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1.2-10 町での出来事1

「……狭っ!」


 町に入ってすぐのところでワルツが口にしたファーストインプレッション。それは、現代世界の日本とは比べ物にならないほど、家と家の隙間が密集したサウスフォートレスの街の姿を見ての感想だった。


「最初に外壁が造られて、その後で町が発展したから、見た通りぎゅうぎゅう詰めになってしまったんだ。でも、慣れればなんてことはないぞ?迷路みたいで面白い町なんだ。いや、森みたい、って言ったほうが良いかな?」


 町並みの姿に、あまりポジティブな印象を描いているようには見えなかった様子のワルツに対し、どこか自慢げに話す狩人。

 そんな彼女の話を聞いて、ルシアが、こんな質問を口にする。


「もしかして、狩人さんって……この町に住んでたことがあるの?」


「……どうしてだ?」


「なんか、そんな感じの口調かなぁ、って」


「そうか……。そんなつもりで話したわけではなかったんだが……たしかに私は、以前、この町に住んでたことがある。まぁ、あんまりいい思い出は無かったけどな。でも今は、アルクの村の狩人さ?」


「「ふーん……」」


 2人揃って、狩人の言葉に、耳を傾けていたワルツとルシア。

 一方、狩人は、あまり追求されたくなかったのか、彼女たちに対して、これからの予定を口にした。


「さてと。それじゃぁ、とりあえず、宿を探すか!」


 それを聞いて――


「「えっ……」」


――と、驚いたような表情を見せるワルツとルシア。

 すると、彼女たちのその反応の理由を察した狩人は、2人に対して、事情を説明し始めた。


「2人とも、まだ早いんじゃないか、って思ってたりするか?」


「う、うん……」

「えぇ。大した荷物があるわけではないですし、少し町の中を見回ってからでも……って、もしかして、荷物を持ってる私のことを心配してます?」


「それもあるが……旅先では、まず行動の拠点を確保するっていうのが鉄則だ。それに、旅人たちは、みんな同じことを考えてるから、かなり早めに宿がなくなる傾向があるんだよ。町に付いたのに、野宿したくないだろ?」


「「あ、はい……」」


「じゃぁ、早速、行ってみるか。ちょうどおすすめの宿屋があるんだよ。飯がうまいって評判の宿が、な?」


 そう言って、町の中を歩き始める狩人。ワルツたちもその後ろを追って、狩人が紹介するという宿へと向かうことになった。

 その道中、雑踏とした町の中に目を向けていたワルツが、何かに気づいたように、狩人とルシアに対し問いかける。


「えっと……すごく言いにくいんですけど……2人とも、もう歩けないくらい疲れてたりします?さっきの話……私は大丈夫ですけど、実は2人とも、すっごく疲れちゃってるんじゃないか、って思いまして……」


「いや、私は別に問題ない。言ったろ?歩くのが大好きだ、って」


「私も問題ないよ?疲れたり靴ずれができちゃったりしたら、回復魔法使ってるから」


「「…………」」


 メンバーの中に1人、限界を超えている――いや、ズルをしている者がいることに気づいて、微妙そうな表情を浮かべながら顔を向け合うワルツと狩人。ただ、その直後、2人が小さく笑い出してしまったのは、ルシアの行動に彼女らしさを感じてしまったためか。


「……うん?」


「ううん。なんでもないわよ?」


「あぁ。なんでもないな」


「……なんか納得いかないけど……まぁいっか……」


 そう言って眉を顰めながら、先を歩くワルツたちの後ろを追いかけるルシア。

 こうして彼女たちは、一路、狩人おすすめの宿屋へと向かって、足を進めることになったのであった。



「ふぅ……良かったわね?あと、数日早かったら、宿を取れなかったって話じゃない?」


 そんな言葉を口にしながらベッドに腰掛けるワルツの言葉通り、3人はサウスフォートレスの中に、宿を無事に確保できたようである。ちなみに数日前に何があったのかというと、こんな狩人の言葉を聞けば、大体の予想がつくのではないだろうか。


「や、やっぱりあれ……勇者パーティーだったんじゃ……」


 つまり、勇者たちがこの町に来て、住民の熱烈な歓迎を受けていたのである。

 ただ、もともとこの町に住んでいる住人たちが歓迎するだけなら、宿がいっぱいになってしまう事など、普通はあり得ないことだった。ではいったい何故、宿がいっぱいになっていたのか、と言うと――


「あんな乱暴な人たちなのに、仲間になりたいって思う人たちがたくさんいるんだね?」


――とルシアが話すように、周辺地域から勇者たちの来訪を聞きつけた者たちが一斉に集まって、勇者パーティーに入りたいと志願したらしいのだ。”冒険者”という職業に就くものにとって、勇者パーティーとはまさに花形。夢のような存在なのだろう。


「ほら、ルシア?私たちが会ったのは、勇者じゃないでしょ?勇者を語る不届き者だったじゃない?」チラッ


「あ……うん。そうだったね……」チラッ


「……本当はどっちなんだ?」


「「…………」」サッ


 なんとも表現し難い表情を浮かべながら、ワルツたちに質問する狩人。そんな彼女に対して、ワルツもルシアも視線を合わせて返答を口にできなかったのは、何か後ろめたいことでもあったためか。


「……まぁいいか。何かすごく複雑な事情があった、って考えておくよ。で、2人には申し訳ないんだが、これから私はこの町で用事があるから、ちょっと出かけてくる。夜には戻るが、遅いようだったら先に眠っててくれてて構わない。食事も多分……難しいだろうな」


「そうですか……。ちなみにどこへ?」


「…………ふっ、秘密だ」にっこり


 そう言って、清々しい笑みを浮かべる狩人。どうやら彼女にも、言えないことがあるらしい。

 一方、それを聞いたワルツたちは、深く追求するようなことはしなかったようである。なぜ、彼女たちは追求しなかったのか。あえて、言うまでもないだろう。



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