表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛ばない僕と、空を行く君と  作者: つこさん。
第二章 テルク=ファル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/150

32羽 「やってみます」②


【7:23追記】そういや今日、更新休みの日だった……

 部屋から出て、なんだかずんずん進んでいく。


「どこ行くの、タルク」

「さっさと出るぞ、こんな国」

「えっ、もう? 違う街とかは見ないの?」

「どうでもいい。もう問題解決したんだから、いいだろ」


 そりゃ、タルク的にはそうなんだろうけどさ。どうせなら観光したい気もしていたので、すごく残念そうな口調になったと自分で思う。建物の外には護衛の方たちが待機していて、なんだか旅装もしている。帰る気まんまんじゃないですかやだー。

 しっかり僕の手荷物とかもまとめられて、荷台に載せられていた。しっかりとした集団になってしまったから、人々から遠巻きに注目されている。タルクは「乗れ、行こう」と言った。


「なんでそんなに焦っているのさ? ブロムにもあいさつしないで出るの?」

「嫌な予感がする。こういうときの俺の予感は、外れない」


 しぶしぶ僕が荷馬車に乗り込むと、ゆっくりと隊全体が動き始める。街の大通りを移動しているときに、馬で駆けつけたブロムが「まってくださいー!」と焦った声で幌の中へ叫んだ。


「すみませんすみません、あの、聞いてないです、帰るって聞いてないです」

「言ってない」

「そうでしょうとも! あの、すんごく困るんで待ってください!」


 タルクは御者席へ「急いでくれ」と声を掛けた。といっても街中だし、大所帯だし、すぐに移動できるわけでもない。そして、滞在しているファルガントは要塞都市だから、高い外壁で囲われている。検問所の待機列へ誘導された。来たときはフリーパスだったのに。ブロムはそのときに馬車へ乗り込んできて「お願いです、もう少し留まっていただけませんか」と丁重な口調で言ってきた。タルクは「なに考えてんだよ、おまえらは。なんか嫌な感じするんだよ」と吐き捨てた。


「我が国の事情に、巻き込んでしまっていることはお詫び申し上げます。でも、そうするしかなかったんです。他に方法はなかったんです」

「ヨータが言っただろ、暑すぎたせいだって。それで問題は解決しただろ。もういいだろ」

「いえ……まだなんです」


 ブロムは、よく見るとなんとなくいつもよりよれっとしていた。まだって言われて、僕は「原因は、環境変化だけじゃないっぽいの?」と尋ねる。


「……昨日の今日ですので、対策の結果が出たとは言いにくいです。ただ、比較的症状の軽かった個体には効果的なようだとは、伝書鳥によって知らされました」

「そっか……」


 逆に言うと、症状の軽い個体にしか意味がなかったということだ。根本的な解決策にはなっていない。……他に、原因がある。


「ヨータくん、エルシ公翼。お願いです。助けてください。行かないでください」


 右手をずっと胸に当てたまま、ブロムはこれまでのどのときよりも真剣な様子でそう言った。僕は、タルクを見てはっきりと「ねえ、残ろう?」と言う。

 タルクは、大きく息を吸い込んで、吐いた。タルクだって、ハルシーピが苦しんでいるって聞いて平気じゃないのを、僕は知っている。


 ざわっと、馬車の外が騒がしくなった。ブロムが幌から顔を出して外を確認する。そして「来た」とほっとしたようにつぶやいた。

 気になって僕はブロムの隣まで這って行った。ブロムの視線を追うと、空に、大きな鳥の影。ブロムは馬車を降りて指笛を吹いてから、手に赤いハンカチみたいのを持って大きく手を振った。影が急降下してくる。もちろん、ハルシーピだ。

 人々が散って、警備の方たちが身構えて僕の前や馬車の回りに並ぶ。着陸したハルシーピから降りてきたのは、先日のヴォルク医務官ではなかった。同じ灰色の服を着てはいたけれど。

 白髪交じりの茶髪を一本縛りにした、男性。彼は懐から丸メガネを出してかけると、警備さんたち越しに僕を見て、僕がヨータだってすぐにわかったみたいで、右手を胸に当てて言った。


「――ごあいさつ申し上げます。鑑別師(トゥンニスタヤ)・ヨータ・コガ殿。私はクラグ・ドルテラン」


 タルクが僕のすぐ後ろまで来て、なにも言わずにただため息をついた。知っている人なんだろうか。僕はあいさつされてなにも言わないのは失礼だと思って、とりあえず「こんにちは、はじめまして」と言った。


「はじめまして。先日はヴォルク医務官へ智慧を託してくださり、本当にありがとうございます。今日は、あらためてお願いに伺いました」


 とりあえず、僕は馬車から降りた。乗ったまま話すのもなんだかな、と思って。タルクも降りてきた。ドルテランさんは、警備さんたちに挟まれて立っている僕の前で、両膝を着いて僕を仰ぎ見た。びびった。


「鑑別師殿。どうか、今一度私たちへその力を貸してください。どうか、東部に。カイロントへ渡り、私たちを助けてください。テルク=ファルのドルテランを代表し、伏してお願い申し上げます」


 僕は「立ってください。お役に立てることがあるなら、よろこんで」と言った。タルクがやっぱり、ため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
匿名感想書いて!!!!!( ↓ のバナーからフォームに飛びます)

匿名感想フォーム

こちらの
感想おきば
で返信します

18羽 「証明のしようがないですが」② 時点での主要登場人物一覧
※イメージが壊れる可能性があるため、自己責任でご覧ください

script?guid=on こちらの作品もいかがでしょうか……
(アルファポリスに飛びます)
君の残響に包まれ Enveloppé par ton écho.
ブロマンス作品です よろしければ!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ