レイラのターン
レイラが目を覚ますと、まず目に飛び込んできたのは広く高い天井だった。そこには繊細な模様が描かれており、彼女はしばらくぼんやりと見上げる。それにしても、布団がとても暖かい。ふわふわと身体を包み込み、起き上がる気力を優しく奪っていく。
「ふわぁ~……あったか~い……って、ちっが~うっ!」
そこでようやくレイラは我に返った。自分は今、どこにいるのか。半身を勢いよく起こした彼女は、そのまま大声で叫ぶ。
「ここはどこなんだぁぁぁ~っ!!」
だが、その叫びはあまりにも広い部屋の中でむなしく反響するだけだった。一人部屋とは思えないほどの広さである。
「綺麗な装飾だなぁ……」
数人は眠れそうな巨大なベッドから降り、周囲を見渡す。壁には美しい森の風景が描かれ、机や椅子、家具のひとつひとつは木製で、見事な彫刻が施されていた。窓は曇りガラスのようで、外の様子はまったく見えない。まるで密室だ。
さらに視線を巡らせると、丁寧な彫刻の施された全身鏡が目に入った。だが、その鏡に映る自分の姿を見た瞬間、レイラは驚愕する。
「ななっ!?ど、どうしてこんな服を着てるの?」
レイラが身にまとっていたのは、ところどころに濃い緑のアクセントが入った、美しい白のドレスのような服だった。高級な生地が使われているのか、大きな窓から差し込む光を受けてきらきらと輝いている。
「お、お姫様ファッションかぁっ!?ハァ~、綺麗でうっとりする……。私じゃなくて服にね……」
思わず自分でツッコミを入れてしまうほど、その服は彼女の身分に不相応で、どうにも落ち着かなかった。
「制服に着替えたいけど……」
しかし、制服はどこを探しても見当たらない。
「もう、なんなんだよぉ……。というか、ここはどこなんだろう……。私は確か……」
ついさっきまで寮にいたはずだ。そこで、ふとシェラの顔が脳裏によみがえる。
「あ~っ!シェラッ!そうだ、シェラに連れてこられたんだ……。あれ、そう言えば緑目エルフ族の人たちが現れて……」
すると、そのとき大きな白い扉の向こうから、こんこんとノックの音が聞こえた。
「……だ、だれか来たっ!」
「レイラ、起きたのか?入るぞ……」
返事を待つことなく、その人物は扉を開けて中へ入ってきた。
「キャ~ッ!ヘンタイッ!セクハラッ!」
レイラの叫びに、シェラは着替え中だったのかと勘違いし、慌てて両目を手で覆う。
「す、すまない、着替え中だったのかっ!!……せ、せくはら?」
恐る恐る指の隙間から様子をうかがうと、そこには腕を組み、仁王立ちで怒っているレイラがいた。
「ち、違うではないかっ!」
「ちがうじゃな~~いっ!乙女の部屋に勝手に入ってくるでないぞっ!!」
「す、すまない……。め、眼が覚めたようだな。私はレイラに用事があって……」
「シェラッ!あなたが私をここに連れてきたんでしょっ!」
どうやらシェラは何か用事があって来たらしいが、そんな事情はお構いなしに、レイラの追及が容赦なく飛ぶ。
「そ、そうだ」
「まさかっ!この服に着替えさせたのってあなたっ!?」
「そ、それはないっ!」
「本当でしょうねっ!」
「ほ、本当だっ!断じて違うっ!」
レイラのターンはまだ終わらない。
「どうしてここに連れてきたの?ここってどこなのっ!」
「わ、私の国だ……。正確には祖国なんだが……」
「もう強引なんだからっ!私は君のお嫁さんになんてならないよっ!」
「ち、ちがうっ!それも違う」
「はぁっ!もう、じゃあ、なんなのっ!!」
「す、すまない……」
「謝ってばっかりだなぁっ!ここに連れてきた理由を教えてっ!!」
「そ、それは……」
シェラは完全に押されていた。いつもは強気な彼も、今は悲痛な顔で謝ることしかできない。
「それには私が答えよう」
戸惑うシェラの背後から、別の声が響いた。老人の声だった。




