自問自答戦
結局、その日レイラはそれ以降、部屋の外に出られなかった。ベッドに入ったレイラは天井を見上げながら、老齢の緑目エルフの話を思い出していた。
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「……レイラ君には無窮の杖を使って欲しいのだ」
「むきゅうの杖……ですか?」
聞いたことのない名前だったが、レイラにはすぐにそれが何を指しているのか分かった。
「あぁ、プリンちゃん……」
「君はそう呼んでいるのか」
「やっぱりあなた達が盗んだのですね」
「それについては申し訳ないと思っている。しかし、あの杖は無限の魔力を秘めていて、その力を我々は必要としているのだ」
「無限……」
確かに前の時間軸では、あの杖を持っていれば無限に魔力が湧いた。そのため、レイラは強大な魔法を連続で使うこともできた。ただし、それには条件があった。ゲーム世界とまったく同じく、"恋をする"必要があったのだ。
よくよく考えれば、どうしてゲームと同じ設定なのだろうと思う。ここはゲームそのものではない。だが、自分のいた世界でもない。別の世界の"現実"とでもいうべき場所だった。
ともかく、どういうわけか恋をすると彼女の最大魔力は高まり、杖の力で無尽蔵に近いほどの魔力を貯められるようになった。
(サダク……)
そしてふとサダクの顔が浮かび、レイラは切なくなって下を向き、一言だけ老人に返した。
「……そんな力はありません」
「そ、そんなはずはないのだっ!我々はあの杖の魔導石の組み合わせを再現したのだっ!」
「魔導石の組み合わせ……。そうか、杖の石のことですね」
確かに校長から預かったあの杖には、不思議な石がついていた。あの不思議な輝きに、レイラは心を奪われたのを思い出す。しかし、目の前の老人は不思議な事を言った。
(あれ?でも組み合わせ?宝石は一つしかなかったけど……)
老人は話を続けた。熱が籠もっているのか少し声が大きい。
「しかし、どうしても魔力が出てこないっ!我々はその理由を考えたっ!そしてたどり着いた答えが、君なのだよ、レイラ君っ!」
「私?」
「そうだっ!我々は無窮の杖の発現条件に、君が必要だと考えているのだっ!」
「そんなわけないと思います……。校長は、きっと誰でも使えるような杖を渡してくれただけだと思います」
そんな重要な杖を、校長が自分に気軽に渡すはずがない。あのときは単に、魔力が貯まらないレイラを心配して渡してくれただけのように思えた。
「校長……?ほう……。あの魔導学校の校長にもらったのか……」
老人はシェラをチラリと見る。シェラは青ざめた。
「ご、ご説明済みかと……」
老人は少し不満そうにしたが、また話を続ける。
「レイラ君、お願いだ。しばらく、この国であの杖を研究させて欲しい。君には悪いようにしないっ!」
「え、えぇ……。でも私、学校に帰りたいです……」
「おぉ、学校?学校に通いたいのか?そうか、そうかっ!」
老人は完全に勘違いしている。レイラは学校に通いたいわけではない。
「ち、違います……。元の学校に……」
レイラが否定しても、老人はすぐにシェラに命じた。
「すぐに手配しようっ!なぁ、シェラ君っ!すぐに準備したまえっ!」
シェラは思わぬ出番に焦った。
「は、はいっ!もちろんです。長老様っ!」
「ちょ、ちょっとっ!シェラ?あなたも何を言って……」
レイラは否定しようとしたが、老人はそそくさと部屋を出て行ってしまった。シェラもその後を追ったが、去り際にレイラへ手を振ったので、彼女はムッとした顔を返した。
残ったメイドたちも苦笑いをしながら出て行こうとしていたため、レイラは慌てて頼み込む。
「あ、あの……長老様?でしたっけ?あ、あの方は勘違いをされてしまったのですがお伝えできませんか……」
しかし、メイドたちは上品に笑うと、後片付けをして出て行ってしまった。一人残されたレイラは、ぽつんと扉を見つめることしかできなかった。
「……もう、なんなのよっ!」
レイラの声はシーンとなった部屋にむなしく響いた。
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はぁ~……。どういう状況なの?
結局、ギエナの推理通りだったのかぁ……。
あんな杖が、そんなに重要なのかなぁ……。まぁ、魔法回復薬を飲まなくてよくなるのはありがたいけど……。うっ……、あの味を思い出したら気持ち悪くなってきた……。
だけど、普通、盗んじゃう?
シェラも訳が分からないなぁ……。確かに顔は格好いいし、頭も良いけどさぁ……。
確かにゲームでは、シナリオを選べばあいつとも恋愛関係になれたよ?あのイケメンに"お前は俺についてくれば良いんだ"なんて言われたら、キュンってしたけど……。
う~ん、でも、やっぱりリアルだと違うんだよなぁ。勝手すぎてムカッとしちゃうっ!それになに?あの媚びへつらう感じっ!
はぁ~……。ゲームとは違うけど、これってシェラルートなのかなぁ……。もうサダクのことは忘れろってことなのかなぁ?
いやいや、私は簡単に切り替えられないよ……。ゲームじゃないもんっ!
そんなに忘れられるものなの?
私ってばメンヘラ?
違う違うっ!
だって、向こうから別れてくれって言われたわけじゃないもん。ただ会えないだけだ……もん……。
サダクに会いたいよ……グスッ……。




