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1.2-11 町での出来事2

 ワルツたちがサウスフォートレスに滞在する期間は、到着した当日を含めて4日間。1日目と4日目は村へと帰るための準備や移動などで、半分以上が潰れてしまうので、町で行動できるのは実質は2日間ちょっと、ということになるだろうか。

 その内の1日目。この日、ワルツたちは、夕食を外で摂ることにしたようである。狩人曰く、宿の食事は美味しい、とは言うものの、ワルツもルシアも、街の観光をしながら食事を摂りたかったらしく、宿で食事を取るのは、2日目以降でも良い、ということになったようだ。


「おう、オヤジ!今日はウチのメンバーの食事、作んなくていいからな?」


「んなっ?!……す、すまねぇ、嬢ちゃんたち……。確か、ワルツちゃんとルシアちゃんって言ったか?ウチの姫さんが、また、無茶なトレーニングを押し付けてきたんだろ?後でお腹減ったら、好きなもん食わせてやっから、遠慮なく言ってくれよ?」


「お前なぁ……。私はお前ん家の姫じゃないぞ?そういうのは、外で飼ってる犬にでも言ってやれよ。あと、今日、ワルツたちは、外で夕食を食べることにしたらしいぞ?お前ん所の食事は、不味くて食えん、って私が教えておいたからな!」


「テメッ、このっ……!」


「あー、あのー、喧嘩は良くないと思います!狩人さん、むちゃくちゃ褒めてましたよ?この宿の食事……」あたふた

「うん、うん!」コクコク


「いや良いんだよ、ワルツ。これはいつもの挨拶みたいなものさ?それに、少しくらいバカにしておいたほうが、後の食事がうまくなるからな!」


「オメェの食事だけ、手抜きにしてやらぁ!その分、ワルツちゃんとルシアちゃんの食事に華を添えるから、楽しみにしててくれ?」


 そう言って目尻にシワを寄せながら、カウンターの奥へと消えていく宿屋の店主。その際、彼の背中がどこか嬉しそうだったのは、何も、狩人にバカにされたことが嬉しかったから、というわけでは無いのだろう。

 その姿を見送ってから、狩人が再び話し始めた。


「さて……。それじゃぁ、私は行ってくる。ワルツたちも気を付けてな?夜になったら治安が悪くなる場所もあるから……襲われたからって、町を滅ぼすようなことはしないでくれよ?」


「はい!」

「えっ……そこ頷くところじゃないわよね?ルシア……」


「じゃぁなー」


 そう言って――


カランコロン……


――と宿を後にする狩人。

 結果、その場に残されたワルツたちは、これからの予定について相談を始めた。


「じゃぁ、どこ行く?」


「えっと……お洋服屋さん!」


「んー、ちょっと今からじゃ、遅いんじゃないかしら?服屋の場所を探しながら歩いてたら、多分、閉店間際になっちゃうかもしれないわよ?残念かもしれないけど、服屋は明日にしましょ?」


「そっかぁ……。じゃぁねぇ……お腹減った!」


「……あら、奇遇ね?」


 そう言ってルシアに対し、笑みを向けるワルツ。食事の時間にはまだ早かったが、2人とも早めに夕食を摂ることにしたようだ。



「ここだけ少し広くなってるけど……でもやっぱり狭いわね……」


「そっかなぁ?」


 サウスフォートレスの町の正門にほど近い位置にあった広場。そこの中央には噴水が置かれていて、透き通った青い水が、絶えず流れ出ていたようである。たまにその水を汲みに来る者がいるところを見ると、噴水というよりも、大きな湧き水、と言ったほうが良いのかもしれない。


「さて、何食べる?」


「んとねぇー……」


 ルシアはそう口にすると、噴水を取り囲むようにして所狭しと構えられていた屋台へと視線を向けた。そこでは多種多様な食べ物が扱われていて、中には現代日本でも馴染みのある食べ物も並んでいたようだ。


「(うわ、おにぎりとか、唐揚げとか、明らかに日本食じゃん……。どんな食文化をしてる世界なのかしらね?ここ……)」


 そこに並んでいた日本食に気づいて、首を傾げるワルツ。

 彼女が、それからも、興味深げに周囲を見渡していると――


クイックイッ……


――と、服の裾を引っ張る感覚が伝わってきたようだ。どうやらルシアが食べるものを決めたらしい。

 それに気づいて、ワルツがその内容を問いかける。


「食べるもの決めた?ルシア」


「うん……あれが美味しそうかなぁ、って」


 そう言ってルシアが指を差した先には――


「……うん。何となく選ぶような気がしてたわ」


――とワルツが納得げな反応を見せてしまうような食べ物が扱われていたようである。


「稲荷寿司ね……」


「いなりずし?」


「もしかして、食べたこと無い?」


「うん……。今日始めてみた?」


「そう……。なら、私が説明するよりも、食べたほうが早いかもね。でも、あの味……好き嫌いがあると思うわよ?」


「そなの?んー……でも美味しそうな匂いがするし……とりあえず食べてみよっかなぁー」


 そう言いながら、早速、稲荷寿司を扱っていた屋台へと向かうルシア。ワルツもその後ろを追いかけて、彼女も同じものを食べることにしたようだ。

 ちなみに。ワルツは、(のち)に、この時の出来事を何度も思い出すことになるとか、ならないとか。なにしろこれが、ルシアと稲荷寿司が出会った、その記念すべき(?)最初の日だったのだから……。


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