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1.2-22 町での出来事13

「エンチャントを掛けた武具っつうのは――」


 そんな切り出し方をして、武具に掛けられているエンチャントの説明を始める武器屋の店主。そんな彼からは、ワルツたちに対する警戒心のようなものは既に失われていて、まるで、駆け出しの冒険者に対し、嬉しそうに自分の経験を説明する熟練冒険者のような雰囲気を放っていたようである。それは、ワルツから出る”殺気”に慣れたためか、あるいは、いつの間にか、その殺気自体が消え去っていたためか……。


「――おめえたちみたいな命知らずの冒険者が無駄死にしないようにと、思いと気合と丹精込めて、特殊なオマジナイを掛けてるから、高けぇんだよ。それも、俺みたいな武具屋のイタイケなおっさんが、手間ひまかけて、な?」


「あー、なるほど。つまり……ここで扱ってる武具には、店主さんの呪いが掛かっているから高い、ってわけですね?」


「……こちとら一応、真面目に話してるんだから、そういう傷付くこと言うなよ……」しゅん


 そう口にして、悲しそうな表情を浮かべる店主。それから彼は、今度こそ真面目(?)に、エンチャントについて説明を始めた。


「で、エンチャントっつうのは、素材に魔力を定着させて、様々な特殊効果を宿らせるっつう由緒正しい魔法だ。話によると、魔道具を作るときにも、エンチャントが基本になるらしいぞ?」


「そうですか……。じゃあ、このローブとかが高いのとかも――」


「そうだ。エンチャントがかかってる武具ってのは、ある意味で魔道具と同じだ。飛んで来る魔法を弾き返したり、怪我の治癒を早めたり、見た目よりも多くの荷物が持てるようにしたり……。そんな感じで、本当の意味での実用性を目指したから高いんだ。その辺のなんちゃって武具と比べてもらっちゃぁ……困るぜ?」きらっ


「「ふーん……」」


 と、姉妹揃って、納得したような、納得していないような、微妙そうな表情を浮かべるワルツたち。彼女たちとしては、エンチャントと魔道具が関係しているという話さえ聞ければ、あとのことは大体予想できたので、もう店主の話はお腹いっぱいだったようである。

 結果、ワルツは、マイワールドに突入しつつあった店主に対し、こう口にした。


「ルシアの身を守るために、この店に防具を買いに来たわけだけど……つまり、”本物の防具”は高くて予算外だから、買えないって、ことね……。ごめんね?ルシア。お金が貯まるまでの間、もう少し、そのままの格好で戦ってもらえる?勇者みたいのがまた来たら、私が身体を張って相手するから……」しゅん


「う、うん……分かった……」しゅん


 そう言って、姉妹揃って、残念そうな表情を浮かべながら、その場を後にしようとするワルツたち。

 そんな彼女たちの姿を見て、武具屋の店主はあからさまに大きなため息を吐くと、2人に対し、こう口にした。


「はぁ……わけあり品で良ければ、安くしておくぜ?」


「「……わけあり品?」」


「あぁ。ちょいと手違いで、おかしなエンチャントを付けちまったり、素材の寸法を間違えちまったりして、売れ残った出来損ない品だ。ほれ、そこの棚に置いてあるぞ?」


 そう言って、陳列棚の端の方で、無造作に置かれていた商品の山へと視線を向ける武具屋の店主。

 それを見たワルツたちは帰ろうとしていた足を止めると、そこへと歩み寄って、商品を物色し始めたようだ。


「……たしかに、わけあり品ね?指が1本多いグローブとか、関節が曲がらないサポーターとか……」


「ねぇ、お姉ちゃん?この紐……何に使うのかなぁ?」


「ちょっ?!(かぁ)ちゃん!何でこんな所に、ビキニアーマーを陳列してんだよ?!これ防具じゃないって、あれほど……」


「「…………」」


 店主が何を言っているのか分からず、首を傾げる2人。いや、正確には、ワルツの方は理解していて、敢えて知らないふりをしていたようだ。


「え、えっと……あ、これなんか良くない?」


「うん?」


「ローブにしちゃ、ちょっと短いけど……ルシアが着れば、ちょうどいい感じのマントになると思うんだけど?」


 そう言いながらワルツが手にしていたのは、紺色のローブの”わけあり品”。素材の布の面積が小さ過ぎたためか、大人が着ると防具にならないどころか、寒さも雨もしのげない、欠陥品だったようである。

 ただ、それは大人に限った話で、背の低いルシアが着る分には、十分な大きさだったようだ。逆に、正規のローブだと、ルシアには大きすぎるので、こちらのほうが都合がいいと言えるかもしれない。


「ふーん……」バサッ「どぉ?似合ってる?」くるっ


「……うん。どこからどう見ても、魔法使いよ?」


「そっかなぁ……私……魔法使いに見えるかなぁ?」ふりふり


 姉から向けられた言葉を聞いて、嬉しそうに尻尾を振るルシア。

 それから彼女は、首元に付いていた値段のタグへと目を向けた。


「……49999ゴールド?」


「ギリギリ予算内ね?」


「それに……色々なエンチャントが付いてるみたいだよ?」


「へぇー、どれどれ?……防御力アップに、防寒?それに……サイズ自動調整?っていうか、サイズ自動調整が付いてるなら、別に訳アリ品じゃなくてもいいじゃん……。まぁ、サイズの調整範囲があるとは思うけどさ?」


 ワルツはそう言いながら、後ろを振り向くのだが、そこに武具屋の店主はおらず。彼はカウンターの奥の方で、店の切り盛りを手伝っている母親に対し、何やら抗議をしていたようだ。


「……まぁ、いっか。じゃぁ、これにしましょ?私からの……プレゼントよ?」


「え゛っ……お姉ぢゃんからの……ブレゼンド……?!」ぶわっ


「うっ……うん……(”泣き虫防止”ってエンチャント……無いのかしら?)」


 自身は買い食いする以外にお金を使う用途が無かったので、手持ちのお金は、すべてルシアのために使おうと考えていたワルツ。しかし、彼女のその計画は、すんなりと進みそうになかったようだ。

 


もう、この後の話とか、どうでも良い気がしてきたのじゃ。

巻いて話を進めても良いかもしれぬ……。


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