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君は悪魔の成り損ない  作者: ヨダカ
君と世界の滅亡を
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ジレカクドポカ

走る星を見上げて、息を切らすカウレは、泣いていた。

終わる。

この世界が、今一つの形の終わりを迎える。

しかし、それが本当の終わりでないことは、カウレもわかっていた。

それでも悲しいのだ。

世界の形は変わる。

少なくとも、今のこの世界を見ることは二度とできない。

もう二度と、この空気を味わうことはできない。

カウレは死体に躓き、転んだ。

カウレは自分の体が動かなくなりつつあることに、気がついた。



神官は、山頂に向かって歩いていた。

その後ろを、何十人もの人々がついていく。その様子はハーメルンの笛吹き男を彷彿とさせるものだった。

その人々の中に、あの少年がいた。

服屋の少年が。

操り人形の様にふらふらと腕を振り、かくかくと首を揺らしながら、歩いていた。

軈て山頂につき、神官は止まった。

「約束の時間だ」

神官は杖を地面に突き刺し、両腕を広げた。

「さあ神よ、応え給え」

後ろの人々も、虚ろな表情で両腕を広げた。そして口を開いた。

「我等の鼓動に応え給え」

ゆっくりと雲が晴れていく。

風が吹き付け、砂埃を払った。

空の向こうに、何かがある。

理解不能の結晶が、理解の内で燦然と輝いている!

声なき声が聞こえた。神官は頬を緩めた。

「貴方様の通りに」

大三角形が空に浮かんだ。中心に軸が通り、直角な曲線を描いている。

杖が光り、線が伸びた。伸びる線は「彼」と繋がった。

線は弛緩し、解けそうになりながらも、絡み、数多に分かれた。この世界の繋がりは、解けかけている。

「運命を決めてください。私は命を捨てるつもりです」

「彼女」がねじ曲がった。笑っているようだった。


世界は一つの終わりを迎える。

フルセルは浮上を止めた。

星が浮かんでいる。


人々は争いをピタリとやめた。

何かを受け入れるかの如く、両腕を広げた。

それは、「」が、

カギ括弧に収めることすら出来無い「あれ」が。代名詞でしか表すことのできぬ何かが。

愚か者達に与えた、一片の理解であった。


「ジレカクドポカ」


奇跡が起こった。



真っ黒な液体の中を、ゆらゆらと漂っている。

灯葉は辺りを見回した。

見える。

今まで魔波しか見えなかったのに、ちゃんと世界が、色が見える。

星々が散らばり、何人もの人が漂っている。その中に、ドロイトを見つけた。

近寄ろうとしても、動けない。声も出せない。宇宙空間みたいに、何処までも果てしなく続く世界に、一人ぼっちだ。

急な虚しさが灯葉を襲った。

なんとかして動かなければ。

…何故、動かなければならないんだ?

別に、動かなくても…

生きなくても、良いじゃないか。

そういえば、もう生きる理由もない。

世界は終わったんだから…

灯葉は星を見つめた。

なんて綺麗なのだ。

命の結晶か。

灯葉の目から、涙が零れ落ちた。

そういえば、俺はもう人間では無いのか。

ここでもう死んでしまおうか。

数秒で収まるはずの安易な衝動が、壊れた心を蝕んだ。

しかし、それはすぐさま晴れた。

灯葉は自分の目を疑った。

なぜここにいるのか。

こんなところにいるはずが…

「母さん、お父さん」

世界が歪んだ。

二つの世界が、歪んだ。

歪みに歪み、原型を留めぬほどに歪んだ。

そして何ということか。


それらは、くっついた。

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