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4・忘れていた記憶

 じいちゃんの後に続いて、俺も扉の内側に足を進める。


 中に入ってみると、そこには大量の酒が並んだカウンターと4人掛けテーブルが二個。

 じいちゃんは当たり前のようにカウンターに座り、俺を見て隣の椅子を叩いた。指示されるがまま、じいちゃんの隣に腰をかける。


「マスター、ビールくれ」


 じいちゃんはカウンターに向かって声を飛ばすが、俺には誰もいないように見える。これも俺の思い込みか?俺が勝手にいないと思い込んで…


「ちょっとーまだオープンしてないわよ…哲ちゃんじゃなーい!」

 

 さっきの流れから自分のせいではないかと不安を抱いていると、カウンター裏の扉からナイスバディの金髪ロングお姉さんが現れてホッとする。


 (人がいたのか)


「悪いな、ちょっと店借りて話してもいいか?」

「んー…本当はダメだけどぉ…哲ちゃんの頼みだからねぇ。いいわよ。それで?そちらの子は?」

「あ、俺は」

「未成年だからなジュースで頼む」

「あら…若いうちに亡くなったのね。わかったわ。」


 少し同情をするような表情を残しマスターはドリンクを取りに裏へと戻って行った。


「亡くな…え、じいちゃん俺死んだの?」

「わからん」

「えー…」

「ここは死んだ人間が次の転生まで住む場所なんだ。でもお前の体は確かにまだベッドで寝ていた。俺がここにくる前に確認したからな。」

「つまり現世で俺は寝てて、精神だけ死後の世界に来ちゃってるってこと?」

「正確には魂が、だな。体は生きちゃいるが中身はもぬけの殻だ。」


 (あー魂が。)


「え?それやばくない?」

「そうだな」

「じいちゃん、冷静だね?」

「まぁなるようにしかならんだろ」

 

 (それはそうですけども。)


「俺どうなっちゃうの」


 じいちゃんは何も言わずに黙ったまま。

 沈黙の後、ポツリと呟く。

「このままここにいると本当に死ぬだろうな」


 (嘘だろ。)


 普通にいつも通り寝ただけなのに、気付いたら死後の世界に飛んでてこのまま戻れなかったら死ぬって


「どうしたら戻れる?」

「わからん。そもそもお前がどうやってこっちに来たのかすらわからんのだ」


 あぁ、八方塞がりになす術なし。母さんと父さん、急に息子が起きなくなって死ぬとか泣くだろうな。頭が真っ白になって、思考が止まる。

 落ち込みたくても現実味がなくて落ち込めない。


「じいちゃんみたいに俺も現世に行って自分の体に入ったら戻れるみたいなことはないの?」


 じいちゃんは少し考えるように顎に手を当てる。


「まぁ、やってみる価値はあるな。だが、霊界と現世を行き来するのにも位があってな。ある程度の力がないとできん」

「力…その位ってやつはなんな」

「待たせてごめんなさいね、お酒以外出すことなんて少ないものだから。はい、いつものビールとコーラ。」


 俺の問いは美人マスターの配膳によって遮られる。開店準備中なのもあってか忙しそうだ。


「まだ支度で私は裏にいるけど何かあったら呼んでね」

 

 マスターはそう言い残し、また裏へと戻って行った。

 俺は一旦、添えられたストローでコーラを吸いながら考える。


 (どうしたら戻れるのか、そもそもどうして俺はここに…あ。)


「なぁじいちゃん、さっきのあの黒い影みたいな、俺を追いかけてきたやつは何なんだ?」


 ゾンビのように追いかけてきて俺を襲おうとしてきた奴らはなんだったのか。


「亡者のことか。アイツらは死んだのにそれを受け入れず、自分の欲に溺れて彷徨っては生きてる人間を襲う。悪霊って言ったらわかりやすいか。」


 じいちゃんはグラスにビールを注ぎ、それを飲み切るとまた空のグラスをビールで満たす。


「本来、ここは死者の魂だけの場所。アイツらがここに出てくることはないんだがな。まぁ、悠人が欲しかったんだろう。俺から見てもお前のは質も高くて…待て。よく考えたらどうしてそんな純度の高いクウォンタムを持ってるんだ?」

「え?俺何にも持ってないけど…」


 (スマホも何も持っていないはず、そもそもクォンタムってなんだ?)


「…今までそんな量…純度も高くなかったはず…いや、そもそも普通の人間が持てる量じゃ…」


 じいちゃんは一人でどんどん話を進めていって、俺は全く話についていけてなかった。

 

 (持ってるってなんだ?俺が何かしたのか?したとしたらここに来る前か?

 いつも通りやることやって布団で寝て)


「あ」

「あ?」 


 (思い出した)


「夢だと思うんだけど…俺ここに来る前になんかビルみたいな、あぁ記憶が朧げで確かじゃ無いんだけど。綺麗な建物を歩いててあちこちに扉があって。その並びに一つだけ派手な白の装飾に真っ黒な扉が見えて、それを開けて…そしたら一面海で果てがない場所と激しい光が見えて…気付いたらここにいた…んだと思う。」


 何故だろう、思い出そうとすると少し頭が痛くなる。

 俺の話を聞いてじいちゃんは理解したように言葉を返す。


「お前、真理の扉を開けたのか」

「真理の扉?」


 何、そのなにかを錬成できてしまいそうな扉…

次回更新予定:5月23日18:30


まだまだ未熟な文なので、気付いたらその都度編集していきます。

大筋の話には変更はないので見守って頂けると嬉しいです。

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