第20話、迷子とアンバー
「ここどこ~!?」
森に入ったミミはさっそく迷っていた。
「森に入る前に下調べしておけばよかったよ……
戻る方向も分からないし……でもログアウトしたら負けな気がする……」
スキオンには、ログアウト時にどこにいても街でログインするという仕様がある。
それを実質的なワープとして使うテクニックもあるが、ミミはそれをよしとしていなかった。
「そうだ!木に登ってみれば、街の方角くらいは分かるかも。
ムーンジャンプ!」
ミミは枝の無い場所を狙って跳躍し、葉の上に飛び出した。
空中で妖精の軽鎧を使って近くの太い枝に着地する。
再び跳躍し、付近で一番高い枝まで登ることができた。
そこから周囲を見渡す。
「街も何も見えない……そこまで奥に進んだ感じはしないんだけどな……
あっ、あそこに森が開けた場所がある!結構広いし、建物も見えるね。
じゃあ人がいそう。他に当てもないし、行ってみよう。変身!」
ミミは兎霊憑依を使い、木々を飛び移りながら村へと向かう。
道のりの半分ほど進んだところで、頭上から鳴き声が聞こえてきた。
上を見ると、大きさを測ることもできないようなサイズの黒い鳥。
その鳥はすでに猛スピードでミミへ向かって突進を始めている。
「あの鳥、大きすぎ!このままじゃ絶対避けられないよ!ええと……ここは木に隠れて逃げよう!」
ミミは慌てて地面に着地し、その場から離れる。
直後、ミミが地上へと降りた場所から轟音が響く。
見ると、逆三角形状の物体が地面へと突き刺さっていた。
それは巨大なくちばしだった。
しばらくするとくちばしは引き抜かれ、羽ばたきの音が遠ざかっていった。
「あの鳥、何だったんだろう……
とにかく、これからは見つからないように地上を進むようにしよう」
ミミは兎霊憑依を解除して地上を進み、建物のある場所までたどり着いた。
「ここは村みたいだね。地図は……なさそう。村の人に聞いてみようかな。
すみません、街に戻りたいんですけど……」
ミミはとりあえず村の老人に話しかけてみた。
「おお、冒険者さんか。すまんが、街への道はわしらにも分からないんじゃ」
「そうなんですか……」
「私なら分かるぞ」
ミミが声のした方向を向くと、蘭服のような服を着ている人物が立っていた。
頭上にはプレイヤーを示すアイコンと名前が表示されている。
背中に長い槍を背負い、左腰には刀と短剣を装備しているようだ。
「本当ですか?」
「困ったときはお互い様さ、このあたりの地図を持っているから共有しよう。
それと、帰り道が分からないということは地図の自動記入をオンにしていないんじゃないか?」
「自動記入……すみません、それも教えてもらっていいですか?」
ミミはアンバーから地図のコピーをもらい、地図の自動記入設定のやり方も教わった。
これで、自力で街に戻ることができるだろう。
「本当にありがとうございます。これ、少ないけどお礼です」
ミミは兎霊憑依の練習で余ったMPポーションをアンバーに渡そうとしたが、彼女はそれを制止した。
「ポーションは必要ない。代わりと言ってはなんだが、この村のクエストに協力してもらえないか?
もちろん、時間があればの話だが」
「もちろん協力させてください。
あっ、自己紹介がまだだった!私はミミです。よろしくお願いします」
「私はアンバーだ。協力、感謝する。クエストはそこの家にいるNPCから受けられるらしい」
2人はパーティーを組んでからNPCに話を聞きに行った。
「最近、この村の近くのモンスターが活発になっているんです。これでは危なくて村から出られない。
だから私たちは、モンスターを村の入り口へおびき寄せて一網打尽にする計画を立てました。
冒険者の方には迎撃の協力をお願いしたいのです」
クエスト:森のモンスター迎撃
目標:モンスターを村に侵入させない
報酬:装備品
ミミとアンバーは、クエストを受諾した。




