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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の六:シェラ編:三ツ目族の消失
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深夜の訪問者

 その夜、レイラは空腹のために目が覚めた。お腹も鳴っていてうんざりとした顔になる。


「はぁ~、お腹空いたぁ……。これならダイエットにもなるかぁ……?」


 愚痴も自然とこぼれてしまう。すると、天井にいるギエナの腹も鳴っているのが聞こえた。しかも、なぜか苦しそうな顔をしている。


「ご、ご飯っ!レイラ、ご飯だよっ!早くっ!落としてっ!」


 寝言を聞くかぎり、食事が空中を飛んでいる夢でも見ているのだろうか。そう想像すると、レイラは少し笑ってしまった。


「ふふっ!もう、ギエナってば」


 そして、ふと外を見たときだった。窓の外に人影が見えてレイラは思わず息を飲んだ。


「ひっ!……ん?」


 しかし、その人影はどこか見たことのある輪郭をしていた。レイラはベッドから降りると窓を開けて、その人物の名前を呼んだ。


「シェラッ!」


「あっ!」


 本来なら、窓の外に人影がいれば驚くのはこちらのはずだとレイラは思った。しかも、ここは二階である。幽霊か、空を飛べる魔族くらいしか考えられない。


「こんな時間に来るなんてっ!ここは女子寮だぞっ!」


「い、いや……、その……」


 だが、レイラにとって皆が眠っている時間だとか、ここが女子寮だとかはどうでもよかった。もっと先に聞くべきことがあるだろう、と自分でも思う。相手はシェラだ。彼は突然姿を消し、もしかしたらレイラの杖まで盗んだのかもしれないのだから。


「全く君は……」


「……」


 当のシェラは戸惑っていた。レイラには何となく分かった。ここまでは来たものの、窓を開けるに開けられずにいたのだろう。遅い時間だから、女子寮だからという理由もあったはずだが、それ以上に後ろめたさがあったに違いない。


「何をしているんだか……」


「い、いや……」


 そこへいきなりレイラから話しかけられたのだ。思いきり驚いた顔になったのも無理はない。レイラはそんなシェラを見て、少し意地悪をしてやろうかという気になった。


「杖を盗んだのは君だよね?ゲームと全然違うんだけど」


「……げ、げえむ?それはどういう……」


「どうしてプリンちゃんを持っていったのか聞いてるのっ!返してっ!」


「あの杖の名前か……」


「やっぱり、キミが持って行ったのかっ!」


「あ……っ」


 レイラは、誘導尋問に引っかかったシェラを見てしてやったりと思った。普段はシェラの理屈っぽい話に言い負かされることが多いだけに、思わずにやりとして、さらに責め立てたくなった。


「返してよっ!校長に怒られちゃうでしょっ!」


「そ、それはできない……」


「なんでなのっ!」


「く、国で使うためだ」


「ただの杖だよ?」


「レイラが知らないだけで、あの杖は無限の魔力を生み出す力があるんだ」


「それは知ってるよっ!」


「い、いや……。レイラが思っている以上にあの杖の能力は凄いのだ……」


 いつもは切れのある物言いをするシェラが、今日は妙に気弱で、言葉もひどく歯切れが悪かった。


「もうっ!それがキミの国と何か関係があるの?」


「……レイラ、キキキ、キミに来て欲しいんだ……」


「はぁっ!?今度はなに?」


「わ、私の国だ……。そそそ、その……」


 レイラは、だんだん馬鹿にされているような気分になってきた。突然現れたかと思えば、自分の国に来てほしいと言い出す。当のシェラは怯えたように顔を赤くしている。何を言いたいのかさっぱり分からず、腹まで立ってきた。


「もうっ!突然、訳が分からないっ!!それってプロポーズのつもりっ?」


「バ、バカなことを言うなっ。た、ただ、黙って付いてきてくれればいいのだっ!!……頼むっ!」


 今度は理由も言わず、自分について来いと言い始めた。


「い・や・よっ!!理由も言わないなんてっ!キミらしくないじゃないっ!杖を返してっ!」


 レイラの声も高くなり、ギエナを起こしそうになった。


「ムニャ……、レイラどうしたん……Zzz……」


 ギエナがまた眠ってしまった、そのときだった。シェラの後ろに、別のエルフ族たちがふっと姿を現した。


「だから、さっさとやれば良かったのだ。禍族と交渉など煩わしいっ!」


 そのエルフ族の眼が星に照らされて光ったとき、その目の色にレイラは驚きの声を上げた。


「あなたたち、緑目の……?どうしてあなたたちが……?あっ……、Zzz……」


 次の瞬間、レイラは深い眠りへと引きずり込まれた。緑目のエルフ族が放った睡眠魔法だった。


----- * ----- * -----


 翌朝、ギエナは窓が開いていることに気づいた。蜘蛛の巣ベッドから降りると、窓を閉めてレイラに文句を言おうとした。


「あ~、レイラってば窓が開いてるじゃんっ!あたしには虫族が入るから閉めろとかって言うくせに……あれ?レイラ……?」


 しかし、怒る対象が眠っているベッドには既に誰もいなかった。


「えぇ?……レイラ?……レイラちゃん?」


 部屋から出て行ったのかと思って扉を開けようとしたが、監禁されているため鍵が掛かっていて出られなかった。ベッドの下や他のところも見回してみたが何処にもいなかった。

 ギエナは焦りのためか油汗が出始め、頭を抱えて大声で叫んでいた。


「ぬおぉぉぉ~っ!主人公が消えてどうすんじゃ~っ!ありえんてぃ~っ!あたしはどしたらいいんだぁぁぁっ!分からんてぃぃぃっ!」


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