-10.4-18 時間18
「……さっきのドワーフたち、実は本物のドワーフじゃなくて、モグラの獣人なんじゃないかしら?」
「なんで?」
「ルシアが作った山をいきなり掘り始めたから。掘っちゃダメだって言ったのに……」
「その辺の山を切り取って転移させたのが悪かったかなぁ?みんな、貴重な金属が埋まってる、って目の色を変えて掘ってたよね?」
「えぇ……。ミスリルなんてその辺に腐るほど埋まってるのに……」
予定通り(?)ドワーフの集落を見つけて、そこに目印となる山を作った姉妹。しかし、ドワーフたちは何を思ったのか、一心不乱に山を削り始めてしまった。その結果ワルツたちは、その山の中にアイテムボックスを埋めるのを諦め、次なる場所を探して、ドワーフの村の上空を飛び回っていたようである。
「まぁ、気を取り直して埋める場所を探しましょ?」
「うん。でも……もうすぐ夜だよ?」
そう口にするルシアの視線の先にあった2つの太陽は、すでに1つが完全に沈んでおり、もう1つも間もなく地平線の向こう側に沈もうとしている所だった。時間的にはあと1時間程度で真っ暗になる、といったところだろうか。
「とにかく急ぎましょ。ちなみにルシア?何か良い案は無い?ウェスペルの町から半径100km以内で、誰にも掘り起こされる心配がなくて、口頭で伝えてもどこに埋めたのかハッキリと分かる場所なんだけど……」
「それ、2人で考えても思いつかなかったよね……。ところでお姉ちゃん?」
「うん?何?」
「それさぁ、未来のエンデルス君に掘り起こすのを頼んだら、別に、ウェスペルの町の近くに埋めなくてもいいんじゃないかなぁ?」
「……それも良いかな、って思ったんだけど、あいつ1300年後まで覚えててくれるかしら?」
「やっぱり、難しいかなぁ……」
飛びながらそんなやり取りをして、眉を顰める姉妹。未来のエンデルシア国王が、本人曰く、物忘れが激しくて困っている、と言っていたので、彼の記憶力はあまり当てにできなかった。
それでも、エンデルシア国王に直接伝えれば思い出してもらえるのではないか、ということになって……。姉妹はとりあえず、エネルギアに帰還して、エンデルシア国王に連絡を取ることにしたようだ。
◇
「「ただいまー」」
「ワルツ!ルシア!2人とも、一体どこに行ってたんだ?!心配したんだぞ?!お昼ご飯までに戻るって言ってたじゃないか!」ずさっ!ぎゅっ!
ワルツたちがエネルギアに帰還した途端、猛烈な勢いで走り寄ってくる狩人。彼女はそのまま勢いよく、ワルツとルシアに抱きついた。
「すみません。ちょっと色々ありまして、サウスフォートレスに行ってました」
「もう、心配させ……えっ?サウスフォートレス?」
「はい。なんか、"精霊"とかいう自立移動型の転移魔法生物(?)に襲われて……紆余曲折あって気付いたらサウスフォートレスに……」
「その紆余曲折っていうのが、すごく気になるんだが……」
「説明を始めるとすごく時間が掛かるので、時間のあるときに説明します。実はまだ仕事が終わってないんですよ」
「そうか……。勇者たちがいないのは、それと関係があるのか?」
「えぇ。彼ら、まだサウスフォートレスにいまして……。なので後ほど、サウスフォートレスに移動しようと思います」
「お、おう。サウスフォートレスに行くのか…………ふふっ。楽しみだ!」
そう言って笑みを浮かべる狩人。なお、その後で彼女が愛用のダガーを念入りに研ぎ始めた理由については、いつものことなので省略する。
そんなやり取りを、他の仲間たちとも何回か繰り返して……。艦橋へと戻ってきたワルツは、クマの人形に対し話しかけた。
「アトラス?いる?」
すると、すぐに返答が戻ってくる。
『あぁ、いるぞ?何か進展はあったか?』
「んー、これから進展させるつもり。でさ、エンデルス……じゃなくて、エンデルシア国王いる?」
その問いかけに——
『ぜひ"エンデルス"と呼び捨てで呼んで欲しい。ワルツ女史』
——エンデルシア国王が直接返答した。
「まぁ、どうでも良いんだけど……エンデルス。貴方、私たちがアイテムボックスをどこに埋めたのか覚えてるかしら?(これから埋めるんだけど……)」
『ん?そんなことはあっただろうか?』
「ふーん?覚えてないの?」
『……すまん。全然思い出せん……』
「そう……(やっぱり、ある程度、過去の行動と未来の行動はリンクしてるのかしら?埋めた時点で未来が確定するとか……。それとも単にエンデルスの健忘症が正常の範囲を超えてるだけ?……うん、きっとそっちね)」
そしてワルツは、面倒な思考を断ち切ると、未来のエンデルス少年もといエンデルシア国王に対し、アイテムボックスを埋める場所について話し始めた。
「これからボレアスへの支援物資を詰めたアイテムボックスを埋めるから、それを転移魔法で取りに行って、シルビアたちの所に届けて欲しいの。あ、どうしてアイテムボックスをウェスペルの町の近くに埋めなかったのかは聞かないでよね?単に埋めるための適切な場所が見つからなかっただけだから」
『ふむ、分かった。しかし、一国の王をこき使うとは、ワルツ女史も人使いが荒い……』
「大丈夫、大丈夫。貴方、国王って言っても、たぶんもう国に椅子残って無いはずだから」
『……では国に帰らなくても良いのだな?』
「…………で、アイテムボックスを埋める場所なんだけど、貴方のお城の地下で良いわよね?」
『ちょっ……』
「まぁ、あそこ、女神がいるから、絶対に行かないけど」
そう口にした後で、アイテムボックスを埋める場所がどこなのかを説明したワルツ。その結果、エンデルシア国王だけで行くのではなく、アトラスも同行する流れになって……。そこでアイテムボックスの受け渡しの他に、とある実験をすることになったようだ。
某IMEのマンスリーレポートによると、妾の文章は、句読点が平均して3文字おきに入っておるようなのじゃ。
……いや、無いじゃろ。
確かに、多いのは否定できぬがの?




