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飛ばない僕と、空を行く君と  作者: つこさん。


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2/16

2羽 「ここ、どこですか?」①

「うっわ!」


 びっくりしすぎて、またこけそうになったけれど踏みとどまった。めちゃくちゃでっかい鳥は猛禽類っぽい目で僕をじっと見ていて、なんだか今にも突っついて来そうだ。なので後ずさってしまったのは不可抗力だと思う。けれど、それが良くなかったのか、赤髪の北欧風イケメンはツリ目がちな眼尻をさらに持ち上げた。


「――怪しい奴だな。ヴェルク=ライナの間諜か?」

「え……あの。すみません、勝手に入っちゃって。あの、迷ったみたいです。ここ、どこなんでしょうか?」


 びくびくしながら僕が言うと、じっとこちらを見ながら「……まあ、まさかヴェルク=ライナもこんな子どもを送っては来ないだろう」と納得したように言われた。子ども……。それ、傷つくからやめてほしい。春先にスーパーでチューハイ買おうとしたら、年齢確認されたことまだ引きずってるんだから。


「えっと、いちおう26です。成人です」

「うそつけ。とりあえず、出るぞ。いったいどこから入ってきたんだ、判庁の最深部だぞ、ここは」

「はんちょう?」

「――灰翼判庁だ。それもわからないで入って来たのか……」


 正式名称っぽいなにかを言われても困る。さっぱりわからないんだが? とりあえず、空気感からなにかの施設で、その奥まで来てしまったことはわかった。

 僕はさっき職場の駐車場でめまいを起こして、それでここまで歩いてきてしまった。だから孵化場(ハッチェリー)と関連した施設なのではないかと思えた。天井がとにかく高くてやたら広いけれど、見た感じ動物を扱う場所みたいだったから。ぱっと目につくところへ干し藁がめちゃくちゃあったり。やっぱ獣っぽい匂いもするし。

 そう思って、大きい鳥に目を向けると、あちらも僕を見ていた。ひゅっと喉が鳴る。たぶん3メートルくらいの大きさの怪鳥。顔とか全身とかを見るに、イヌワシをそのままでっかくして、もうちょっとモフモフにした感じ。突然変異かなにかだろうか。

 イケメンが歩いてスタスタと出入り口と思われる方へ行ってしまったので、あわてて僕もそれに従った。


「……えっ、うわー!」


 小走りに続こうとしたところを、背後から怪鳥に突かれた。いや、襟首のところを咥えられた。

 僕はパニックになってしまって、めちゃくちゃに腕を動かす。イケメンが振り向いて「グラ、やめろ。怪しい奴だが、美味しくはないぞ」と言ったものだから、僕はますます恐慌に陥る。


「たっ、食べられないです! 僕は、食べられないです!」

「よくわからない餌をハルシーピにやるわけがないだろう。グラ、離しなさい」


 イケメンの言葉に、グラと呼ばれた怪鳥は僕から口を離した。でも僕から離れる気はないみたいで、クルキュー、クルキュー、と、喉を鳴らすみたいに僕の顔の傍で鳴いた。怖くて泣きそう。


「……気に入ったのか。しかし、この施設の人間ではないから、出さなきゃいけないんだよ。さよならだ、グラ」


 そろそろと僕が歩くと、鳥も着いてくる。止まると、止まる。歩く。着いてくる。止まる。止まる。

 そんな感じでイケメンのところまでたどり着くと、イケメンはしげしげと僕を見て「美味そうな匂いでもするんかな」とつぶやいた。勘弁してくれ!

 そしたら、なんと鳥がぐわっと翼を開いた。風圧が来て転びそうになる。伸ばした羽はめちゃくちゃでかくて、横幅の全長は6メートル以上あるかもしれなかった。僕はビビり倒してふらっとしたけれど、イケメンが後ろから支えてくれた。


「グラ、だめだ。おとなしくしてろ。こいつとは遊べない。いいな?」


 イケメンはなだめるように言った。怪鳥は、くちばしで自分の開いた翼に頭を突っ込んだ。そして羽を一枚抜き取って、クルキュー、クルキューと言いながら僕に押しつけて来た。

 イケメンが「はあ⁉」と僕の背後で大声を上げる。


 怪鳥の大きな金色の目が、なにかを期待するようにじっと僕を見ている。僕はおそるおそる、その羽を受け取った。すると、一拍後にイケメンがお腹を抱えて爆笑。


「……そっかー、そうなのか、グラ。おまえもそういう年頃か。よかったな、受け取ってもらえたぞ。おめでとう」


 その言葉を聞いてかどうかはわからないけれど、怪鳥・グラは、僕の横腹に頭を擦りつけてきた。僕はまた転びそうになって、笑ったままのイケメンに支えられる。


「あの。あの、どういう状況で……?」

「グラの求愛を、おまえが受けたって状況だな。おめでとう、ハルシーピの番なんて、なれるもんじゃないぞ」

「はえっ⁉」


 ツガイってなんですか。あんまり聞かない言葉。でもさすがに「求愛」くらいはわかる。なんと、羽のプレゼントはプロポーズということだろうか。たいへん困る。


「あの、謹んでお断り申し上げます……これ、お返ししてもいいですか……?」

「それはそうだな。しかし、俺も、ハルシーピが人間に求愛するだなんて聞いたことがない。失恋したオスは食欲を失うと言うし……どうしたもんかな」


 あんまり困ってなさそうにイケメンは言った。そうこうしている間にグラは僕をもう一度咥えようとする。あわててイケメンの後ろに隠れた。キュルルル、って悲しそうな声。

 

「……グラ。とりあえずこいつは、ちゃんと調べなきゃいけないんだ。病気を持っているかもしれないし、おまえの番にふさわしいヤツなのか、心配だ。なので、外へ連れて行く。いいか?」


 キュォー、とグラが返事をする。肯定の鳴き声なのが僕にでもわかる。かなり賢い鳥らしい。そりゃそうだよな、こんな大きな鳥、野生まみれで意思の疎通が図れなかったら、人間なんかまるで対抗できない。


「あの……羽は……」

「持っていてくれ。どうするか考える」


 グラはそのまま建物の中に留まって、僕は長い廊下を通って別の場所へとイケメンに連れて行かれた。たぶん、外に出たら僕の職場がすぐ傍に見えるだろう。そう思いながら。


「え……」


 見えたのは……ぜんぜん知らない景色だった。

 岩肌の高い山々が連なっている中――眼下に広がるのは、写真とかでしか見たことのない、一面の緑の中に民家が散見する町並み。僕の家がある飯塚市も似たような緑が多い町ではあるんだけれど、もっと、外国っぽいって言えばいいのかな。屋根の色や形が整っている感じの、ここからの眺めひとつで、一枚の絵画になってしまいそうな。


「はあっ⁉ どこ、ここ⁉」

「だから、灰翼判庁。なんでこんなところまで登って来たんだ、おまえは。陸路を来た根性は認めるが。そんな薄着で」


 言われて、自覚する。吹きつける風が強くて冷たい。僕はぎゅっと自分を抱きしめたけれど、我慢できずにくしゃみをした。それと同時に真上から風圧があって、次の瞬間、僕はわさっとモフモフの羽毛に取り込まれた。


「グラ、どうする? 乗せてやるか?」


 頭上からキュォー、と聞こえる。あったかいけど、怖いし、なんかノミとかいないかな、だいじょうぶかな。そう思っていたら、でっかいくちばしが見えて、頬ずりされた。あの……すんません、僕人間の女性が好きで……。

 そう考えたら、放してくれた。おお、思いが通じた? そのまま岩の地面に伏せる。あらためて見ても、かなりでかい。


「ほら、来い。町に降りるぞ」

「えっ」


 言われたと同時くらいに、イケメンに横腹を取られた。そして、絶賛僕へ求婚中のグラの背中にある鞍へ、乗り込む。


「えっ」

「ほら、捕まってろ。揺れるぞ」

「うえっ……ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


 飛んだ‼ あろうことか、飛んだ‼ うぎゃあああああああああああ!!!!!


 僕、高所恐怖症なんですけどおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!


 その後の、記憶がない。気がついたら、どこかの家のベッドに寝ていた。

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