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1.2-21 町での出来事12

「なぁ、嬢ちゃんたち。……お前たち、なに(もん)だ?」


「な、何者とは……随分な言い草ね?そりゃもう、ただの町娘よ?」


「う、うん!」


 武具屋の中にいた冒険者たちが出ていった後、何気ない様子で店の中を物色していたワルツたち。そんな2人の様子があまりに怪しかったためか、店の主は彼女たちに誰何(すいか)した。だが、それに対してワルツたちは、”町娘”くらいしか答えられる言葉が見つからなかったようである。まさか、現代世界から来た『超兵器』と『難民』です、などとは間違っても言えないのだから……。

 すると、その返答を聞いた武具屋の店主は、怪訝そうな表情を浮かべながら、こう呟く。


「ただの町娘が、殺気だけで、歴戦の勇士たちを追い払えるはずが無いだろ……」


「そう言われても、別に何かやってるわけじゃないから、本当に町娘以外の何者でもないんだけど……ねぇ?ルシア?」


「えっと……町娘じゃなくて、村娘?」


「あ、うん……。ここの町の住人じゃないから、正確には村娘ね……」


「余計にわけが分からん……」


 ワルツたちのやり取りを聞いても、やはり、事情を理解できなかったのか、鼻から大きな溜息を吐いて、憤ったような表情を見せる店主。

 そんな彼への返答を迷ったワルツは、誤魔化すようにして話題を変えて、こんな質問を口にした。


「貴方、ここの店主よね?なら、ちょうど迷ってたところなんだけど……この娘に合うようなローブ、ここで扱ってないかしら?」


 見る限り、どれも大きく、そして高いローブの数々に目を向けながら、そう口にするワルツ。その副音声は、子供向けのリーズナブルな装備は扱っていないか、と問いかけていたようである。

 対して店主は、商品のラインナップ以前に何か悩ましいことがあったらしく、ルシアのことをチラッと一瞥してから、厳しそうな表情を浮かべてこう言った。


「お前さんならまだ分かるが……まさか、こんな小さい嬢ちゃんに、冒険者の真似事でもさせるつもりか?」


「いや、むしろ、もう冒険者やってるようなものだから、防具が無いっていうのは死活問題なのよ。それにこの辺、すごく治安悪いし……。特に、あの、勇者とかいう面倒なやつが襲い掛かってきた時は、どうやって事を大きくしないようにしてその場を後にするか、すっごく悩んだんだから。あの時、ルシアに防具があったら、もうすこし違う結末が迎えられてたと思うのよね……」


 ワルツのその言葉を聞いた途端――


「…………」ぴたっ


――混乱と混乱、それに混乱のせいで、大混乱してしまった様子の店主。彼の頭の中は、まさに”混乱”としか言いようのない状況に陥っていたようである。

 これがもしも、本当に、単なる町娘が口した言葉だったなら、(たち)の悪い冗談として片付けられたはずだった。しかし、目の前の2人は、その圧倒的な気配だけで、冒険者たちを退けてしまったほどの人物たちだったのである。言い換えるなら、その身体に纏う気配が、ワルツの言葉を、正しいものだと証明していたのだ。それに気づいた店主が、言葉を失ってしまったとしても、無理のないことだと言えるだろう。


「…………」


「えっと……息してます?店主さん……?」


 そう言って、店主の顔の前で手を振るワルツ。目を大きく開けたまま固まっていた店主の表情が、段々と土気色になってきた様子を見て、彼女は心配になってきたようである。なにしろ、ワルツもルシアも、店主のことを傷つけようとは、微塵も思っていなかったのだから。


 それから間もなくして、立ったまま固まっていた店主は、滞っていた肺の中身を吐き出して深呼吸をすると……。彼は、どこか震えるような声色で、ワルツに対し、こう問いかけた。


「勇者の坊主は……無事なんだな?」


「え?いや、別に傷付けたわけじゃなくて、彼ら以外のものを吹き飛ばしただけだから、あの一撃で死んだ、ってことはないと思いますよ?」


「一応、聞いておくが……実は、嬢ちゃんたち、魔族とか魔王だったりしないよな?」


「んー、個人的には違うと思っているんですけど……どうなの?ルシア?」


「え?お姉ちゃんはお姉ちゃんだよ?」


「……魔族でも魔王でもなくて、”お姉ちゃん”らしいです」


「…………そうか」


 自身の言葉に対し、真っ向から返答しないワルツの言葉を聞いて、何を思ったのかは不明だが……。店主は、それ以上、勇者たちのことや、ワルツたちの正体については問いかけないことにしたようである。

 それから彼は、再びルシアのことを一瞥すると、ワルツに対して、こう問いかけた。


「……予算はどれくらいだ?」


「そうですね……5万くらい?」


「お前なぁ……そんなんじゃ、布切れくらいしか買えないぞ?」


「「えっ……」」


「……その様子じゃ、エンチャントとか、知らねぇんだろ?そんなんで良く、勇者の坊主と戦ったな……」


「「……エンチャント?」」


 店主の言葉を聞いて、同時に首を傾げるワルツとルシア。この世界の住人ではないワルツはともかくとして、ルシアもエンチャントという言葉は、聞いたことが無かったようである。


「エンチャントも知らずに、武具を買い求めに来る冒険者がいるたぁ、世も末かねぇ……。いや、だからそこ、勇者の坊主は負けちまったのかもしれねぇな……」


 そう言って、大きなため息を吐く店主。

 それから彼の武具についての講義が始まった。



終わらぬ……。

終わらなすぎて、逆に笑えてきたのじゃ。

おかしいのう……どうしてこんなにも駄文が長くなってしまうのじゃろうか……。

これはもう、ダメかもしれぬ……。


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