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-10.4-19 時間19

 ワルツたちがエネルギアを南に向かって移動させていたそんな頃。


 リアの水魔法のおかげで完全に鎮火していたサウスフォートレス(予定地)にいた人々は、心の底から憔悴しきっていた。魔王が作り出した"精霊"に誘拐されたところを助け出されて、命の危険が過ぎ去ったと思っていたら、今度はそれ以上の問題が降りかかってきたのである。具体的には魔神という名の……。

 その結果、人々は——


「俺たち、これからどうすれば良いんだ……」

「下手をすれば一族郎党皆殺しになるんじゃ……」

「に、逃げ出すなんて馬鹿な真似は辞めろよ?残された連中や家族がどうなることか……」


——と、深刻そうな表情を浮かべながら、そんなやり取りを交わしていた。


 なおこれは余談だが、彼らは大きな勘違いをしている。というのも、そもそもからして、彼らが捕まっていたのは、魔王の城などではなかったのだ。……人に化けたドラゴン————ドラゴニュートたちの居城。魔王ではなかったので、勇者たちの討伐対象にはなっておらず……。アセルダイン城から山脈を2つ超えただけの、いわば近所のような場所に城が建てられていたというのに、今まで手つかずの状態で放置されていたのだ。捕らえた人々を食料にしていたという意味では、魔王城よりも遙かに恐ろしい場所ではあったものの、名実ともにドラゴンの巣とも言うべき場所に勇者を送り込むと、他の人々と同じようにして食べられてしまう可能性が高かったので、あえて討伐の対象から外されていたようである。


 しかし、現状、人々にとっては、魔王とドラゴンの違いなど些細なことでしかなかった。何しろ、自分たちを牢屋から救い出して、そして城ごと遠くへと転移させたのが魔神とその仲間たちなのである。今後自分たちはどうなってしまうのか……。人々はこの時点で一つの結論に辿り着いていた。即ち——生け贄になる、と……。なお、こちらは正真正銘の誤解である。


「ここで俺たちが踏ん張れば……皆が救われるんだ……」

「生け贄、か……。最後に妻と子の顔が見たかった……」

「俺たちは1人じゃない。……一緒に逝こう」


「あの……皆さん?とても大きな誤解をされていませんか?」


「「「?!」」」びくぅ


 コソコソとではなく、普通に会話をしていたために、人々の会話はメイド勇者の耳にも届いていたようである。

 結果、彼は、人々の誤解を解くべく、ワルツについての説明を始めた。


「まず、あなた方から見て、私たちはどのように見えますか?ここで見聞きしたことはすべて忘れますので、正直に仰って下さい」


「「「ま、魔神様御一行……?」」」


「なるほど……。確かに、ある意味、間違いではありませんが、あの方はあなた方が思っているような恐ろしい方ではありませんよ?」


「それは……ほ、本当か?」

「信じても……良いのか?」

「嘘じゃ……ないよな?」


「はい。ただ手を振るうだけで山を削り、森を穿ち、海を切り裂く——」


「「「あぁ……もうダメだ……」」」


「——ことも簡単にできるので、"魔神様"と呼ばれることもありますが、無意味にそのようなことをされる方ではありません。むしろ、私たちのミッドエデンでは、国を作った女神様と崇め…………られています」


 途中、言いよどむことがあったものの、どうにか言い切るメイド勇者。彼には、公の場に姿を見せないワルツ自身が市民たちから崇められている様子を見たことが無かったので、"崇められている"と言い切って良いか悩んだようだが……。現在のミッドエデン共和国は、元を質せばワルツが作り上げたようなものなので、話の流れに任せて、そのまま言い切ることにしたようである。


 すると、人々から声が上がった。


「女神様って……まさか、アセルダインの!?」

「そうか……そうだったのか!」

「俺たちはてっきり、魔神っていうから……」


 どうやら皆、人違いならぬ"女神違い"をし始めたらしい。


 その反応を見たメイド勇者が、人々の勘違いを解こうとした——そんな時だった。


ゴゴゴゴゴ……


「「「?!」」」


 北の空から、何やら大きな物体が近づいてくることに皆が気付く。月の光に反射して見える白い巨体——空中戦艦エネルギアが、サウスフォートレス(予定地)までやってきたのだ。

 その直後、先触れのように、1人の狐娘が飛んでくる。


「迎えに来たよ?勇者お姉ちゃん!」


 そんなルシアに対し、勇者は返答しようとするのだが……。その前に捕らわれていた人々が、一斉に——


ズサァァァァッ!!


——とルシアの前に跪いて……。こんなことを口にした。


「女神様!」

「助けていただきありがとうございました!」

「このご恩、一族共々、絶対に忘れません!」


「え゛っ……」


 そして空中で固まるルシア。

 どうやら人々が女神だと思っていたのはワルツ、ではなく……。莫大な魔力を使って、空を飛んだり転移させたりと、強力な魔法を行使していたルシアだったようである。


あぁ、忌々しいのう……。


ブゥン……

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