表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/3387

1.2-23 町での出来事14

 ルシアに対し、ローブ(マント?)を購入することを決めたワルツは、次の品を探し始めた。


「さてと……杖は、どこかしら?」


 妹と買うことを約束していた魔法使いの杖。それがどこに並べられているのか、とワルツは決して大きくはない店の中を見渡した。

 すると、依然、泣き虫モードだったルシアが、再び顔を決壊させながら、姉に対し問いかける。


「え゛っ……(づえ)()ってぐれるの……?」ぶわっ


「うっ……うん……って、ルシア?そんなしょっちゅう泣いてたら、杖、買ってあげないわよ?」


「?!」びくぅ


「……い、いや、冗談だけどね?でも、少しだけでいいから……我慢しよっか?」


 嬉しくて泣いていたはずのルシアの表情が、そのまま反転して、悲しそうな表情に変わったのを見て、思わず苦笑するワルツ。

 それから、ルシアを落ち着けて、再び店内を見渡して……。しかし、結局、店内に杖が見つけられなかった彼女は、カウンターの奥の方で、紐のような防具(?)を大切そうに箱の中へと仕舞い込んでいた武具屋の店主に向かって質問した。


「えーと?店主さん?ここって、杖、置いてあります?」


「ん?あぁ、もちろんだ。大きなやつから小さなやつまで、なんでもござれだ。誰が使う?おめえさんかい?」


「いえ、この娘です」


「……おめえ、本当に子どもを戦わせるつもりなんだな……まさに鬼だな……」


「いや、だって私自身は、戦うのに、武器とか魔法とか、そういうの必要無いですし……」


 そんなワルツの言葉を聞いて――


「………………そうかい」


――と、やや間があってから、彼女に背を向け、カウンターの後ろにあった箱の山へと視線を向ける店主。その後ろ姿からは、何かを言いたげな雰囲気が漂ってきていたようだが、結局、彼がそれを口にすることはなかったようである。

 その様子を見たワルツは、自身の服の袖で顔を拭いていた妹に対し、質問した。


「……ねぇ、ルシア?私、何か、変なこと言った?」


「ううん?そんなことなかったと思うよ?()()()()お姉ちゃんだった」


「そうよねぇ……。にしては、店主さんの反応がおかしいんだけど……どうしてかしら?気になるわね……」


「(それ本気で言ってるの?お姉ちゃん……)」


 まだ、”常識”の欠片が、かろうじてどこかに残っていたのか、ワルツの呟きを聞いて、なんとも表現し難い表情を見せるルシア。そんな彼女の”常識”も、ワルツと行動を共にしていく内に、いつしか薄れて消えていくのだが……。この時の彼女は、そのことにまるで気づいていなかったようだ。


 姉妹がそんなやり取りをしていると、箱の山から目的のものを見つけたのか、武具屋の店主が長さ30cm程度の細長い木箱をカウンターの上に置いて、そして2人に対し、こう言った。


「嬢ちゃんがどの程度の魔力を持ってるかは知らんが……まぁ、これで十分だろ。ウチで扱ってる一番小さな杖だ。サイズが合わなかったら……嬢ちゃんが大きくなるまで、我慢するんだな?」


「……開けてもいいかしら?」


「あぁ、構わん。というか、ちゃんと嬢ちゃんの魔力に合うか、確認せにゃならんからな」


 ワルツは店主のその言葉を聞いて、木箱に手を触れると、おもむろにその蓋を開けた。

 そしてその中身に目を通して、姉妹揃って、こう口にする。


「「…………箸?」」


「失礼な……。一番小さなやつだから、1本しかない箸みたいな見た目だが、これでもれっきとした魔法の杖だ」


「ふーん……」


「えっと……店主さん?これ、持ってみてもいいの?」


「もちろんだとも」


「……これが杖かぁ……」キラキラ


 そう言って、木箱の中に入っていた、高級そうな箸のような棒きれ――もとい魔法の杖を手に取るルシア。彼女の人生で初めて手に取る魔法の杖だったこともあって、ルシアはまるで、宝石を手に取る少女のような表情を浮かべていたようである。

 そんな彼女に向かって、店主がこう口にする。


「そんじゃぁ、杖と嬢ちゃんの魔力の相性を見るから、少しだけ魔力を通してくれるか?」


「相性?」


「そうか……知らんのか。杖っつうのはな?生きもんみたいなもんで、人を選ぶんだ。まぁ、正しくは、人を選ぶんじゃなくて、人が持つ魔力を選ぶっつったほうがいいかもしれねぇがな?」


「そっかぁ……。ちょっとだけ魔力を込めればいいの?」


「あぁ、あまり力を込めすぎると、魔法が発動しちまうから、本当にちょっとだけだ。店の中を壊されても、困るからな?」


 そう言って、ルシアに対して、にっこりと微笑む武具屋の店主。そんな彼の顔は、10人が見れば10人ともが怖い、と答えるような強面な顔つきだったが、笑みを浮かべているときだけは、それが薄れて、自称『イタイケなおっさん』を体現していたようである。

……ただそれも、この瞬間だけの話だったようだが。


パァンッ!!


 不意に、そんな乾いた音が、武具屋の中に響き渡ったのだ。まるで――現代世界の銃が暴発したような、そんな音が……。



いやの?今日こそ、武具屋での話を終わらせようと思ったのじゃ。

じゃがのう……妾の睡眠不足ゲージが、おーばーふろーを起こして、制御不能に陥っt…………zzz。


……明日こそは、必ず…………zzz。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ