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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の七:シェラ編:エルフの学校
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脱出?出国?①

 レイラが緑目エルフ族の学校に通い始めてから、数日ほど時は遡る。

 ギエナは一人取り残された寮の部屋で、どうすることもできずに悶えていた。窓を眺めては、そこから抜け出す方法に思いを巡らせるものの、いい考えはさっぱり浮かばない。


「うにゅ~……。この窓は小さくてあたしの身体では出られないんじゃまいか……?どうすればいいんだよぉぉ~」


 ギエナがうんうん唸っていると、扉の外から声がした。朝食の配給だ。


「おい、朝食だ……」


「なんだ、寮長かぁ……。ど~せいつものパンと牛乳でしょっ!」


 普段なら別の寮母が持ってくるのだが、今日に限って寮長のキノスラが担当していた。


「朝飯を持ってきてやったのになんという言い草だ……。謹慎期間を延ばすぞ……」


 扉の下から差し出された朝食を見て、ギエナはやっぱりかとうんざりした。


(やっぱり、いつもの味気ないパンじゃまいかっ!ベ~ッだっ!こんなところに閉じ込めて不味い飯を出しおってぇぇっ!せめて虫の二、三匹は入れろって~のっ!……ん、待てよ?)


 だが、その瞬間、ギエナはハッとした。レイラのことを訴えるなら今しかない。


「あ~……、そ、そうでございましたっ!キノスラ寮長様っ!申し訳ございませんっ!!」


「何が"様"だ……。気味の悪い……」


「き、聞いて下さいませっ!レイラがいなくなったのですっ!いなくなったというか消えたというか、朝起きたらベッドにいなくてですね……」


「騙されない……」


 予想外の返答に、ギエナは戸惑うしかなかった。


「へ?」


「開けた途端逃げる気だろう……」


「ななん~~な~~、そ、そんなことしませんぞっ!」


「そう言って逃げた生徒たちがいたのだ……」


「まさかの展開っ!?扉を開けてもらえば分かるはずですってぇぇっ!」


「お前ら子供のやることは信じられない……」


「ガガガ、ガ~ン……。あぁ、無常……。極限無常だぁぁぁ……」


「ともかく、あと数日はこのままだ……。大人しくしておけ……」


 扉の下の隙間から覗くと、キノスラが遠ざかっていくのが見えた。ギエナはその場で悶え、苦しんだ。


「ちょちょちょ、ちょっとぉぉ……。行かないでぇぇ~~っ!キノスラ寮長様ぁぁぁっ?信じてぇぇぇ~っ!せめてパン以外もつけてぇ~っ!ち、違う違うっ!待ってってばぁぁぁっ!」


 寮長が去ったあとの部屋で、ギエナはアラクネ族特有の、全身でのたうつような苦悶の姿のまま落ち込んだ。


「ぐわわぁぁ~んっ!酷いよぉ~……」


 その時、不意に背後の窓から、聞き慣れた女性の声が飛んできた。


「う~るさいわねぇっ!!どうしてあんたっていつも騒がしいわけ?」


「ああんっ?今度は誰ぞっ?」


 声の主は羽族のポリマーだった。イェッドの看病をしているはずの彼女の姿に、ギエナは驚いて窓際へにじり寄った。


「おぉっ!お助けおっぱい女子ぃぃっ!」


「ま~た、あんたはそういうことを言うっ!帰ろうかしらっ!」


「まっ、待って、ごめんってばっ! あたしのテレパシー的な、宇宙的なアレを受信して来てくれたんだよね? ……あ、あれ、イェッドは? まだ寝てるん?」


「熱は下がったけど……」


 イェッドとポリマーの二人で助けに来てくれたのだと思い、ギエナは一瞬ぱっと表情を明るくした。だが、そこに彼の姿はない。それに、ポリマーの顔にはどこか寂しげな翳りが差していた。


「国に帰ったわ……」


「く、国ぃ? 日本に帰ったぁ? あたしたちを置いてぇ? あ、ありえんてぃ~」


「違うわよっ!龍族の国よ」


「ふ、ふぁっ!?どうしてだよぉっ!」


「龍族の仲間が病院に突然来たのよ」


「なぬぅ?」


 ポリマーは、沈んだ声で事情をギエナに説明を始めた。


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