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加護なしの第七王女ですが、前世が限界社畜だったので離宮暮らしが快適すぎます!  作者: 小狐


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第34話 どうやら、離宮のやり方が参考にされるみたいです

 朝、庭に出るとフェルドが花壇の前で土をほぐしていた。

 夏向けの苗はほとんど抜かれていて、跡だけが小さく並んでいる。


 「盛りの時期が終わると、整える作業に変わります」とフェルドが手を動かしながら言った。


 「目立つ仕事ではないですが、これをやっておかないと秋のものが根づきません」


 「地味な時期に手を入れておく方が、後が楽ですしね」


 「ずっとそうです」とフェルドが言い、土の状態を確かめるように指で押した。


 部屋に戻ると、廊下で老執事が帳簿を持って待っていた。


 「今週から冬向けの寝具の点検を始めます。秋が来る前に状態を確かめておく方が良い時期です。秋になれば年次評価の提出もありますので、帳簿の整理は少し早めに進めておく予定です」


 「ありがとうございます。去年の分と見比べておく書類があれば、先に出しておいてください」


 「承知しました」と老執事が帳簿を閉じ、廊下の奥へ向かった。



 ◇



 昼前に王城会計部門の上席文官フェルマンが来た。

 「また伺いました」と言いながら部屋に入り、椅子の前で立ち止まった。


 「お座りください」


 「失礼します」とフェルマンが座り、少し間を置いた。


 「本日はフィリアン様からお預かりした件でございます。急ぎではないのですが、状況をお伝えしたく」


 「どうぞ」


 「離宮でお使いの台帳と記録の様式を、今年の評価の参考として他の施設にも共有する方向が決まりました。同時に、離宮の運用が安定しているという実績を踏まえて、秋の評価の際の確認手順を一部省略できるよう、申請の形式が変わる予定です」


 「確認が減るということですか」


 「はい。これまで年次評価の際にお出しいただいていた書類のうち、2種類は離宮の記録で代替できると判断されました。提出の手間が一部なくなります」


 前世で言うなら、信頼の積み上げが申請ラインを下げるのと同じだった。

 最初は何枚も確認書類が要っても、実績が続けば手続きが軽くなる。

 やってきたことが、手間の減り方として返ってきた。


 「それで確認や申請が減るなら、その方が助かります」


 「ご協力いただきましたおかげです。正式な変更は秋の評価の前に文書でお伝えします」


 フェルマンが書類を一枚取り出して机の上に置いた。


 「こちらが変更になる手順の一覧です。確認だけお願いできますか」


 「拝見します」


 書類に目を通しながら、老執事を呼んだ。


 老執事が手元を覗き込み、少し経ってから言った。


 「申請の手間が減りますね。補充の確認も一部省ける形です。年に2回提出していた状況報告が、来年からは1回分なくなります」


 「運営として楽になるということですか」


 「ならびに、本宮への照会を毎回入れていた項目が、実績があれば省略できるようになります。二重に確認していた部分が一本になる形です」


 二重確認が省ける。

 前世で言えば承認フローの簡略化に近かった。

 確認ラインが増えても仕事はただ重くなるだけで、実態は変わらない。

 それが一本にまとまるなら、使う時間が素直に減る。


 「それはありがたいですね」


 老執事が頷き、後ろへ下がった。

 入れ替わるようにルナが茶杯を差し替える。


 「こちらのやり方が参考にされるというのは、どういったことですか」


 「申請の一部が省略できるようになります。確認の手間が減ります」


 「改善したぶんが、こういう形で返ってくるんですね。仕事だけ増えてもつらいですし、楽さとして返ってくる方がいいです」


 「それはそうです」


 ルナが下がると、フェルマンに書類を返した。


 「内容は確認しました。こちらの手間が減る方向なら異存はないです。ただ、こちらを本宮に呼んで確認するという形は避けてほしいです。見学や確認が必要な場合は、事前に分かる形で伝えてもらえれば」


 「そのように伝えます」とフェルマンが頷いた。


 「正式な変更通知は秋の評価の前にお届けします」


 「それで十分です」


 フェルマンが頭を下げ、部屋を出た。



 ◇



 夕方になって、日が傾いた頃に廊下へ出た。

 昼間の熱がまだ床に残っていたが、風の温度は変わっていた。

 ルナが少し後ろで控えている。


 花壇の方に目をやると、フェルドがまだ端の土を整えていた。


 「夕方まで外にいらっしゃいますね」


 「この時期はやっておくことがあるみたいです」


 「夏のものが終わると、また次の準備が始まるんですね」


 「整えると次が来ますから」


 しばらく二人で花壇の方を見ていた。

 風がまた一度吹いて、床の熱を少し流した。


 「今日は少し良いことがありましたね」


 「面倒が減りました」


 「それは良かったです」


 夏向けの苗の跡は落ち着いていて、次のものを植える前の土が静かに並んでいる。

 整えてきたことが、暮らしの楽さとして少しずつ返ってきていた。

 暑さがまた少し和らいでいた。

読んでいただきありがとうございます。

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