闇夜のメリー 3
昔々、一人の職人が東の国に住んでいました。
その職人は自らの死期が近いことを悟り、今までの集大成と呼べるものを作ろうと思い立ちました。
その日から、朝も、昼も、夜も作品作りに没頭し、周りから心配されるほどその作品に集中しました。
職人は、作品に命を込めようとしたのです。
一年後、遂に基本的な形が出来ました。
後は思いと、少しの魔法を込めるだけ。
しかし結局完成は叶わず、職人は息を引き取ってしまいました。
職人は息を引き取る前に、この作品に名前をつけました。
光のメリー、と。
それから十年後。
東の国に、娘を連れた魔術師がやって来ました。
彼女はメリーの噂を聞き、是非見てみたいとこの地を訪れたのです。
彼女はメリーを見ると、それに純粋な職人の思いを感じ取りました。
これは完成させなければならない。
彼女はそう思いました。
彼女は娘と共に、メリーに少しの魔法を込めました。
光のメリーは更に完成に近づきました。
後は思いを込めるだけ。
その時でした。
東の国に、盗賊団が押し寄せて来たのです。
彼らは闇の心を持った、悪人でした。
これはいけない。奴らにメリーを渡しては、このメリーは大変な兵器となってしまう。
魔術師は娘とメリーと共に逃げ出しました。
しかし、メリーは繊細です。
慎重に運ばなければなりませんでした。
やがて、盗賊に見つかってしまいました。
彼女はどうか娘だけでも、と盗賊に命乞いをしました。
盗賊はそれを聞き入れず、魔術師…いや、一人の母親を殺してしまいました。
娘は、その光景を目の前で見せられました。
母親を失った彼女は、殺意と憎悪に溺れました。
そして、絶対にしてはいけないことをしてしまいました。
光のメリーに、憎悪を込めたのです。
彼女は、今も何処かを彷徨っています。
何を探しているのでしょうか。
幸運か。
愛情か。
それとも死に場所か。
…彼女は、メリーに憎悪を込めました。
しかし、職人の純粋な気持ち。
そして私の愛情。
これらは微かでもメリーに残っているのです。
私は、僅かな希望を信じたい。
いつかその日が来るまで、
闇夜のメリーは、あの子の為に回るのです。




