第8話、酒場とスキルトレーナー
2人は酒場へと入る。
落ち着いた色の木の壁に、たくさんのテーブル。
そして老若男女、さまざまなNPCがいた。
それぞれ飲み物を飲んだり談笑したりと思い思いに過ごしている。
「酒場って聞いて思い浮かべたままの酒場だ。逆に新鮮。
こういうのちょっと憧れてたんだよね」
「酒場なんて行ったことないでしょ。
でもその気持ち分かるよ。背伸びしたくなるよね」
ミミたちが周囲を見回しながら話していると、入り口の用心棒らしきNPCが話しかけてきた。
「あんたたち、ここは初めてか?」
「そうなんです。噂を集めたいんですが、どこで聞けますか?」
「噂はそこのカウンターで聞くことができる。対価は忘れないようにな。
飲み食いしたいときは適当なテーブルに座っていろ」
「そういうシステムかあ、教えてくれてありがとうございます」
「楽しんでいきな」
ミミたちは噂を聞くため早速カウンターへ向かう。
カウンターではバーテンダーがドリンクを作っていた。
「こんにちは、バーテンダーさん。噂を聞きに来ました」
バーテンダーは2人をジロリと睨むと、無言で1枚の紙を差し出してきた。
紙には噂のランクと金額。いわゆる料金表だ。
それを見たミミは思わず声が出る。
「めっちゃ高い!」
「もしかしてだけど……ここはもっとゲームを進めてお金を余らせてから来る場所なのかも……」
「それでも1つくらいは買えるかもしれないよ。
マキナはいくら持ってる?」
2人はお互いの所持金を伝え合った。
幸いにも合わせればギリギリ最低ランクの噂に届く金額だ。
2人は頷き合い、噂を1つ買った。
金額を確認して頷いたバーテンダーが指をパチンと鳴らす。
すると、視界の端にアイコンが点灯した。新アイテム入手の通知だ。
インベントリを開くと紙切れが1枚入っていた。
「凄い、渡し方がおしゃれだね〜」
「ただのアイテム入手もこういう演出だと嬉しくなっちゃう」
紙切れを取り出してみると、地図とともに文章が記されていた。
『ギルドを追われたスキルトレーナーがここに住んでいる』
2人は地図に描かれた場所に向かった。
幸いにも地図はただの住宅街を指し示していたため、難なく辿り着くことができた。
その場所には何の変哲もない一軒家。
マキナが代表してドアをノックする。
「すみませーん、ここにスキルトレーナーの方はいらっしゃいますか?」
家の奥からドタバタと物音が聞こえてきた。
やがてドアの鍵が開き、声が聞こえる。
「誰かに見つからないうちに入りなさい」
ミミたちは言葉に従い、素早く家の中に入った。
家の中は本で溢れかえっていた。
棚はすべて埋まり、部屋の床すら見えない状態だ。
廊下の中心だけは床が見えたが、それでも気をつけないと本を踏んでしまいそうになるほどだった。
2人はリビングと思われる空間に通され、家主の男と話を始める。
「こんにちは、私の名前はゼンマイだ」
「私はマキナと言います。こっちはミミ」
「それで……2人ともスキルトレーナーを探してうちに来たんだな?」
「はい」
「なぜ私なんだ?スキルトレーナーならギルドにいくらでもいるはずだ」
マキナは答えを慎重に選ぶ。
ゲーマーとしての勘が、ここで選択肢を間違えるとイベントが発生しなくなると告げている。
「それは……」
「私たちはゼンマイさんがギルドを追放されたってことしか知らないんです。
今回はその理由を聞きに来ました。
あとは珍しいスキルを教えてもらえそうだったからです」
マキナが言葉に詰まったのを見たのか、ミミが代わりに話す。
ミミの本心から出た言葉を聞いたゼンマイはどこか納得したように話し出した。




