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第30話、開店と勧誘

 ミミたちは手続きを終え、開店準備に入った。

 今回は本格的な出店ではないので、簡単な机と椅子、そしてのぼりを借りている。


「のぼりを借りるとはね。こっちにも気合が伝わってくるよ」


「気合っていうか、初めての出店だから最低限は宣伝しないとって思って借りたんだよ」


「のぼりにはなんて書くの?」


「それは……シンプルに『森のダンジョン素材販売中』でいくよ。

 実際、売り物はそれしか用意してないでしょ」


「まあ、確かにね。それでいこう」


 ミミはウィンドウを操作し、のぼりに『森のダンジョン素材販売中』と書いて立てた。


「次は陳列だね。慣れないうちは、マキナが調べてくれた価格を参考に売ってみようかな」


「オッケー。私はまず商品の特性の確認から始めるよ。

 ミミ、頑張ってね」


 ひと通り準備を終えたミミとマキナは店を開いた。



 店を開くと、興味を持った様子のプレイヤーがちらほらと寄ってきた。


「ダンジョン産素材を扱ってるのか。

 ではこのダンジョン蟹の爪が4つ欲しいな。

 在庫はあるかな?」


「ありますよ。4つで320ゴールドです」


「よし、それで買おう」


 ミミは取引ウィンドウを開き、取引内容を入力した。

 客はそれを承諾し、取引が完了した。


「ありがとうございました〜」


 取引を終えたミミにマキナが話しかけてくる。

 

「ミミ、結構手慣れてるじゃん。

 もしかしてバイトとかしてた?」


「前もってヘルプを読んでただけだよ」


 実際には興奮して眠れず、何度もウィンドウ操作の練習をしたことは黙っておいた。


「そろそろ商品の特性は頭に入ったし、私も販売に参加するよ。

 と言っても、困ったときにサポートに入る感じになるけどね」


「分かった。よろしくね」


 それからは2人で素材を売り続け、様々なプレイヤーが店を訪れた。


「まとめ買いするから割引してくれない?」


「毒蛙のレア素材は置いてありますか?」


「麻痺耐性ポーションの素材が欲しいのだけど」


 ミミとマキナは様々なプレイヤーに対し、あるときは譲歩し、またあるときは強気に交渉していった。


「こういう交渉がVRMMOの醍醐味なんだよ、ミミ」

 

 そんなとき、ミミの見知った人物が現れた。


「やあミミさん、ダンジョンの素材を売っているようだな。

 隣にいるのはフレンドかい?」


「アンバーさん、こんにちは。

 こっちはフレンドのマキナです。

 マキナ、この人が前一緒にクエストを受けたアンバーさんだよ」


「マキナさん、はじめまして。アンバーという者だ」


「はじめまして、アンバーさん。

 ミミがお世話になっていると聞いています」


「お世話になっているか……むしろこっちが助けられたよ。

 さて、今日は鍛冶素材を買いに来たんだ。

 牙系、爪系のアイテムはあるかな?各種2つずつ買わせてくれ」


「結構範囲が広いですね。これとこれと……出すのにちょっと時間がかかりますよ」


 ミミがインベントリを操作している間、アンバーはマキナに話しかける。


「マキナさん、品ぞろえやミミさんの反応を見るに、かなりの量の素材を集めているようだ。

 どうやってこんなに集めたんだ?

 ただアイテムを売るためだけに、何時間もダンジョンを周回するのは割に合わないだろう?」


「それは……秘密です。ただ、今回限りとだけ言っておきます」


「今回限り……宝箱か単発クエストか……いや、これ以上の詮索はよそう。

 持つべきものは口の堅い友達だな」


「そういえば、ミミからクランに興味があると聞きました。

 もしかして、所属するところを探しているんですか?」


 アンバーは少しの間考え込んだ。そして口を開く。


「……まだ本格的には探していない。

 単純に、手を出せるコンテンツには全て試したい性分でね。

 クランも魅力的だとは思っているが……今は後回しにしている状態だな」


「じゃあ、試すなら早い方がいいんじゃないですか?」


 いつの間にか商品をすべて出したのか、ミミが話に入ってきた。


「私のクラン『ラビットフット』は、プレイスタイルは自由だし、拘束もありません。

 アンバーさんの、全部のコンテンツを試したいって気持ちが必要なんです。

 よければお試しで加入しませんか?

 協力プレイなら、ソロよりも多くのコンテンツに挑戦できると思いますよ」


「そんな簡単に誘っちゃっていいの?」


「うちのクランの目標はとにかく楽しむこと。

 アンバーさんならどんなことも楽しんでくれそうだから、うちにはぴったりだと思う。

 性格も前にクエストを受けた時に分かったしトラブルは起きないと思うよ」


「なるほどね。それなら反対はしないでおくよ。

 今のやり取りだけでも頭が切れそうだってことはわかったし、一緒にいてくれたら心強いかもね」


「なるほど。自由に動けて協力プレイもしやすい。確かに都合がいいな。

 試し加入というのも気に入ったよ。実質デメリットが無いようなものだ。

 その話、乗ろう。私たちの相性も含めて、いろいろ試していこうじゃないか」


「よし、決定!

 アンバーさん。これからはクランのルールを守ってもらいます」


「ルールなんてあったの?私も初耳なんだけど」


「今考えたの。ルールはひとつ。メンバー同士で名前にさん付けは禁止!」


「……なかなか愉快なクランになりそうだな。

 長くソロでやってきたから迷惑をかけるかもしれないが、よろしく頼む。

 ミミ、マキナ」


 その日、クラン『ラビットフット』に新たなメンバーが1人加わった。

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