第13話、鹿追いと告知
「うわーっ!めっちゃ速ーい!」
「マキナ、動かないで!」
マキナが提案したのは、ミミがマキナを背負って走ることだった。
「でもさっきは歩くのがやっとって言ってなかった!?
急に走れるようになるなんてすごいじゃん!」
「今は重りがあるから制御しやすくなってるんだよ!」
「そうなんだ!今、人のこと重りって言ったでしょ!
そんなことを言う悪い兎はこうだっ!」
「ウサ耳は揉まないで〜!」
2人はふざけながらも鹿の群れに近づく。
そのまま群れの中に入り、中心で止まった。
「じゃあミミ、作戦通りにね……ポイズンミスト!」
毒の霧が周囲を包み、攻撃を受けた鹿が群れごと逃げ出す。
マキナと密着しているミミにはダメージは無い。
スキオンは基本的にフィールドでのPvPが無いゲームだからだ。
「9時の方向!」
ミミはマキナの声に従い、走り出す。
煙を抜けると正面に走る鹿の群れが見える。
「ミミ、そのまま近づいて……ファイアボール!ファイアボール!」
マキナはミミの上から攻撃を繰り出す。
走っている鹿が攻撃を受け、次々と倒れていく。
ゼンマイのスキルの影響で攻撃力が下がっているはずだが、毒で体力が減った鹿に対しては有効打らしい。
「敵がバタバタ倒れてくの気持ちいい~!」
しばらく攻撃を続けると、鹿の群れは全滅した。
「戦略がうまく噛み合うと強いね~」
「そうだね。兎霊憑依スキルの練習にもなって一石二鳥だよ。
でもそろそろMPがなくなってきたから、街に戻ったら商店街に行こう」
「オッケー。でもまだ変身時間は残ってるでしょ。
街までの道のりも練習に使おう!私を背負ったままで!」
「それってただマキナが楽したいだけじゃない!?」
なんだかんだ言いつつも、スキル練習と時短になるのでミミはマキナを背負って街まで走った。
2人が街に着いてすぐ、ミミの視界の端にアイコンが点灯する。
「このアイコン、なんだろう?」
「ミミにも出たの?このアイコンは……運営からの通知だよ。
同じタイミングで届いたってことは多分同じ内容だね。
一緒に見ようよ」
2人はベンチに座り、通知を開いた。
そこには、最初のイベントの詳細が書かれていた。
リリース記念イベント「はじまりの祝祭」
ゲーム開始地点の街で1週間、祭りが開かれる。
臨時の屋台や特別な装飾が追加されるらしい。
祭りの一環としてプレイヤーによるチャレンジイベントも行われる。
いくつかの条件から好きなものを選び、与えたダメージを競うという内容だった。
「チャレンジイベントか……面白そうだね」
「みんなでダメージを競うんだよね?ここ、条件がいくつもあるのが気になるな」
ミミが指さした場所はチャレンジイベントの詳細部分だった。
そこにはダメージ計測時間と、カカシの数を選べるオプションが書かれていた。
計測時間は3秒、15秒、30秒の3種類。
カカシの数は1個と3個だ。
「それはたぶん、いろんなスキル構成に対応するためだよ。
一撃特化とDPS特化みたいに、目指すものが違うビルドは同じ土俵で比べられないからね。
条件が1種類だけだと、特定の組み合わせばかりが活躍するから不平等って考えだと思うよ」
「そうなのか……私は一撃特化だからカカシ1個で3秒計測のチャレンジに出てみようかな」
「私は状態異常軸だからカカシ3個の30秒かな。イベントまでにスキル構成を整えておかないと」
「マキナは理想のスキル構成までどれくらい?」
「今の稼ぎペースだとあと3日ってところかな。
イベント開始も3日後だしちょうどいいよ」
「スキルは使いこなせるようになるまで練習しないといけないから、早めに集めておいた方がいいよ。
私も金策に協力する。ついでに兎霊憑依の練習もしたいし」
「ありがとう。ミミが協力してくれるなら1日は短縮できそうだね。
それじゃあさっそく、これからクエストを受けに行こう。今夜は寝かさないよ」
2人はその日と翌日を使って金策に励み、マキナのビルドを完成させるための資金を稼ぐことができた。
ついでにミミの懐もかなり潤ったので、祭りでは様々なものを購入できそうだ。
「協力してくれてありがとう。完成したビルドは祭りで見せてあげるから期待しててね」




