3・じいちゃん
(何で俺の名前を知ってる?いや、まずお礼を言うべきか…)
「いや、俺にもさっぱり…助けていただきありがとうございました。何で俺の名前知ってるんですか?」
俺の言葉は予想外だったようで、お兄さんは豆鉄砲でも喰らった顔をして目をぱちぱちさせている。
(そんな変なこと言ったか…?)
「アッハッハッハ!!そうかお前この姿じゃわかんねぇか!」
「…俺の知り合いなのか?」
「そうだな。知り合いというか血も繋がってるぞ」
「はぁ?」
(こんな高身長のイカした兄さん、俺の親族にいたか??
…だめだ、全然思い出せない。)
「生前からよく遊んでやったし、死んでからも遊んでやっただろ?」
「死んでからも…?」
(どういう事だ?死んでからもってことは、今はもう生きていないってことか?)
俺の親はスピリチュアルな話が大好きで、俺も小さい頃からよく聞かされていた。
その影響で、霊だとか死後の世界もないとは思っていないし、そういう話にも抵抗はない。
昔、親に連れて行かれて会った霊能者に「君は感受性が高いね。そのうち会話くらい出来るようになるよ」と言われてからは、実際に霊障に遭遇したり、霊自体もたまに見えたりと 色々経験を経て特に信じるようにはなった。
が、それ以上にのめり込むことはない。
信じてはいるがそれに入れ込む気は全くない。
現実重視、見えないものは現実の支障がない程度に関わってきた。
…仲の良かったじいちゃんが亡くなった後からは、じいちゃんが近くにいる感覚を感じたり、たまに声が聞こえたり。俺がじいちゃんを呼ぶとラップ音が聞こえて嬉しかったな。
趣味のタロットカードを使って亡くなったじいちゃんに語りかけて会話したつもりになって…
(……まさか)
「じいちゃん?!」
「ちゃんとした姿で会うのは久しぶりだな、悠人」
そういってじいちゃんはニコッと笑った。
「お前がなんでここに…いや、まず場所を変えるか。いくぞ」
じいちゃんはそう言いながらさっき走ってきた階段のほうへと戻っていく。
「え、あ、ちょ、じいちゃん!」
ーー・・・
じいちゃんの進む道をヒヨコのように俺は大人しくついて行く。
「にしてもじいちゃん、若くない?死んだ時六十四歳くらいだったよな?」
「この見た目は俺の全盛期の頃、二十五歳くらいの見た目だからな。人によるが死ぬとそいつの一番良かった時期の外見になるんだよ」
後ろを向くことなく、じいちゃんはそのまま俺の問いに答えてくれる。
じいちゃんなんだけど…俺の知ってるじいちゃんの見た目ではなくて。
(なんか変な感じだ。)
「その木刀」
「コイツは俺の昔からの愛刀だ」
愛刀って……なんか母さんがじいちゃんは昔からキレると木刀持ち出して大変だったとか言ってた気がする。
俺が物心つく頃にはもう落ち着いていたからみたいだから、実際に見るのは初めてだった。
死んでも変わらぬ祖父の武器に孫としてなんとも言えない気持ちだ。癖強。
「着いたぞ」
そういってじいちゃんは誰も同じに見えるかまくらの家の前に止まり、俺を見る。
「着いたって…ここの街、全部同じ形の家に窓だけで扉なんてないよ」
「あ?なんだお前、まだ見えてないのか」
「?見えてないってなにを」
「あー、なんて言ったらいいんだぁ?とにかく目を瞑ってみろ。それで思うんだよ、ここには扉があって街があって、人がいるってな」
そんな気持ちでどうにかなる問題じゃないのでは? そう心では思いつつ、言われた通りにやってみる。
ここには扉があって、街で、人もたくさんいて…
(…?なんだ人の声が聞こえる。
人の歩く声と気配…これは…)
「目を開けてみろ」
そう言われて目を開けると目の前には扉が、周りにはさっきと違う賑やかな街の風景が広がっていた。
「なんで!?」
「思い込みっていうのはなぁ良くも悪くも本当にそうしちまう時があるんだ。特にこういう場所ではな。」
全く意味がわからない。
でも実際に思っただけで全てが現れた。
「そうだろう こうだろうっていう固定概念は頭を固くしちまうからなぁー柔らかく考えろ」
俺の頭をわしゃわしゃと雑に掴み、じいちゃんは目の前の家へと入って行った。
次回更新予定:5月22日18:30
まだまだ未熟な文なので、気付いたらその都度編集していきます。
大筋の話には変更はないので見守って頂けると嬉しいです。




