2・亡者たち
(地下街…いや地中街だよな?)
周りを見回すと全て土やレンガでできていて妙に入り組んでいる。
迷路のようだ。あちこちに土でできたかまくらのような家があり、道のほとんどが階段になっていた。
俺はとにかく高い場所から周りを見回してみようと近くの階段を登る。
「天井は…土なのか?土の中にしては空気も綺麗な気がするし、見回しても壁がどこなのか…デカいなここ」
果てが見えない。
正確にはどこから漏れているのかわからないオレンジ色の光が、果てを包み込んでいる。光は街のあちこちから見えて、かまくらの家の中にも同じ光が灯されていた。
(見たことも聞いたこともないぞ、こんな場所…そもそもこの現状はどういうことだ?)
自分の状況に疑問しか湧かず何故ここにいるのか考えてみるが、結論は一つしか思いつかなかった。
「そうか。これは夢か!昔からよく変な夢を見るし今回はいつにも増してリアルな感じだけど!…まぁいつもみたいにそのうち目を覚ませば戻るよな?」
こういう時は焦らず冷静に。
そして深く考えずに楽観的に、とにかく現状をどうするか考えるのが一番だ。
「人も見当たらないしな…どっかの家にでも入ってみるか?」
そう思って適当に階段を下り歩き回ってみる。
かまくらのような家が並ぶ街並みをよく見てみると、どの家にも扉らしきものが見当たらなかった。
「何だよこれ、窓しかないじゃん」
どこも四角い枠のついた窓が一つだけ。しかも中は全てオレンジ色の光でボケてしまい何も見えない。
「まじか…」
どうしようもできない現状に、俺は頭を抱えるしかなかった。
ーーー・・・
…あれからどのくらいたっただろうか。
スマホも何も持っていない俺はどうする事もできず、階段に座り夢から覚めるのを待つばかりだった。
いや、正直気付いていた。これは多分夢じゃない。
夢にしてはリアルすぎるんだ。
地面を歩く感覚も思考を巡らせる感覚も、空気も意識も。
気付いたところでどうしようもない。どうしようも出来ないというのが正しいのかも知れないが。
動けば腹が減るし、喉も渇く。そしたら俺にはどうすることもできない。
「はぁ俺の平々凡々な毎日を返してくれ…」
そう願った俺の気持ちを知ってか知らずか、神様は俺に試練を与えなさった。
「…イキタイ…そレ…ヨコせ」
「ア…ア゛…」
異質な気配と声を感じて振り返ると、座っていた俺の背後からボソボソと何かを言いながら黒い影が二つ、こちらに手を伸ばしながら近づいてくる。
その姿は黒い影だが体の原型を保ちきれていない人間のようにも見えて気味が悪い。
まるでパニックホラーによく出てくるゾンビのようだ。
(そして、これは確実に俺を狙っている)
「神様…俺は平々凡々の平和な日々を望んだんですが!これはちょっと刺激的すぎませんか!」
正直、ちょっとどころではない。
今できることは逃げることだけ。
俺は道もわからず階段から階段へとにかく走り、逃げる。
「クッソ!!」
相変わらず見えるのはかまくらの家と窓、階段だらけの道だけだ。
もう元にいた場所がどこだったのかすらわからなくなってしまった。
走りながら後ろを見ると、奴らも走って俺を追いかけてきている。
「ていうかっ!意外と足早いな?!」
俺の見たことあるゾンビ映画は参考にならないことがよくわかった。
(まずい…俺の体力が切れたら確実に追いつかれる。ていうかもう切れそうだ。
追いつかれたらどうなる?現実に戻れるか?いや…。)
俺の勘がそれはないと知らせてくる。
走って、走って。
もう走り始めてからどれだけ経った?どこまで道が続いているのか全くわからない。奴らも諦めずずっと追ってきて。何ならさっきより人数が増えていやがる。
(ふざけんなマジで。もうこっちは体力ないぞ!!)
限界寸前でやっと広場らしき場所が目に映る。
変わる景色に やった!と思ったのも束の間、開けた場所はまずいと気づく。
よく見ると広場にも黒い影が。
(ッ先回りかよ!)
囲まれたら終わる…ここは一本道、行き着く先は広場。
もう俺に逃げ場はなかった。
勢いのまま広場の真ん中へと走る。俺の体力は既に限界を超えた。
全身で息をしながら奴らと向き合う。
後ろにも前にも黒影ゾンビが俺を逃すまいと囲う。
「はぁ…ハッ…さっきまでは二人だった奴らが気付けば十人かよ…」
「…キタイ…そレ…ヨコせ…」
「イキダイ…」
「アァアァァ」
「オrの…オレ…」
どんどん近づいてくる死の影に俺は諦めかけていた。
殴れば逃げれるか?いや、殴ろうと近づいた瞬間に終わりそうだ。
(こんなのどうしようも出来ないだろ)
諦めて見慣れない天井を見上げる。
「まだ、酒も飲んでねぇのに死ぬのかよ」
じーちゃんとの約束、どうしようか。
「俺が見てねぇ間にどんな事になってんだよ悠人」
男の声
この世界に来て初めての人の声。
急に現れたその声は、俺の真横から聞こえていた。
俺よりも高い身長、紺のデニムジャケットに同じ色のデニムパンツ。
木刀を担いだイカしたお兄さんが隣に立っていた。
お兄さんは長い脚を交互に出し、黒い影へと向かっていく。
ガッ
ザシュッ!
ザッ!
その筋に迷いは無く、豪快に風を切るかのように木刀を慣れた手つきで振るう。
俺が危機から救われるのに1分もかからなかった。
黒い影全てを切り倒し、黒い影は粉となって空気に溶けていく。
お兄さんは木刀を振って肩に担ぎ直すと、俺を見て言った。
「悠人、お前何でここにいる?」
まだまだ未熟な文なので、気付いたらその都度編集していきます。
大筋の話には変更はないので見守って頂けると嬉しいです。




