表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛ばない僕と、空を行く君と  作者: つこさん。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/17

8羽 「ない、ない!」②

 ルムスは最初ちょっとだけ信じられなさそうな表情をしたけど、家の状況を見て納得したみたいで「片づけ、手伝うよ」って言って散乱した服を拾い集め始めた。なんていいヤツなんだ。僕もそれでやっとやる気が出て、体が動くようになる。


「ありがとう、ルムス」

「お安い御用ー! まあ、ヤロウの下着たたむ経験は、もう今後いっさいしたくないかな!」

「ごめん……」


 手を動かしながら、ルムスに質問されるまま、自分のことを話した。なんでかヴェルク=シーヴィに来てしまったこと。日本という国に、母と妹がいること。きっとみんな心配していること。そんな内容。うん、うんっていい感じのあいづちをくれるし、質問のしかたがさりげなくて、なんだかいっぱい話してしまった。もちろん、タルクとハッラさんと「秘密にしておこう」って約束した、鑑別技術のことは言わなかったけどさ。言えるわけないよ。たぶん……ライラちゃんはそれが原因で連れて行かれちゃったんだから。


 ふたりでちゃちゃっと片づけたら、そんなに時間はかからなかった。でも、もう完全に日が落ちていて、外は真っ暗だ。


「ルムス、家はここから近いの? こんな時間まで、だいじょうぶ?」

「あー? まあ、そこそこ近いよ。ひとりモンだし、ぜんぜん問題なーし!」


 タルクが帰って来るまで待ってるってルムスが言ってくれた。ひとりで居たらネガティブなことばかり考えてしまうから、すごく助かる。申し訳ない。軽い夕食でも振る舞おうかと思ったけれど、食材がぜんぜんなかった。いつも仕事帰りにどこかで買って帰るからさ。お茶を入れて、堅焼きパンだけあったから、スライスしていっしょに食べた。


 深夜になっても、タルクは帰って来なかった。

 ライラちゃんは……どうなっただろう。


「もうこのまま泊まるー、いい?」

「もちろん。どうしよう、僕のベッド使って!」

「いい、いい。男の寝床とかムリ」

「それはそう」


 言うが早いがルムスは床にごろ寝して、寝息をたてた。はやっ。僕も、なんかルムスにだけ床に寝させるのは申し訳なくて、床に転がった。

 不安な気持ちのときに、ひとりじゃないってありがたいな。思っていたよりもすぐに、僕も寝ついた気がする。


「おきろー、ヨーター」


 揺り動かされて目が覚めた。起き上がろうとしたら、なんだか僕は毛布でぐるぐる巻きにされていた。赤ちゃんのおくるみみたいに。なにこれ。なんとか這い出たら、ルムスが「なんか夜中に寝言で寒い寒いって言ってたから、巻きつけた」って言った。お手数おかけしました……。


「結局、戻って来なかったんだねー、タルクは」

「そっか……」


 タルクのベッドを見た僕に、ルムスは確認するみたいに言った。そして「今日、仕事どうする?」と尋ねてくる。


「いくよ。……なんか、じっとしているのも、嫌だし」

「そっかー。じゃあ、ぶらぶら歩いて、どっかで食事調達して、行く?」

「そうだね。……ハッラさんのお家、寄ってもいい?」


 きっと、ハッラさんも奥さんも、不安な気持ちでいるに違いない。ルムスはふたつ返事で了承してくれた。

 馬車と馬くんは、灰翼判庁に置いてきてしまったから、どうしたって徒歩じゃなきゃいけない。タルクの家からハッラさんの家まで歩くのは、ヴェルク=シーヴィに来てから二度目だ。初日に、わけもわからずタルクの背中を追っかけて歩いたとき以来。

 鶏舎には、昨日ハッラさんに詰め寄っていた同業者さんがひとりと、他にも数人の姿。


「おお、判別師くんか。ハッラには、ライラちゃんの捜索に専念してもらうってことで、今は俺らが手伝いに入ってる」

「すごいな……みなさんの団結力、頭が下がります」

「なんのなんのー。助け合いは自分のためって言うしなー」


 そもそも、ハッラさんの奥さんであるムルナさんは、産み月間近の妊婦さんだ。それでこんな、とんでもないストレスを抱えちゃってさ。手伝いのおじさんも「翼騎兵団のあの人、なんか言っていたかい?」と心配そうに尋ねて来る。僕は首を振って「なにも。まだ捜索から帰って来ていません」と言う他なかった。


 ハッラさんのお家にも立ち寄った。ルムスはそれにも嫌な顔せずつきあってくれる。いいヤツだなって思う。


「ヨータ……!」


 一晩で10歳くらい老け込んだんじゃないかってくらい、弱りきったハッラさんが僕を迎え入れてくれた。お家の中には知らない女性が数名いらして、寝室と台所を行き来してなにか話し合っていた。


「ハッラさん、今、タルクが全力でライラちゃんを探してくれているから……」

「うん、うん。ありがとう、ありがとう。ありがとう……」


 なんて言えばいいのかわかんない。ただハッラさんの手を握って、言葉だけの励まし。ここが日本ならさ、チラシとか作って、街道で配るくらいのことはできたけれど。

 ムルナさんは、やっぱり出産予定日が近いらしい。ふたり目だし、予期せぬトラブルがあったから早まる可能性も考えて、助産師さんたちが来てくれているんだって。お家の中にふたりきりなのは気分的にもつらいだろうから、よかった。

 仕事が終わったらまた来るからね、と言って家を出ようとしたとき、ずっと黙っていたルムスが、思い出したみたいな感じで声をあげた。


「そういやーさ、ヨータって判定師なわけじゃん? 他の呪いとかしないの? 行方不明者の居場所とか、呪えない?」


 全員の視線が、ルムスに集中して、それが僕に移動した。

 えっと……すみません。僕、雌雄鑑別師であって、呪い師ではないんです……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
とばそら匿名感想
(『とばそら感想おきば』で返信します)
匿名感想書いて!!!!!(最初から書いてあるやつを消しても消さなくてもいいよ)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ