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-10.4-23 時間23

 そして、自分の声がエンデルス少年の耳に入らない程度に距離を取ったところで——


「エンデルス、まだ聞こえてる?」


——ワルツはクマの人形に問いかけた。その相手は、未来の世界にいるエンデルシア国王。ただし、用事があったのは彼というわけではなかったようだ。

 そんなワルツの問いかけに対し、未来からすぐに返答が戻ってくる。


『うむ。聞こえておる。今からウェスペルに向かおうと思っておったところだ』


「そう……それは邪魔しちゃったかしら?」


『いや、大丈夫だ。それで何だ?まさか、小さい頃の俺が、ワルツ女史たちに迷惑を掛けておるのか?』


「まぁ、迷惑してるってわけじゃないけど……って言うか、貴方絶対、迷惑を掛けてるだなんて、これっぽっちも思ってないでしょ?(人の目を気にするような隣国の王様が、いつまでも他人の国に居座るとは思えないんだけど?)」


『いやいや、もちろん申し訳ないと思っておる。……いま思えば、若かりし頃は、俺も"痛い"ことをよくやっておったからな』


「貴方、たまにお爺ちゃんみたいなこと言うわよね?」


『お、お爺……』


「まぁ、それはいいんだけど……近くにポラリスにいる?彼女に聞きたいことがあるのよ」


 というワルツの言葉通り、卵から孵ったトカゲの正体は、小さな頃の地竜ポラリスである可能性が非常に高かった。いや、むしろ、間違いなくポラリスであると断言しても良いだろう。何しろエンデルシア国王自身が、彼女の誕生を覚えていたのだから……。


『ポラリス?……あぁ、あやつが生まれたのだな?あれはどこだったか……焼けた城の側にあった物置小屋のような場所で、火災から助け出した卵を——』


「ちょっと急いでるから、早く替わってもらえると助かるんだけど?貴方もウェスペルに行かなきゃならないでしょ?」


 と、御年1300歳以上になる高齢者(?)の話が、このままだと長くなると察したのか、彼のことをまくし立てるワルツ。

 その結果、エンデルシア国王は、どこか喋り足りなさそうな雰囲気を見せながら、今日も彼に付き添っていたらしいポラリスへと声を掛けた。


 それから間もなくして、ポラリス本人が、エンデルシア国王の代わりに話し始める。その際、彼女のしゃべり方がどこかぎこちなかったのは、遠隔地にいる人物に対して話しかけるという行為に慣れていなかったためか。


『……ごほん。あーあーあー……ポ、ポラリスである』


「ワルツよ?なんか……かなり緊張してる感じね?」


『う、うむ……。どうしてワルツ殿と話が出来るのかは分からぬのであるが……気を抜くと、なんとなく、この機械に言霊を吸い取られてしまいそうである……』


「なんか……ポラリスはポラリスでお婆ちゃんみたいなことを言うのね?」


『む?』


「ううん、なんでもないわ……。それでちょっと聞きたいことがあるんだけど……」


 そう前置きをしてから……。ワルツはポラリスに対し本題を切り出した。


「地竜の子どもって、普通、何食べるの?まさか母乳とか言わないわよね?」


『某らの子どもであるか?……某とエンデルスとの間に出来た子どもの場合は、どうなるか分からぬが——』


 と、ポラリスが軽く爆弾発言を口にした直後——


『ちょっ……ちょっと待て!ポラリス!貴公、何を言っている!?』


——エンデルシア国王が慌てた様子で声を上げた。クマの人形越しでは彼の表情を伺い知ることは出来なかったものの、ほぼ間違いなく彼は今、血相を変えているに違いない。


「すごいわね……エンデルス……」


『ま、待て、ワルツ女史!違う……違うのだ……』


 必死な様子でポラリスとの関係を否定するエンデルシア国王。その姿がどう見えたのかは定かで無いが、ポラリスはどこか嬉しそうな様子で、自身の言葉を補足した。


『子を作るのはまだ先の話である。どうも、エンデルスが乗り気でないようなのでな……。無理強いするつもりはないのである。なに、すでに千年以上待っておるのである。数百年程度なら、まだなんとか待てるのである」


「ふーん(気が遠くなるような話ね……)。ま、頑張ってね?エンデルス」


『俺はもうダメかも知れん……』


「それはとりあえず置いておくとして……で、普通の地竜の子どもって、何を食べるの?」


『ふむ……それに答えるのは簡単である。目の前にあって食べれそうなものであれば、なんでも食べるのである。それゆえ、食べてはならぬモノも口に入れることがあるので、お腹を壊さないよう注意して欲しいのである』


「おっけー。ちなみにそれってさ……人も食べるってこと?」


『当然なのである』


「ふ、ふーん……」


 と、なんとも微妙そうな表情を浮かべながらも、納得したような反応を見せるワルツ。そんな彼女の脳裏では、何か心配事のようなものが、浮かび上がってきていたようだが……。そんなタイミングで——


うわぁぁぁぁぁ!!


——という叫び声が馬小屋の方から聞こえてきても、彼女がそれに反応することは無かったようだ。むしろこの場合、反応しないようにしていた、と表現すべきかも知れないが……。


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