第31話、自己紹介と冒険
ミミたちは在庫が少なくなってきたこともあり、店を畳んでクランハウスまで戻った。
今回はアンバーも一緒だ。
「失礼するよ。
……このクランハウスはエリアごとに雰囲気を分けているのか。狭いながらもいい工夫だ」
3人は応接机を囲んで話し始めた。
「じゃあ、まずはクランの方針について……」
それから3人はクランの概要、戦い方やビルドについての情報を共有した。
「私のビルドの肝はこの腕防具、『奇術師のグローブ』だ。
これによって複数の武器をスムーズに切り替えられる」
そう言ってアンバーは「奇術師のグローブ」を見せた。
腕防具「奇術師のグローブ」
魔法攻撃力+10
魔法防御力+10
手に持った武器が装備された武器と判定される。
【思考操作】装備している武器を装備解除することができる。
装備解除された武器は収納場所へ戻る。
「この前見たよ。叫んだら武器が背中に瞬間移動してたよね」
「まさにそれだ。ただ、武器を使ったアクティブスキルは武器種に依存するからほとんど使えない。
これからは魔法でカバーしようと考えている」
「魔法戦士ってやつだよね。
1人で何でもできるようになるのは憧れるな。
私は頭がパンクすると思う」
「私もだ。練習あるのみといったところだな」
「武器を3本も装備できるのはどういう仕組みなんですか?」
「装飾の枠に装備しているんだ。
普通ならただの飾りだが、私には『奇術師のグローブ』があるからな」
3人は情報共有を終え、今後の行動について話し合った。
確認したところ、今日は全員時間があるようだったので、一緒にプレイすることになった。
「今日、これから冒険に行かない?
酒場で情報を買って、行ったことのないところに行くっていうのはどうかな?」
「出たとこ勝負ってわけか。いいね!冒険はこうでなくちゃ」
「私も賛成だ。ガチャ……ランダム要素に身を任せるのはプレイヤーの特権だからな」
アンバーから不穏な単語が聞こえた気がしたが、ミミたちはその違和感を無視することにした。
「それじゃあ、出発!」
3人は酒場に向かい、お金を出し合って最低ランクの噂を1つ購入した。
相変わらず無口なバーテンダーから渡された紙にはこう書いてあった。
『ある訓練場で、大きな争いが起きようとしている』
文言とともに描かれた地図は、森の中の1点を指し示していた。
「大きな争い!?止めに行こう!」
「起きようとしているってことはまだ起きていないってことだよね。
事前に防げばボーナス報酬をもらえたりするかも」
「大きな争いとは抽象的な表現だな。
自分の目で確かめてみるのが楽しみだ」
一行は訓練場に向かいながら、お互いのことを話した。
「アンバーさんの名前って琥珀から取っているんですか?
しっかりした名前だから気になっちゃって」
「香水に使われるアンバーグリス、つまり龍涎香から取っているんだ。
真珠のように形成され、複雑で甘い香りを放つ。
そんなプレイヤーになりたくて、この名前を拝借したというわけだ。」
「おお、かっこいい!信念のある名前ってあこがれるな~。
私もミミも、もうちょっと考えて名前を付ければよかったかも」
「人の名前を適当につけたって、決めつけないでよ。
由来は無いけど、言いやすくて覚えやすい名前にしたかったの」
「ええっ?じゃあ適当につけたの私だけ?」
3人はそんなことを話しながら進み、訓練場にたどり着いた。
建物の外から見た限りでは、争った形跡はなく、きれいに片付いているように見える。
奥からは訓練生のものと思われる掛け声などが聞こえてきた。
「とりあえず、争いっていうのが起きる前にたどり着けたみたいだね。
これから調査して争いに備えよう」
ミミ、マキナ、アンバーは頷きあい、訓練場の中へと入っていった。




