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プロローグ
男は、少女を喰っていた。
血に濡れた白い髪。
額から伸びる、短い角。
閉じられた瞼の下に、どんな表情があったのか。男には確かめることができなかった。
見れば、止まってしまう。
止まれば、もう二度と口を開けなくなる。
温かい血が、舌の上へ流れ込んだ。
「……すまない」
自然と声が震えた。
少女の胸の奥に宿る、白い結晶。
竜だけに宿る、「竜核」。
いくつもの「竜核」を喰ってきた。
胸を裂き、核を砕き、中身を啜った。
迷ったことなどなかった。
竜は殺す。
竜核は喰う。
それが男の生き方だった。
だから、これも同じはずだった。
「……違う」
男の頬を、涙が伝った。
「これは、違う」
それでも、口は止まらなかった。
白い結晶へ歯を立てる。
硬い殻が、乾いた音を立てて割れた。
少女の身体が、その衝撃でわずかに揺れる。
垂れていた小さな手が、男の外套を撫でた。
少女を抱く腕に、力がこもる。
「すまない」
何度口にしても、許しは返ってこない。
「すまない……」
砕けた竜核から、白い光があふれた。
男は泣きながら、それを飲み込んだ。
最後の一滴まで。
何一つ残さずに。




