第12話、変身と鹿狩り
ログインしたミミはマキナと合流した。
一緒に金策をするためだ。
「ミミはどうして金策が必要になったの?」
「新しいスキルを手に入れたんだけど、消費MPが多い上に扱いが難しいんだよね。
だから練習のためにMPポーションを買い込もうと思って」
「スキルの練習かあ。どんなスキルなの?」
「それはね……見てもらったほうが早いよ!
変身!」
「こんなスキルもあるんだ……」
ミミの体が数秒かけて変化する。
「マキナ、どう?かっこいいでしょ!……マキナ?」
マキナの目線はミミの頭の上に固定されていた。
「ミミ、触ってみていい?」
「う、うん、いいよ……」
マキナの大きく見開かれた目に気圧されつつも、肯定の返事をする。
その瞬間、マキナはミミの頭の上に手を伸ばした。
伸ばされた手が何かを掴む。
「凄い!本物だ!これ、本当に頭から生えてるよ!」
マキナが掴んだのは、ミミの頭頂部から生えているウサ耳だった。
興奮した様子でミミに語りかける。
「ケモ耳NPCは見かけるけどまさかプレイヤーに生やすなんてね!
生え際はこうなってるんだ!ミミ、今触ってるけど触覚はある?」
「なんというか、頭から離れたところで髪の毛を触られてる感じ……」
「触覚は完全じゃないんだね。というか、ちょっと背伸びた?
あっ!足もケモケモしてる!」
マキナは地面に膝をつき、ミミの足を観察し始めた。
撫でたり、じっと見つめたりと忙しそうだ。
「ミミ、足の方は感覚ある?」
「足先は感覚ないよ。竹馬に乗ってる感じかな」
しばらくして、ひとしきり観察を終えたマキナが立ち上がった。
「いやあ、いいもの見せてもらったよ。
しかしプレイヤーの身体を変えるなんて思い切ったことするゲームだね」
「そういうのは珍しいの?」
「珍しいよ。身体感覚と触覚を変えなきゃいけないから実装するのが大変らしいよ」
「そうなんだ……ねえ、そろそろ金策を始めない?」
「そうだった。突然のケモ耳に興奮しすぎて忘れてた……
じゃあ、今日はクエスト周回にしよう。
これなら街に寄ってポーションを買えるからね」
ミミたちはギルド会館でクエストを受注した。
「どんなクエストを受けたの?」
「草原鹿の討伐だね。討伐クエストの中では難しめだけど、報酬もいいんだ」
「鹿かあ。角で攻撃してくるのかな……」
2人は雑談をしながら進み、草原鹿の生息エリアに到着した。
鹿はある程度固まって草を食べている。近づいても反応を見せることはない。
「うーん、あんまり倒すのは難しく無さそうだね」
「見た目はね。今から実演するから離れてて」
そう言うとマキナは鹿集団の中心に移動し、スキルを発動した。
「ポイズンミスト!」
鹿たちが紫の霧に包まれ、見えなくなる。
数秒後、鹿たちが一斉に走り出し、霧を突き破ってどこかへと走り去る。
「足速っ!走っても追いつけないよ!」
「そう、これが難しい理由。
少しでも攻撃を当てると群れ全体が逃げちゃうんだ」
「マキナはいつもどうやって倒してるの?」
「ポイズンミストを使っては追いかける、の繰り返しで地道に倒してる。
範囲攻撃がこれしかなくてね。
大体4回くらいやるとクエストを達成できるんだよ。
今は追跡のスキルがあるからから迷わなくなって効率上がったし」
「私……できることなくない?」
「あるって。群れの端の方の鹿をムーンジャンプで倒してほしいかな。
鹿全部を範囲に抑えるのが難しくて倒しきれないときがあるの。
だからその取りこぼしを倒してほしいんだよね。
それだけで追いかける回数を減らせるはず。
タイミングはこっちで合わせるから意識しなくていいよ」
「なるほど、分かった」
ミミたちは鹿の狩場とギルド会館を何度も往復し、お金を稼いでいった。
その途中、マキナが疑問を口にする。
「ミミ、さっき見せてくれたスキルは変身するだけなの?」
「脚力が上昇するんだよ。制御が大変だけどね」
「じゃあ、足も速くなる?」
「もちろん速くなるよ」
「じゃあ、いくつか思いついたことがあるんだけど……」
マキナはそう言ってアイデアを話し始めた。




