表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1422/3387

-10.4-21 時間21

 1300年の時間と、数百メートルの岩盤を隔てて、ワルツとアトラスはクマの人形越しに会話を続ける。


「……とりあえず、アイテムボックスだけ送るわ」


『あぁ。目的の半分はそれだからな』


「もう半分の方は……一応達成、ってことで良いのかしら?」


『過去で行ったことが未来に反映されるかどうかを確認するって点では、達成してるって言えるんじゃないか?』


「なら良いんだけど(それ以上のことを確認するのは、ちょっと冒険が過ぎるわね……)」


 そう言って溜息を吐くワルツの言葉には、様々な意味が込められていた。中でも一番大きなものは、未来と過去が繋がっていることに対する安堵だろう。もしもワルツたちがいる過去と、アトラスたちがいる未来とが繋がっていなかったとすれば、元の時代(せかい)に戻るなど()()不可能。下手をすれば、ワルツが元いた現代世界に戻る方法を探すよりも、遙かに大変だと言えたのだから。


「じゃぁ、早速、アイテムボックスを埋めようと思うんだけど……そっちとこっちで観測に差異があると何が起こるか分からないから、パッと見で観測できない壁の中に埋めるっていうのはどうかしら?どこに埋めるかだけを最初に決めておけば、別に壁の中でも問題ないでしょ?」


『あぁ、そうだな。問題は深さか』


「それよね……。深すぎたら掘り起こすのが大変だし、浅すぎたら届かないし……。ちなみに、今いるところの地下の深度分かる?」


『多分、300mくらいじゃないか?』


「適当ね……。まぁ良いわ。じゃぁ、とりあえず、300m掘るから、その深さで良いか確認してもらえるかしら?ダメだったら、また別に穴を掘るわ。だけど、アイテムボックスはまだ埋めないわよ?」


『あいよ。位置は……そうだな……最初に開けた穴から、西に250歩ってところで頼む』


「おっけー。……だってさ?ルシア」


「……誰を基準に250歩?」


「さっきと同じで、ルシア基準で良いんじゃない?アトラスとルシア、あまり体格変わんないと思うし……」


「そぉ?分かった」ぱたぱた


「……なんか嬉しそうね?」


「んー、気のせいじゃないかなぁ?」


 そして2人揃って最初の位置から250歩ほど西に歩いて、そこに穴を開ける姉妹。ルシアが土魔法を使って地面を削って、次にワルツが深さを計測して——と何度か繰り返すことで、ちょうど穴の深さが300mになるよう調整したようだ。


 その後で、ワルツはアトラスへと告げる。


「掘ったわよ?」


 するとそれを聞いたアトラスとエンデルシア国王が、未来の世界で、事前に話し合った位置の壁を壊し始めるのだが……。

 しばらく経って、アトラスから戻ってきた言葉は、過去にいるワルツたちにとって、かなり意外なものだったようだ。


『なぁ、姉貴……』


「ん?何?穴見つからなかった?もうちょっと深くなきゃ——」


『いや……見つかったには見つかったんだが……アイテムボックスも一緒に埋めたのか?』


「「……えっ?」」


『その反応、まだ埋めてない感じか……』


「何それ……アイテムボックスも見つかったの?」


『あぁ、その通りなんだ。食料は……無事だな。1300年間腐らないとか、やっぱりとんでもない魔道具だ……って、なんだこれ?空のコンテナ?なんでこんなもん……』


「あー、確かにそれ、私たちが埋める予定のアイテムボックスだわ……。まぁ、空のコンテナについては色々あったのよ。気にしないで?だけど……どういうことなのかしら?まだこっちで埋めてないんだけど……」


 と言いながら、手の上にあった指輪型の魔道具"アイテムボックス"を転がすワルツ。困惑気味の彼女だったが、その時点で原因は明らかだったようだ。

 それについてアトラスが口を開く。


『つまりこれからここに埋めるんだろ?』


「そりゃそうなんでしょうけど、先に結果が確定して、原因が後になるとか……不気味じゃない?因果律を無視してるって言うか……」


『時間軸上で見れば、成立してると思うけどな。まぁ、そういうモノなんだろ。あとはこっちじゃどうにもならないから、任せたぞ?姉貴』


「えぇ……。もしもここで埋めなかったら、未来は変わるのかしらね……」


 そう言って重力制御システムを使い、手にしていた指輪をゆっくりと地面の穴の底へと落としていくワルツ。

 その際、彼女は、ふとこんなことを考える。


「(結局、未来と今とで整合性を取らないと、何が起こるか分からない、ってことよね……。でも、空気の分子の流れとか、靴の裏に付いた微生物の移動とか、目に見えないところでも未来との不整合は起こってるはずなんだけど……それでも未来が変わってないっていうのは、やっぱり私たちがここで何かをしたとしても、意味が無いってことの証拠になるんじゃないかしら?)」


 ここでアイテムボックスを埋めなくても、近い未来、何かしらの事情を経て、結局同じ場所に埋めることになるのではないか……。そんなことを考えながら、アイテムボックスを落とした穴を見つめるワルツ。しかし、彼女には、穴蔵に落ちていくアイテムボックスをどうこうする度胸は無く……。地面の底に落ちていくアイテムボックスを、ただ静かに見送るのであった。


エイリアンハンド的な現象が起こる……ことは無いと思うのじゃ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ