【第24章】自立
私は、彼を見つめた。
心がすっと静かになるのを感じる。
「喜んでもらえて、良かった」
彼の顔は笑っていないけれど、どこか嬉しそうだった。
そして、また一口コーヒーを飲む。
言葉だけだと、突き放したようにも聞こえる。
でも、彼はそういう意味で言ったのではないことが、すぐに分かった。
彼の言葉は、きっと「自分に自信を持って欲しい」という意味だったと思う。
ただ、私が感じたのはそれだけではなかった。
それは、「しっかり自分の足で立って欲しい」という意味にも思えた。
誰かの優しさに寄りかかるのではなく、また周りの反応や評価にも左右されなくていいということだ。
私は今までずっと周りの目ばかりを気にして生きてきた。
表現することを仕事にしてきたのだから、それは切っても切れないことだった。
子供の頃にダンススクールに通って、レッスンに励んでいた時も、アイドルをやっていた時も……。
周りが良いというものが正解で、私はそれになろうと一生懸命だった。
そして、それが得られれば自信がついて、自分を好きになれた。幸せを感じた。
そうして生きているうちに、私はどんどん自分自身を失っていった。
いつの間にか、私は無条件に自分を受け入れてくれる場所を探していた。どんな私でも、大丈夫だよと言ってくれる人を……。
でも、それを本当に与えることができるのは、他の誰でもない私自身だ。
私が自分を否定していたのでは、どんなに他の人が与えてくれたとしても受け入れられないだろう。
恵みの雨が降っても、傘を差し続けるみたいに。または、渇いた喉が水を求めるように、誰かからの愛情を欲しがれば、それは依存になる。
考え過ぎかもしれないけれど……。
私は、何だか少し寂しい気持ちになった。でも、それと同時に自分に自信を持って生きていいのだと気づかされた。
「雨、降ってきたね」
彼は、店の外を眺めながら言った。
私も外の方を見ると、小雨が降っていた。それは瞬く間に本降りとなった。
「降らないって言ってたのに」
けれど、私にはその雨の音が優しく聞こえた。恵みの雨のように思えたからだ。




