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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の六:シェラ編
201/204

情報整理

 スハイルは、外からやって来た三ツ目族を知っている不思議な少女、レイラに興味を引かれた。彼女は姿は三ツ目族のようでもあるが、角も尻尾も羽もなかった。自分の事を"ニンゲン"という魔族だと言った。しかし、彼女の友達は"禍族"と聞いたことのない魔族で彼女を呼んでからかっているようだった。


 レイラたちとの話は長く続き、夕方になるとスハイルは、レイラ達に得意の魚料理を振る舞った。その後も話が続き、スハイルは自分とキエティとの関係、そして、この街のことをレイラたちに語った。


----- * ----- * -----


 スハイルは、まだキエティがこの街の礎を築き始めたばかりの頃、魚料理を考案し、ウルサリオン族の族長アンカのもとへ売り込みに赴いた二人のメイドのうちの一人だと語った。


 やがて街は発展し、彼女も伴侶を得てレゴルという子どもにも恵まれた。しかし、その幸せは長く続かず、夫の浮気をきっかけに別れることになった。


 三ツ目族の暴走のことを彼女は知らなかった。数ヶ月前から時間のかかる仕入交渉のため彼女はウルサリオン族の街に滞在していたという。

 だからこそ、災厄から逃れることができたのだとレイラは思ったが、スハイルは、あの三ツ目族の暴走事件から前の1ヶ月程度の記憶がなかった。


 街での用事を終えて戻ってきたとき、スハイルが見たのは瓦礫と化した街並みと誰もいない静寂だけだった。

 その後、同じように街に戻ってきた数名の三ツ目族と合流し、何が起きたのか分からないまま、それでも生きるために魔力の残っているエンチャントロープで漁をしながら、この地で暮らし始めた。


 この家が海辺の住まいにしては不釣り合いなほど豪奢なのは、かつて町長フナボシの屋敷だったからだった。スハイルは、いつか彼が戻ってくることを願いながら、家を守るという思いから、レゴルと一緒にここに住まわせてもらっているのだという。


----- * ----- * -----


 結局時間も遅くなり、レイラ達はその家に泊めてもらうことになった。その一部屋に四人は集まって、スハイルの話と自分達の経験も照らし合わせて情報を整理していた。


 ギエナは素直に三ツ目族がレゴル以外にもいたことに喜んでいるようだった。


「ま~、ともかくさ。レイラ、良かったじゃんっ!三ツ目族とか沢山いたみたいだしっ!」


「う、うん……」


 しかし、レイラは情報の整理がつかず、顔は曇ったままだった。


「他の三ツ目族はどこへ行ったんだろう……」


「そだねぇ……。スハイルさんも分からんって言ってたしねぇ……」


 三ツ目族についての記憶を持っているスハイルでさえ、サダクのことを覚えていなかった。


 壁にもたれていたシェラが組んでいた腕をほどくと口を開く。


「ふんっ!実際に見てしまったからには三ツ目族の存在は信じるしかあるまい。だが、一体この状況は何なのだ?」


 誰も答えられず沈黙がしばらく続いた後、レイラは思っていたことを打ち明ける。


「じ、時間が戻っているんだと思う……」


 シェラは彼女の奇妙な話を信じることが出来ず、疑問を呈した。


「はっ?時間戻しの魔法だと?そんな魔法など聞いたこともないっ!」


 レイラですらも自信があって話したわけではない。ゲームにでさえ、時間戻しの設定はなかった。


「ご、ごめんなさい、変なこと言って……」


 シェラは理解の出来ないことに苛立ちを隠せなくなっていた。


「仮に時間が戻ったとしても何故、三ツ目族は消えてしまったのだっ!」


「んが~っ!ちょっといるじゃんかぁっ!」


「何がちょっとだっ!ほんの一握りの三ツ目族がどうだというのだっ!それにどうして彼らの歴史がないのだっ!あの城を作って、城下町を作って、この街を作ったのだっ!どうして私が見たことがないのだ?様々な魔族の歴史を図書館で調べていたのだぞ?」


 まくし立てるように話すシェラにフムアルは困り果てた。


「……シェラ、落ち着きなよ。キミらしくないよ」


「フムアルッ!貴様はこんな変な状況だというのに冷静だなっ!い、今のは魅了ではあるまいなっ!」


 シェラがフムアルの魅了を警戒した。


「もう、使ってないよ……。僕らだって分からないことだらけだよ……」


 フムアルが代弁するとレイラが悲しげな声で続ける。


「そ、それに……サダクを誰も覚えていない……」


 フムアルはレイラの方を向いた。


「レイラ、時間が戻ったと言ったけど、どれぐらいか分かる?」


「多分、一ヶ月ぐらいだと思う……」


 シェラはすっかり呆れてしまった。


「はっ!たった一ヶ月だと?それで歴史が消えてしまうというのか?」


 今度はギエナが呆れていた。


「シェラァッ!おこりんこすぎっ!レイラ泣いてるぞ……」


 シェラがレイラの方を向くと彼女は顔を両手で覆って泣いていた。


「す、すまない……。言い過ぎた……」


「ううん、私の方こそ、ごめんなさい……」


 レイラは涙を手で拭き取ると、ギエナがパチリと手を叩いた。


「今日はおしまいっ!寝ようよっ!」


 彼女の合図で会話は終わり、シェラとフムアルはあてがわれた部屋に戻ろうとしたのだが、シェラは部屋に戻る前にレイラの方を向いた。


「どうしたの、シェラ?」


「いや、なんでもない……」


 ギエナは何だこれはと思った。


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