第9話、ゼンマイと新ビルド
「私は昔、ある夢を持っていた。理想のスキルを作るという夢だ。
そのためにスキルを学び、スキルトレーナーになり、ついには理想のスキルを完成させた。
しかしそれを発表すると、皆の顔色が変わった。
『今すぐ研究を止めろ。従わないならギルド追放だ』と言われたんだ。
よくある嫉妬だな。スキルを作り出す才能に恐れをなしたに違いない。
私は当然それに従わず、追放されたというわけだ」
それを聞いたミミは憤慨する。
「ただスキルを作っただけで追放?意味わかんない!
マキナ、私たちからも抗議しようよ!」
「うーん、今すぐは難しいかな。
私たちは実績もないし、門前払いされて終わりだよ」
「私のために怒ってくれた、その気持ちだけで嬉しいよ。
さて、私の過去はこれくらいにしてスキルの話をしよう。
君たちも私のスキルが欲しくて来たんだろう?」
その言葉とともに、ミミたちの前にスキル一覧が表示される。
「最初の1つはサービスだ。じっくり選んでくれたまえ」
ミミたちはスキルを見て驚愕した。
全てのスキルに『装備中、全ての物理・魔法攻撃力が割合で減少する』効果がついていたのだ。
もちろんアクティブもパッシブも関係なく。
「ゼンマイさん……あの……このスキルって……」
「どうだ?素晴らしいだろう?」
「攻撃力が下がったらどうやって敵を倒せばいいんですか……?」
「状態異常を使えばいい。毒、出血……他にもいろいろある」
ミミはゼンマイがギルドから追放された理由と噂が最低ランクだった理由を察してしまった。
思想も戦法も極端すぎるのだ。これを有効活用できるプレイヤーは少ないだろう。
ミミが顔を青ざめさせているのとは反対に、マキナは真剣にスキルを読み込んでいた。
「ゼンマイさん、私はこれにします」
「良い選択だ」
アクティブスキル「ポイズンタッチ(ゼンマイ)」
3秒間、手で触れた相手を毒状態にする
相手の耐性の影響を受けない
装備中、常に物理・魔法攻撃力が20%減少する
消費MP:50
取得条件:特定のスキルトレーナーから購入する。
「マキナ、大丈夫?」
何に対して言っているのか自分でも分からない質問がミミの口から飛び出す。
「大丈夫。私はしばらくゼンマイさんのスキルを主軸にやっていくって決めたの」
「どうやって敵を倒すの?」
「もちろん、状態異常……と言いたいところだけど、スキルが揃っていないうちはファイアボールでなんとかするよ」
それは揃ったら状態異常だけで敵を倒すという意味ではないのかと聞きたくなったが、ゼンマイさんの前なのでやめておくことにした。
ミミは比較的マシなスキルを取ってお茶を濁した。
一応セットはしておいた。家を出たら外すつもりだが。
アクティブスキル「パラライズボール(ゼンマイ)」
当たった相手を麻痺状態にする玉を発射する。
装備中、常に物理・魔法攻撃力が10%減少する
クールタイム:10秒
取得条件:特定のスキルトレーナーから購入する。
2人はゼンマイに礼を言い、家を後にした。
「本気なの?状態異常だけで戦うことになるんだよ?」
「本気だよ。耐性無視のアクティブスキルもあるし、パッシブスキルも効果が大きいものばかり。
まともに攻撃できなくなることを差し引いてもトントンってところだね。
それに、奇抜な戦法は対人で強いからメリットのほうが大きいかも」
「そうなんだ……」
正直、ゲーム初心者のミミはマキナの理論のどこに説得力があるのか分からなかった。
しかし、ここまで自信たっぷりに言い切るということはそれだけの理由があると思い、それ以上は何も言わなかった。
「実はね、これはミミにもメリットがあるんだよ」
「どのあたり?」
「ミミの大ジャンプは相手が動くと当たらないよね。
妖精の軽鎧でマシになったけど、まだ弱点。
でも、状態異常で相手を動けなくすれば確実に当てられるよ」
「なるほど、コンボってやつだね」
「そう。それで、これからスキルのためにお金稼ぎに入りたいから今日は別れない?」
「分かった。スキルを覚えたら使うところを見せてね」
「もちろん。じゃあ、また今度!」
マキナは急いでどこかへ走り去っていった。




