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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の七:シェラ編:エルフの学校
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はじける教室

 レイラとシェラは、担任のアリオトの後を追って教室へ向かっていた。体力を考慮しているのか、年長の生徒たちの教室は最上階にあるらしい。二階の校長室から四階まで上っていくと、どこまでも白く美しい内装が続いていた。

 やがてアリオトは、廊下の奥にある扉の前で立ち止まった。


「さぁ、ここだ。二人には挨拶をしてもらうよ」


 レイラは、この扉も綺麗だなと眺めていた。だが、挨拶を促されると、途端に緊張し始めた。


(あぁ、緊張してきた。校長先生の時よりも緊張しているぞ……)


 教室に入ると、生徒たちの視線が自然とレイラとシェラに集まった。生徒は十名ほどで、教室の広さの割には少なく感じられる。教室の半分しか使われておらず、後ろの方には机と椅子が掃除の際のように整然と並べられていた。


(ふ~む、エルフ族も少子化かな? ……そうか、長寿の種族だと、子どもが増えるのもゆっくりなのか?)


 教室に飛び交う話し声は、街中の喧騒とは違って控えめだった。しかも、どの声もお嬢様らしい口調だった。


「まぁっ!別種族ですわっ!」

「し、失礼ですわよ」

「そうよ」

「わたくしとしたことが……」

「ほら、黒い髪が素敵じゃない?」

「本当ですわっ!」


 レイラは教室を見渡し、首をかしげた。


(あれ、なんだろう?珍しいんだろうけど、嫌っているというより興味津々って感じ?)


「みなさん、静かに。おはようございます」


 アリオトが声をかけると、教室はしんと静まり返った。生徒たちは一斉に挨拶を返す。

 それを確認してから、アリオトは二人を紹介した。


「今日からみんなと勉強することになったシェラ君とレイラ君だ。さぁ、ご挨拶を」


 シェラは、またしゃしゃり出るように挨拶を始める。


「私はシェラ・タン・スエリアと言います。どうぞよろしくお願いします」


 女生徒たちは、シェラの容姿にざわめいた。格好いい、綺麗だと、あちこちから声が上がる。


(またかっこつけだなっ!……しっかし、ここって女子しかいないぞ。女子クラス?そんなところにイケメンシェラが来たらこうなるかぁ……ジロッ)


 次はレイラの番だった。シェラはすでに目立っている。自分も目立ってしまった以上、今さら隠すことなど何もない。そう思うと、レイラは半ばやけくそになった。


「え、え~っと……私はレイラと言います。見ての通り、エルフではありません。誘拐されてこの国に来て、何が何だか分からないうちに可愛い制服を着せられ、気づいたらこいつと一緒に魔導学校からこの学校へ転校することになっていました。みなさん、どうぞよろしくお願いしますっ!」


 レイラは長々と話し、最後には決めポーズまで披露した。

 教室はしんと静まり返った。言い過ぎたかな、とレイラが後悔しかけた、その直後だった。静寂は一斉に歓声へと変わった。


「まぁ、すごいっ!魔導学校ですのっ!?」

「あの名門校ですってっ!?」

「頭のいい人しか入れないと聞きますわっ!」

「それに魔力も高くないと入れないとか」

「なんて素晴らしいのでしょうっ!」

「あれ、誘拐されたとか言ってませんでした?」

「謙遜ですわよ、謙遜っ!」


 ここまで盛り上がるとは思っていなかったレイラは、驚いてしまった。魔導学校が、そこまで名門だとは思ってもみなかったのだ。


「う、受けがいいね、シェラ」


 レイラがシェラをチラリと見ると、彼は青ざめた顔をしていた。


「おや?」


「さぁ、後ろの席につくんだ」


 アリオトに促され、二人は後ろの空いている席についた。レイラは腰を下ろすと、シェラが青ざめている理由を、少し皮肉を込めて尋ねた。


「どうしたの?モテモテのシェラ君」


 シェラはレイラを睨んだ。だが、大声を出すわけにもいかず、小声で答える。


「(ゆ、誘拐などと言うなんてっ!!)」


「(あははっ!君に誘拐されたなんて言ってないよ?)」


「(そ、そうだが……)」


 ところが、その小声を周りの生徒たちが聞きつけ、再び騒ぎ始めた。


「えっ!?レイラさん、シェラさんに誘拐されたのですか?」

「ま、まさか、そういうご関係?」

「えぇ~~っ!」

「い、以外と大胆ですわね」

「まだお若いのにっ!」


 それを聞いてシェラは汗だくになり、慌てて立ち上がると大声で言い訳を始めた。


「ち、違うっ!違いますっ!だ、断じて誘拐などしていないっ!!」


 レイラは、大慌てのシェラがあまりにも可笑しくて思わず吹き出した。


「ぷっ!!あは、あははははっ!シェラってばっ!!クククッ!!あははははっ!」


「クッ!な、なにを笑っているっ!だいたい君が変なことを言うからこんなことになったのだぞっ!」


 周りの生徒たちは、冗談なのかと思っていたが、シェラは席を立ったまま、顔を真っ赤にしていた。それを見てレイラはさらにおかしくて堪らなくなったが、必死にこらえた。


「ククク……」


 立ちっぱなしのシェラを見て、さすがにアリオトも困り果てた顔になっていた。


「分かったから、座ってくれ……」


「あ、そ、そうですね。も、申し訳ごじゃりません……」


 シェラがシュンとして席に着く時に変な謝り方をしたので、ここまで緊張していたレイラはついに笑いを堪えきれなくなった。


「ぷっ!ごじゃりません?なにそれっ!あははははっ!ひひひひっ!あははははっ!ごじゃり?あははははっ!ぷぷぷっ!」


「クッ!」


 最終的には、他の生徒たちも笑いに巻き込まれ、教室はどこもかしこも笑っている生徒たちだらけになった。


「あははははっ!もう止めてっ!お腹痛いっ!あははははっ!……いたい、いたいっ!ぷぷぷっ!」


「わ、笑いすぎだっ!」


 アリオトは頭を抱え、シェラは顔を真っ赤にし、教室は騒がしくなり、とにもかくにもレイラの新しい学校生活が始まった。


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