46羽 「狙いたいんだけど」②
合流したタルクは、あんだけ状況説明とかへたっぴなのに、めちゃくちゃいい仕事をして待っていた。レイパスたち陸送騎乗用ハルシーピで入国する僕たちが怪しく思われないよう、商隊の護衛官という立場をゲットしていたんだ。どうやったんだろうね。
そして。僕はタルクへ言った。
「行く前にグラも交えて……ちゃんと話をしたい」
「……わかった」
一泊だけする宿屋の近隣のハルシーピ舎。夜に、タルクといっしょに行った。
イムロはなんか、すごく空気を読んで「あっち行く前の最後の休暇ってことで! すんません、お姉ちゃんたちの店行ってきていいっすか!」って、僕がうなずいたと同時に競歩で街中へ消えて行った。うん、ウィンウィンてヤツではないだろうか。たぶん。
中では、柱につながれたレイパスがあいかわらずちょっと離れた区画に居るグラへ求愛の声をあげている。本当にめげないよな。僕の姿を見て助けを求めるようにキューッとひとつ鳴いたから、くちばしを叩いて労った。
そして、グラの元へ。
「グラ。ちょっと話そう」
他の人のハルシーピたちもいる。だいたいそれぞれの街で一区画をハルシーピ舎にしているんだ。みんな体が大きいから、休むにもしっかりとした広さが必要だからね。街に逗留している間はそこに預ける形。だから、いろんな子を見られておもしろかったな。ネックレスみたいのしている子とかさ。くちばしがカラーリングされていたりとか。みんな、それぞれの人の自慢の愛鳥なんだろう。
グラは、僕たちが来るのを予期していたのか、なにも言わなかった。僕はグラの目の前の地面にあぐらをかいて座った。タルクも右脚だけあぐらした。
ちょっとの間、じっと見つめ合って。
「……ねえ、グラ。以前、ルムスを攻撃したことがあったでしょ。あれは、ルムスが悪いことをしているってわかっていたから?」
キュー、と、小さな声でグラは肯定した。もしかしたら、ルムスが自分の羽根を持って行ったとわかっていたのかもな。僕はグラへ「あのとき、わからなくてごめんね」って言った。グラはもう一度キューと言った。
「グラ、聞いておきたい。僕を、日本からヴェルク=シーヴィへ連れて来たのは、グラ?」
僕の言葉に、タルクがはっと息をついた。グラはキューって言った。
僕は、ちょっと胸がいっぱいになってしまって。どうして僕だったのとか、僕は帰れるのとか、母さんと妹はどうしてるのとか。聞きたいこと、言いたいことはたくさんあるはずなのに言葉にならなかった。タルクはそんな僕をじっと見ていて、僕は、もう一度グラを見上げた。
「……僕を、日本へ帰すことはできる?」
グラは、すごく悩んだ後にキュァーと言った。たぶん、わからないってことなんだろう。そんなにポンポン異世界人を召喚できたら困るし、きっとグラにとってもイレギュラーなことだった。わかるよ。
僕は「いつか……方法がわかったら。僕を、帰してくれる?」と尋ねた。グラは答えずに、僕に頬ずりした。でも、本当に小さな声でキューと言った。
それを聞いて、ほっとして。グラの首に頭をつっこんで、目の端に溜まった涙を拭いた。
「じゃあ……タルク」
あぐらのまま、タルクに向き直って。タルクもちょっと半身をずらして僕に向いた。
「ルムスについてだけど。話しておきたい」
「……ああ」
「僕に紹介してくれるほど、タルクにとっても信頼できる友人だったんだよね」
少しの間。そして、タルクはかすれた声で「ああ、そうだ」と言った。
僕も、クルの世話をしながら、すごくバカな話で盛り上がったりした。ルムスといっしょに過ごした時間は、日本へ帰りたいっていう気持ちをなだめてくれた。僕は彼が、いくらかの友情を感じて僕に接してくれていたと思う。それは短い手紙に『元気でね』って書いてくれたことで確信に変わった。
「でも、ヴェルク=ライナの認識票がルムスのものだとしたら、最初からずっと僕たちを騙していたってことだ」
「……そうだ」
……ヴェルク=シーヴィにおいても、外患罪は処刑なのだと聞いた。今のキャラヤが任期に着いたばかりのとき、多くの人の粛清があったとも。
それを承知の上で、ルムスはヴェルミトゥラへ潜入していたんだ。その覚悟はどこから来るんだろう。
ルムスが、処刑される――それは、僕にとってとても恐ろしい想像だった。
「それなのに、減刑のために動こうとするんだ? ヴェルク=ライナって、タルクが行ったらけっこうマズいことになりそうなのに?」
なにせ、現役で王位継承権6位の王子様。それで命の危険があるからっていうことで、ヴェルク=シーヴィで公翼をやっているんだ。説明が苦手なタルクは、それでもがんばって考えて、言葉をひねり出して僕へ言った。
「……俺の父親が、関与しているかもしれない」
予想外の言葉が来て、僕は「どういうこと?」と聞き返した。タルクは長考して、それから言った。
「……ルムスを俺の近くに派遣したのは、俺の父親かもしれない。それを、確かめたい」
僕は、黙ってその意味を考えた。でもよくわからなかった。親子で、それぞれ敵対する勢力に属しているということ。父親が犯人だと考えること。タルクが、それを確認したいということ。ルムスの減刑を願うのであれば、黒幕として自分の父親を糾弾する可能性があるのに、臆していないこと。
「……なんだか、戦国武将みたいだね、タルク」
「なんだそれ」
「自分の義に従う姿勢っていうか」
親類としての情よりも、正しいと思ったことを成そうとしている。すごいことだと思う。僕にはこの世界の正義がどこにあるかなんてわからない。たった二週間で、なにができるのかとも思う。でも、動いてみなきゃさ。後悔するから。
「じゃあ、行ってこようか。ヴェルク=ライナへ」
南へ。
タルクの、故郷へ。
とりあえずこれで第二章終わりです。
つっこみとかつっこみとかつっこみとかお待ちしております。
評価いらないんで感想くださいなんでもしますから(なんでもするとは言っていない)。
第三章の書き溜め、そもそもの話の組み立て直し、第二章のこっそり修正のためにお時間をください。
連載再開は5月4日(月)7:00とします。
あと、事後報告ですが、ツイッターくんに20時間ほどBANされておりました。
するとどうでしょう。なんと、作業が捗るのです。びっくりしました。






