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君は悪魔の成り損ない  作者: ヨダカ
悪魔の目覚め
29/53

『記憶の美術館』ムネモーシュ

「凄え〜…」

今、俺等はほうきで空を飛んでいた。

「まさか本当にほうきで空を飛ぶとは」

ドロイトは眼下に広がる森を見下ろしながら、喋った。

「棒状のものなら何でも良いんだよ。私はほうきが一番乗りやすいけど」

「へえ、しかしこんな便利なものがあるなら何で始めから使わないんだ」

「私がほうきの運転が下手だからね…え?」 

ドロイトが大きく震えた。

「どうしよう、そうだ私ほうきの運転下手なんだった」

「え、だ、大丈夫だぞ、上手く行ってるじゃないか」

確かに危うい場面も何度か…何十度かあったが。

「どうしよう怖い」

ここでドロイトのパニックが再発してしまった。最悪だ。ここは天空だぞ?落ちたら間違い無く…

「死んじゃう…降りれない…!」

いよいよ震えが大きくなってきた。なんてことだ話しかけなければよかった!

「ドロイト落ち着け、今まで通りやればいけるから!」

「嫌だ…!」

グワンとほうきのバランスが崩れた。次の瞬間、俺達は空中に放り出された。

腹の底が冷える感覚が一気に広がる。

「うっそだろう」

俺はドロイトを空中で抱きかかえた。そして素早く、右手をほうきに伸ばした。

届かない!

咄嗟に右手に力を入れると、掌から有刺鉄線が現れた。

「いいぞ伸びろ!」

…伸びない!

そのまま俺等は地上へとスピードを上げて墜落していった。まずいこのままじゃ二人共ここでお陀仏だ。

しかしなぜだか、俺の心から恐怖感が消えていた。

何だこれは。体が死を受け入れたか?

「否、違う」

地面が急に近づいてきた。

確信だ。

最早ほうきを掴む必要は無い。身体中から有刺鉄線が生え、地面に降り注いで行った。。

俺は念の為ドロイトが傷付かないよう、天へ高く掲げた。

有刺鉄線全体から紐のような緩やかさが消え、変わりにバネのような靭やかさが現れた。

有刺鉄線は地面に刺さって、俺をしなりながら支えた。

スピードは完全に失われた。

「ふう」

有刺鉄線を縮めて体に収めた。

「ドロイト」

…。

「気絶してる…」


「ここがムネモーシュ?」

少し回復したが、まだ腰が抜けかけているらしいドロイトは俺に寄りかかった。

「そう、眼の前の赤い館がムネモーシュ。気をつけてね」

「何に気をつけるんだ」

ドロイトは俺のことを見た。困惑の表情が浮かんでいた。

「え?どこからどう見ても、危ないでしょう」

俺は眼の前の館を見た。

「別に普通なんじゃ?」

ドロイトフーッと息を吐いて首を振った。

「何だよ」

「このムネモーシュ、とてつもない歴史があるんだよ」


昔々、空間を自在に操れる魔術師が居ました。

昔は世界が安定していなかったので、そういった芸当が可能だったのです。

彼は芸術家に相応しい美意識と想像力を持っていました。

彼はある日思いつきました。

「そうだ、人の人生を表す、自分だけの館を創ろう。その館全体が芸術と化すのだ。そして私はその館の神様だ」

思い立ったが吉日、彼は早速取り掛かりました。

大きな赤い屋敷を建て、その中に集めてきた絵画の中でも特に『記憶』について描かれているものを飾ったのです。

魔術師は館の内部の空間を捻じ曲げ、外観こそ小さいものの中に入れば異常な広さになるように仕立てました。

これで良かったのです。

これだけなら良かったのです。

しかし彼は満足できませんでした。

禁忌を犯したのです。

彼は人間を捻じ曲げ、絵画にしました。彼の身の回りの大事そうな小道具と共に。

彼はそこからはもう有頂天で、絵画を創りに創り、人々を殺し周りました。

彼の力は余りにも強かったので、国王も彼が死ぬまでは何もできませんでした。

こうしてこのおぞましい館は出来上がったのです。

 

「…っていう」

「暗いなー…」

ドロイトは館に近づいた。

「…ちょっと怖いね」

「お前が連れてきたんだろう」

アンティークなドアノブに手をかける。ドロイトは軈て決心したかのようにガチャリと扉を開けた。

「本館にお越し頂き、誠に有難う御座いますお客様」

ドロイトは完全に腰が抜けた。

「う、うえ?嘘、なんで人…店員さん?」

「美術館に店員なんているのかドロイト」

彼は頭を上げた。

「私はこの美術館の管理人です。宜しければ案内しましょう」


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