43羽 「コガとお呼びください」①
スラグヴォルさんが前に予告してくれたように、他のお嬢さんたちからもコンタクトがあった。でも僕たちは可及的速やかにヴェルク=シーヴィへ帰らなきゃいけないってことで、お断りした。それでもどうにか時間を取ってくれって言われたから、帰り際に寄るテルク=ファルの西側の大きな街ファルガントでなら、と妥協案を出した。陸路だから、僕らはそこまで行くのにもだいたい二週間かかるんだ。空路だとその半分くらいらしいんだけどねー。
移動の途中で、スラグヴォルさんからお手紙が来た。オレファルっていう、来るときに通った関所町で。
『クラヴェルから、結婚を申し込まれました。幼いころに婚約を結び、解かれ、今また婚約がほしいと言うのですから笑ってしまいました。
そんなことは初めて言われました。親や周囲の事情によって整えられたものではなく、クラヴェル自身がわたくしと結ばれたいのだ、と言ってくれました。それは、今のテルク=ファルの状況から考えるならば、多くの人から不興を買いかねないことです。クラヴェル自身の身の振り方にも影響が出るでしょう。
彼は、もし王に即位することがあっても、側妃は持たないとわたくしの前でハルシーピに誓いを立てました。わたくしだけを生涯ただひとりの妻とすると。そして、愛していると言ってくれました。わたくしは、それがうれしい、と感じてしまいました。
わたくしが、コガ様に告げた言葉は本当の気持ちです。コガ様にお会いして、お話しし、もしこの方の妻になることができたなら、と夢を見ました。それは幸せな夢でした。
ずいぶんと自分が軽薄に感じられます。けれど、クラヴェルの真剣な言葉に触れ、わたくし自身の心に問い尋ね、決めました。その手を取ろうと。
そして、この手紙を書いています。ひとときでも、御心を煩わせてしまい申し訳ありませんでした。わたくしの述べた言葉は、どうか笑ってお忘れください。
コガ様にお会いできてよかった。心からそう思います。なぜなら、わたくしはあなた様の存在によって、すぐ傍にある愛を理解できました。
心からの感謝と、親愛と友情を捧げます。コガ様の幸せを、心より願っております』
「…………なんで僕フラれたみたいになってんだ?」
「うっはははははっは」
後ろから覗き込んでいっしょに読んでいたタルクが爆笑した。肘鉄食らわそうとしたら先読みでかわされた。まあ、いいよ。がんばったクラヴェル王子に免じてここは許そう。
オレファルでは陸送騎乗用ハルシーピちゃんたちを一斉交代する予定だった。だけど、僕へ懐いた上にグラへプロポーズした子が、ぜったいに着いてくるつもりで、新しい群れに入り込もうとする。かなり乗り回してるから疲れているはずなのに。しかたないから、テルク=ファルの西の端っこまでいっしょに行くよう調整した。
そして、また一週間かけて、要塞都市ファルガントへ。
移動先ごとに大々的な出迎えとかされたらたまったもんじゃないから、ブロムにはくれぐれも普通に通行させてくれって言ってあった。でもこちらはテルク=ファルの西側っていうこともあってか、東側の惨状はあんまり伝わっていないらしく、僕のことも「なんかすごい人らしい」くらいの認識みたいで、ブロムもわざわざ「歓待しなくていい」って言う必要もなかったみたい。よかったよ。
でもまあ、着いて早々、僕のお見合い相手のお嬢さんたちが待ちかまえていたわけですけれども。
「どうぞ、わたくしのことはイグネラと呼んでくださいまし」
「たいへん光栄です、ファルヴォルンさん。僕のことはコガとお呼びください」
スラグヴォルさんとは真反対な……なんというか、輪郭線がしっかりしている感じの、派手目の美人さん。濃い金髪の先が縦ロール。最初にファルガントで集団お見合いみたいのをさせられたとき、すごく印象に残った。なんかこう、存在が全体的に、濃い。
なんとなく把握したんだけれど、この方は趣味国防おじさんの姪っ子さんあたり。眼力の強さとかがそっくりだね! あのさ、現役大臣の親族がぶつけられてくるって、テルク=ファルけっこう僕の足止めに本気じゃないか?
第一章を、改稿版に差し替えました
大きな変更点は1~3羽の構成と、23羽最後の加筆です
あとは全体的に言葉足らずなところが改稿されているだけで、筋は変わっていないです






