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君は悪魔の成り損ない  作者: ヨダカ
君と世界の滅亡を
47/53

絶対的  

リビアは煮えたぎるような怒りが少し晴れるのを感じた。

ひとまず、灯葉を地獄に叩き落とすことはできた。しかしまだ足りない。もっとズタボロにして、廃人になるまで気がすまない。

「その前に、君達だ。邪魔しないでくれるかな?」

リビアはルビーを放り捨てた。ルビーは血を吐いた。しかし光る眼光はリビアを鋭く刺していた。

「…気力だけは一人前だな」

リビアは空に舞った。

「もう少しいたぶってあげよう…おや」

無数の足音が聞こえた。軍が合流したのだ。彼等は馬に乗り、赤い反旗を翻していた。

そのうちの5人が先頭に並んだ。

「?なんだ」

リーダーと思われる男は、旗をぶんと振った。

「戦闘隊形、突」

5人の男は両手を胸にかざした。すると魔波は不規則に歪んだり戻ったりを繰り返した。

「面白い…」

バッと音がして、リビアの胸が燃えた。炎は瞬く間に体全体を覆い、皮膚を焼いた。リビアは少し驚いた顔をした。

「何だ、これは」

鋭い音が鳴り、両足が凍りついた。リビアは氷を壊そうと腕を振り上げたが、途端に彼女の体は水に包まれた。

「…!」

リーダーの男はニヤリと笑い、叫んだ。

「ガーネット、宝玉をこちらに投げろ!」

ガーネットは壊れた体を無理矢理動かし、宝玉を投げた。

「用意」

5人の男の中心に、光源が出現した。それは太陽のように明るく、見ただけで目が傷ついてしまうほどだった。

「雷槍」

次の瞬間、雷は放たれた。雷は宝玉を通過し、何十倍も鋭く、破壊力を増し、リビアに喰らいついていった。

空気は震え、視界がぼやけた。リビアは轟音と共に雷に撃たれた。

一瞬でリビアの体は焼け焦げ、目が裏返った。

この一連の攻撃の間に、新しく来た軍とリビアに敗れ倒れていた軍は、水に包まれ浮いているリビアの周りを円状に囲っていた。

抜かりなく、殺すために。

「戦闘隊形、極円」

囲う円陣の中心に、これ以上無いほどの魔波の歪みが現れた。狙ったのかどうか定かではないが、そこに宝玉もセットされていた。

体の痺れを感じながら、彼等は順調に魔波を歪ませていった。リビアに反応はなかった。

次の瞬間、リビアは目を開けた。

全魔術師が、呟いた。

「ドポカ」


遠くで凄まじい明るさの光が見えた。どうやらエネルギーの塊らしい。あそこが前線だろうか。

そんなことを思いながら、ムージュは隊長ザクロを見下ろしていた。

ザクロは瀕死の状態で、地を這った。

「ぐ…何故、こんなことを…」

「戦えないかな、と思ったからです」

ムージュはザクロを放置し、一人で歩いていった。ザクロは震える腕をムージュに伸ばした。

「ま、待て…」

「ん…あ、そうそう」

ムージュは立ち止まった。そして、振り返った。

「やはり、一流の暗殺者は誰にも姿を見られていない暗殺者ですよ」

「…はぁ…?」

「まあ休んでいてください」

「どこに行くんだ…」

「決まっているでしょう。戦争しに行くんですよ」

ムージュは歩き去って行った。

結局、ザクロは彼女が何を言いたかったのかわからぬまま、意識を失った。


「馬鹿な」

リーダーの男は高揚しているのか、半笑いで応えた。

「何いってんだよ。相手は悪魔だぜ」

彼は長剣を力強く握り締めた。

「俺達は神に喧嘩売ってんだよ」

リビアは変わり果てた姿で笑っていた。

彼女は巨大な蜘蛛になっていた。人間より何倍も大きく、学校ほどの大きさになっていた。

そこら中に、リビアの焼け焦げた顔面が張り付いていた。

「哀れな人間め、幼稚さが露呈したな!私は悪魔だ!全知全能の悪魔だ!人間の姿なんて、仮のものでしかないのだよ!」

しゅるしゅると音を立てて、蜘蛛の腹から糸が出てきた。その糸は重なり、リビアの姿に成った。

そのリビア状の糸は喋った。

「さあ、どうします」

にたにたと気持ちの悪い笑みを浮かべながら、彼女は近寄ってきた。

「やることは変わらない、戦闘隊形を組め!所詮は的がデカくなっただけだ!」

決死隊が先陣を切り、怪物と化したリビアに突撃していった。

「脚切ってバランス崩すぞ!」

「…無駄なことをする」

途端に蜘蛛の背中がぱっくり割れ、大量の糸が四方八方に撃ち出された。それらは地面に重なり、人間状態のリビアを形作っていった。

「何でしたっけ…戦闘隊形?あれは、なかなか面白い戦い方ですね」

ガーネットは馬に乗りながら、まさか、と呟いた。

「…私もやってみましょうか」

糸で作られたリビア達は、両手を胸の前で組んだ。

「戦闘隊形、護」

魔波ではない何かの力が働いた。間違いなく悪魔の力だ。

その力は瞬く間に、真っ赤な壁を造った。ドーム状にリビアと軍隊を覆ってしまった。

外の世界から、この場所を遮断してしまったのだ。

「逃げられると思わないで下さいね」

リビア達はまた手を組んだ。

「悪魔の力は卑怯ですかね。魔術でも使って見ましょうか?」

蜘蛛は背中から更に大量の糸を出し、大量のリビアを作った。

「戦闘隊形、極円」

レッドカーテンに仕切られた世界で、数え切れないほどの悪魔達が魔波を歪ませ始めた。

「おい糸切れ、糸切れ!!」

「フフ、良いですね。1523人、十人ずつ殺していってあげましょう」

リビアは愉しんでいた。

「まず十人」

音もなく、何人か倒れた。

「おい早くこいつを殺せ!!」

「どうすりゃ良いんだよ!」

「…十人」

人が、パタパタ倒れた。

人々は半狂乱で馬を走らせ、糸のリビアを切っていった。しかし切っても切っても、新しいリビアが作られるだけだった。

一人の男が、震えながら突っ立っていた。

「…俺ら、もう終わりなのか」 

「何言ってんだよ!」

リビアは暫く辺りを見回し、フー、と息をついた。

「面倒ですね、二十人」

諦めていた男は、棒立ちのまま倒れた。激励していた男は、悟ってしまった。

ここで死ぬのだ、と。

「さあ次は…」

ピシ、と音がした。

全員が止まった。それほど大きい音だった。 

リビアは一点を見つめていた。

赤い壁に、ひびが入っていた。

それはどんどん広がっていき、遂に壁は砕けてしまった。

「…取り敢えず、成功といったところかな」

誰かが居た。

そこに、一人の男が居た。

「久し振りじゃないか、リビア」

リビアは冷たい目線を男に送った。

「これはこれは、いつかの魔術学園の出来損ないじゃありませんか」

レベオは寂しげに笑った。


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