-10.4-06 時間6
「……ここ、どこ?」
「さぁ?」
ワルツたち6人が強制的に転移させられて運ばれてのは、外の光が届かない暗い檻の中。とは言っても、真っ暗だったわけではなく、壁に松明の魔道具が掲げられていたので、部屋の状況を確認する程度には明るかったようだ。
そんな部屋の中には先客の姿はおらず、何か物があるというわけでもなかった。汚物や骨などの残骸もなかったところを見ると——
「何のための場所かは分からないけど……とりあえず、誰かが管理してそうね?」
——というワルツの言葉通り、"精霊"によって捕らえた人や魔物は、定期的に部屋の中からどこかへと移動させられるようである。
そんな中、小さい方の勇者が声を上げた。
「まさか、魔族の罠?!」
「また、魔族魔族って……あんな誰も来ないような森の中に、誰が罠なんて仕掛けるのよ?っていうか、あれ"精霊"って言ったっけ?精霊なのか罠なのか、どっちかにしなさいよ?賢者」
「そう言われてもな……」
そう言って頭を掻いてから……。賢者は"精霊"について知っていることを説明し始めた。
「精霊っていうのは人造生命体のようなものなんだ。どこか一カ所に止まるわけじゃ無い」
「人造生命体……?ホムンクルスみたいな?」
「あぁ。人の姿はしていないが、誰かが作り出した魔物と考えてもらえれば良い。やつらは移動しながら主人の指示をこなしていくんだが……」
「それが、今回は、私たちを捕まえろって指示だった、ってこと?」
「私たちのことだけを対象としていたのかは分からない。むしろ単に運が悪かっただけと考えるが自然だろう。しかし……実物をこの目で見ることになるとはな……」
そう言いながら、感慨深げな反応を見せる賢者。どうやら彼は、精霊という存在に興味があって、過去に調べた経験があったようである。まぁ、ワルツたちとっては関係の無いことだったようだが。
「で、結局、ここどこなのかしら?」
ワルツがそう口にすると、檻の外から声が聞こえてくる。どうやら別の檻の中に、先客がいたようだ。
「災難だったな?ここは地獄の一歩手前。魔王の住む城の地下牢だ」
「魔王?」
「あぁ、あの悪名高い魔王様だ。お前たちは……精霊に捕まった"人間"か?」
「(まぁ、人間かどうかはとりあえず置いておくとして)山の中を歩いてたら急に、ね……」
そんなやり取りを交わしながら、状況を問いかけるワルツ。
その結果分かったことは、ワルツたちのように誘拐されて、他の牢に閉じ込められている人々が少なからずいること。その数、およそ30人。それも世界中の各地から集められているらしい。
「じゃぁ……大陸の南側に人が住んでて、北に魔族が住んでる、ってわけじゃないの?」
「噂じゃそういう話だが、村から出たことがねぇ俺には分からねぇ。今まで魔族とか人間とかあまり意識することなく生きてきただけの、ただの農夫だからな……」
「あぁ、そうだったのね……。そりゃご愁傷様(国境線とか無いのかしら?)」
「いや、こっちこそ暗い話をしてすまん。あぁ、そうだ。看守に聞いた話じゃ、従順にしてたら兵隊に入れてもらえて、飯をもらえるって話だ。逆に、反抗ばかりしていたら、即死刑だってよ?だけど、あんたみたいな女には……あ、いや……すまない」
「まぁいいけど……」
そう言って険しい表情を浮かべながら考え込むワルツ。その際、大きい方の勇者や賢者、それにルシアが、ワルツに向かって首を振っていたのは、揃って首の運動でもしていたためか。
その際、小さな方の勇者——エンデルス少年は、複雑そうな表情を浮かべながら檻を掴んでいた。自分にとって、檻に囚われていた者たちは、どのような存在なのか。そして、女神と袂を分かった自分は、果たして今も"勇者"と言えるのか……。そんな、ジレンマのような思考に苛まれていたようである。あるいは、"自分が盾になる"と言いながら、全員で捕まってしまったことも、その理由の一つだったと言えるかも知れない。
そんな中、勇者レオナルドが、あまり大きくない声でこう口にする。
「いかが致しますか?ワルツ様」
「いかが致すかって?檻を壊して外に出る?」
「はい。檻を壊して無理矢理外に出るのか、それとも"看守"と呼ばれていた方々の隙を突いて外に出るのか、あるいは魔王を倒して外に出るのか……」
「どれを選択しても、ちょっと乱暴だと思うけど……この時代で無駄な殺生をするわけにもいかないし、でもアイテムボックスを埋めなきゃならないからのんびりしてる暇なんてないし……あ、そうそう。エネルギアたちに連絡しておかないと、みんな心配して突撃してくるかも知れないわね……。まずはそっちから済ませとこうかしら?」
そう言いながら、無線通信システムを起動しようとしたワルツ。
するとそんなタイミングで——
ガチャッ……キィィィィ……
——廊下の奥から重そうな扉が開く音が聞こえてきた。どうやら看守が牢屋の様子を見に来たようである。




