
未来はそう言って、数秒お墓の前で手を合わせた。
「君も君のこと私の家族に教えてあげて」
「うん。えと、初めまして、今井進です。未来さんとお付き合いしてる方と同姓同名で外見も同じなんですけど、全くの別人で、その、未来さんと会ったのは1ヶ月前ほどで、その時はだいぶ乱暴されたんすけど、でもそれくらい進のことが好きで、大切にしてるんだなぁって思いました。未来さんは気が強く見えますけど、そんなことなくて繊細で人懐っこくてたまーにですけど可愛いとこもあります。それでいて気も使えて素敵な女性で、人としても尊敬してます。だから、未来さんと友達になれて嬉しいです。約束はできないすけど、また会いに来ます」
俺もそう言い残して、手を合わせた。
後ろを振り向くと未来がニヤニヤしていた。
「へー、そんな風に思ってたんだ」
「それは未来もだろーが」
「あははっ!あ、好きになっちゃったとかやめてよー」
「ならねーよ」
「こんな素敵な女性なのに?」
「はいはい、うっさいうっさい。だからかわいくね、」
「ぐほっ、」
今日は腹パンされた。
「ま、こんな感じで一応は仲良くやってるんでご安心を」
そして、俺と未来はお墓を少し掃除して、未来の家族に挨拶してその場を去った。未来も、じゃあね、また来るね、とだけ言った。
(この世界でも亡くなった人は天国へ行くのだろうか、転生という概念があるならどの世界で転生されるのだろうか)
俺は歩きながらふとそんなことを考えてしまっていた。
今回、帰省の手がかりは、手がかりと言っていいのかわからないが、現実に存在しない人のもの、つまり、姉ちゃんのPC、そしてUSBもどきというのが唯一の収穫だったと言えるだろう。




